ケアマネジャーのための利用者家族への対応として「やるべきこと」「やらなくていいこと」

2026/10/01

 ケアマネジャーの業務において、利用者本人だけでなく家族への対応に悩みや負担を感じる場面は少なくありません。その対応がケアマネジャー自身の「シャドウ・ワーク(見えにくい業務)」となり、心身を圧迫してしまうケースもみられます。

 

 利用者を支えるという専門職の立場を軸に、家族とどう向き合い、どこまで引き受け、どこから引き受けないのか。本記事では、そうした見極めに欠かせないスキルや対応のポイントなどを解説します。


【記事の監修者】
小薮基司(こやぶ もとし)
社会福祉法人若竹大寿会に勤務し、横浜市神之木地域ケアプラザ所長。2025年より一般社団法人神奈川県介護支援専門員協会理事長。


1 おさえておきたい! 家族対応のスキルと知識

 「家族対応」とは、ケアマネジャーが利用者の家族にかかわる場面で業務遂行ができるようにすることを指しています。

 

 「家族対応」は大きく分けて次の3つに分類できます。

1 家族への支援(家族の生活や心身の健康への配慮)
2 利用者支援を円滑に進めるための関係づくり(家族を協力者・社会資源として活かす関係構築)
3 リスクマネジメント(カスタマーハラスメント等の被害防止と組織的防衛)

 

 近年の制度改定では「家族=無償の介護力」ととらえる従来の前提が見直され、令和5年のアセスメント標準項目改定でも「介護力」から「家族等の状況」へと名称変更されました。
 家族介護者を一人の市民として尊重し、ケアマネジャーは「近すぎず遠すぎず、第三者でありながら信頼される」ジョイニング(適切な立ち位置づくり)の技術を身につけることが求められます。

 

 ケアマネジャー業務の明確な境界線(狭義のケアマネジメント)を意識し、「やるべきこと」と「やらなくていいこと」を整理することが、バーンアウトを防ぎ支援の質を高める鍵となります。


2 ケース1 遠方にいるのに何かと口をはさむ

<事例概要>

 一人暮らしのAさん(83歳・認知症の日常生活自立度Ⅱb)。遠方に住む長女は年に1回ほどしか帰省しませんが、電話会議等で「まだ大丈夫」と主張し強く口をはさみます。一方、近隣に住む長男夫妻は日々の通院や緊急対応を担い疲弊していますが、長女に遠慮して本音を言えずにいます。

<着目の視点>
 発言力が強い家族(キーパーソン)と、実際に日常ケアを担う支え手を分けてとらえる視点が求められます。

 

<ケアマネジャーとして「やるべきこと」>
・本人の意向を中心に据える

 強い意見に引きずられず、「本人がどう過ごしたいか」を支援の軸に戻します。
・長女の思いと長男夫妻の負担感の両方を受け止める
 「母親の力を信じたい」長女の気持ちを受け止めつつ、近くで支える長男夫妻の苦労や言いにくさを直接受け止めます。
・見立ての違いを生活場面ごとに見える形にする
 買い物や受診など場面ごとに「できること/支援が必要なこと」を表にし、客観的に共有します。
・サービス担当者会議を対等な場として立て直す
 パワー配分を整え、長男夫妻も率直に意見が言える進行を行います。

 

<ケアマネジャーとして「やらなくていいこと」>
・発言力の強い長女の意見だけでケア方針を決める

 長男夫妻の現実が置き去りになります。
・長女の見立てを頭ごなしに否定する
 防衛的になり話し合いが進まなくなります。
・きょうだい間の対立に白黒をつけようとする
 ケアマネジャー自身が対立の延長に巻き込まれます。


2 ケース2 家族からの暴言などのハラスメント

<事例概要>

 要介護2の妻と同居する夫。サービス開始後、夫からヘルパーやケアマネジャーに対し「ヘルパーを代えろ」「金をもらっているんだから黙ってやれ」といった暴言・威圧・夜間電話・過剰な業務外要求が相次ぎました。

<着目の視点>
 カスタマーハラスメント(カスハラ)は個人の問題にせず、職員の尊厳と安全を守る「組織的対応」が必須です。

 

<ケアマネジャーとして「やるべきこと」>
・契約時のハラスメント禁止条項の根拠を整える

 事前に重要事項説明書等で禁止行為と組織方針を明確に示します。
・個人対応から組織対応へ切り替える
 担当者一人に抱え込ませず、複数訪問や組織対応に切り替えます。
・発言内容・日時・状況を客観的に記録する
 事実ベースで記録を残し、行政や外部機関との連携土台にします。
・許容できない境界線を言葉で明確に伝える
 「支援は続けたいが暴言や威圧は受け入れられない」と毅然と伝えます。
・改善しない場合は契約解除・撤退判断を行う
 地域包括支援センターや保険者と協議し、組織を守るための契約解除も検討します。

 

<ケアマネジャーとして「やらなくていいこと」>
・「事情があるから」と暴言を正当化、あるいは我慢し続ける。

 ケアマネジャーの安全と尊厳を損ないます。
・担当者交代だけでその場しのぎにする
 問題の本質が解決しません。
・感情的に言い返す。
 対立が深まり、適切な本人支援の判断が難しくなります。
・契約解除を「負け」や「逃げ」ととらえる。
 支援継続を重視するあまり撤退判断をためらってしまうと、結果的にケアマネジャーを守る判断が遅れてしまいます。


3 困ったときの支援機関など

 家族対応の課題はケアマネジャー一人で抱え込めるものではありません。適切な社会資源や専門機関へリファー(つなぎ)を行い、多機関で連携することもケアマネジャーの重要な役割です。ここでは主な支援機関を紹介します。

 

①地域包括支援センター
 総合相談窓口であり、権利擁護、虐待対応、介護者支援(ダブルケアカフェの案内等)や多機関協働の要となります。

 

②ひきこもり地域支援センター
 8050世帯や長年のひきこもり状態にある家族がいる場合の専門相談・個別ケース会議への参加を行います。

 

③福祉事務所
 経済的困窮により介護費用や生活費が払えない場合の自立相談・就労準備・生活保護適用などをサポートします。


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