「ナラティブの世界」へようこそ ―人生の物語をとらえ直す旅に出よう― 第2回
2026/09/29
本連載は『月刊ケアマネジャー』での連載(2025年4月号~2026年3月号掲載)を再編集し、再掲載するものです。
本連載には、「ナラティブ・アプローチ」のエッセンスがふんだんに詰まっています。全24回の束の間の物語の旅になりますが、「ナラティブ・アプローチ」に触れるこの旅をぜひ一緒に楽しんでもらえたなら嬉しいです。
あなたの物語には価値がある 下
語り、聴くために、あなたは自分自身とじっくりと向き合うことになる。その過程で、かなわなかった「理想」と苦しみ続ける「現実」の狭間に生じる「葛藤」「痛み」を再体験するかもしれない。しかしあなたは、すでに乗り越えてきたのだ。そのことに気づくと き、確かな勇気を得るだろう。これらすべてのプロセスが「ナラティブ」なのだと私は理解している。
ナラティブのもつ力を感じる
バスに乗ってくれたあなたのことを私は知らない。あなたが、いつ、どんなことに感動し、喜びを得たのか、また、何に苦しみ、涙を流し、いつ、どのように、それを乗り越えてきたのかを知らない。だから、かなうならば、それを聞いてみたいと願う。
ナラティブが光を当てるのは、誰もがうらやむような「メインストリーム」の人生ではない。むしろ一人ひとりが語ろうとする小さな物語だ。私はそこに大きな魅力を感じる。それは一見、目立たなく、誰の目にも触れることのなかったものかもしれない。しかしそ
れこそが、あなたを形づくった価値ある物語なのだ。
ナラティブ号のルート
「この旅に旅程表はありますか?」と聞きたくなるかもしれない。驚くことに、ナラティブを用いたアプローチには、前もってのアセスメントもプランもない。運転する人に委ねるからだ。しかし、それではあまりにも不透明で、道行きもおぼつかないので、ナビゲー
ターとして、おおまかなルートを考えてみた。
まずナラティブの根底にある「思想」、次に、ナラティブ・アプローチに登場する「ストーリー」の意味と役割、そして、問題を抱えている人への活用法。こうしたルートを想定しつつ、大いに寄り道をしながら、互いに語り合えるならベストだ。繰り返しになるが、
旅の目的は、一緒に旅をしている私たちが、語ること、聴くことを通して、互いの物語に、輝きと強さ―つまり尊い価値を見出すことなのだ。
著者紹介

川村隆彦
「エンパワメント」や「ナラティブ」等、対人支援にかかわる専門職を強めるテーマで、約30年全国で講演・研修を行ってきた。人生の困難さに対処する方法をYouTubeやInstagramで発信中。

