介護リーダー必読! スタッフにうまく伝わる「ほめる・叱る」の技術
2026/06/10
スタッフがみるみる育つ!リーダーのための「ほめ方・叱り方」の基本と、明日から使える声かけのコツ。
山口 宰(やまぐち つかさ)
社会福祉法人光朔会オリンピア 常務理事、株式会社オリンピアコンサルティング 代表取締役。
1979年、神戸市生まれ。大阪大学人間科学部卒業後、スウェーデン・ヴェクショー大学にて高齢者福祉・障害者福祉を学ぶ。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。博士(人間科学)。2004年、大学院在学中に「高齢者総合福祉施設オリンピア兵庫」を開設。常務理事として法人経営を担い、職員数560名規模へと成長させる。現場での事業運営に携わる一方、全国100社以上の福祉事業者等に対し、コンサルティングや研修を通じた人材育成支援を行っている。
はじめに:なぜ介護現場で「教え方」に悩むのか?
介護現場で働くリーダーや先輩スタッフの皆さん、日々の指導の中でこんな悩みを抱えていませんか?
・「新人スタッフにどう教えていいのか、正直わからない」
・「一度は覚えてくれたと思ったのに、すぐ忘れられてしまう」
・「きつく言って嫌われたくないけれど、どう伝たらいいのだろう」
実は、多くの介護現場では特別な指導研修もないまま、ある日突然「教える立場」になることがほとんどです。過去の自分の経験だけを頼りに指導して、うまくいかずに自信を失ってしまうのは当然のことと言えます。
しかし、うまく育成ができている現場には、共通する教え方の「型」が存在します。今回は、その「型」の中でも特に重要な「人間関係を良好にするほめ方・叱り方のテクニック」について、明日から使える具体的な声かけの例を交えて解説します。
ほめ方・叱り方に共通する最大の鉄則:焦点をあてるのは「行動」
部下を成長させるフィードバックにおいて、最も大切な基本があります。それは、相手の性格や人格ではなく、具体的な「行動」に焦点をあてることです。
× 人格を対象にする:「あなたはいつも素晴らしいね」「全然だめじゃないか」
○ 行動を対象にする:「利用者さんの目線に合わせて話せていましたね」「記録の記入が抜けていましたよ」
具体的な行動を指摘することで、新人スタッフは「何を評価されたのか」「どこを改善すべきなのか」を正確に理解できるようになります。
部下のモチベーションを爆発させる「ほめ方」5つのポイント
人は、自分の行動が認められると「また同じようにやってみよう」と考えます。これを心理学では「強化」と呼びます。単に「よかったよ」と伝えるだけでなく、以下の5つのポイントを意識してみましょう。
1. よい行動を見たらすぐにほめる(時間が経つと効果が薄れます)
2. どの行動がどうよかったのかを具体的に伝える
3. 自分の感情(うれしかった、安心した等)を添える
4. 「どうしてそうしたの?」と背景・工夫を聴く
5. 「これからも続けてね」と未来志向で終える
実践!食事介助が上手にできていたときの声かけ
嚥下に不安のある利用者さんの食事介助を、新人のAさんが丁寧に、適切な水分補給を交えながら行っていた場面を例に見てみましょう。
× 惜しいほめ方:
「食事介助、いい感じにできていましたよ。ありがとう」
(一見良さそうですが、具体的に何が良かったのかが伝わりません)
○ 伝わるほめ方:
「Aさん、さっきの食事介助、利用者さんのペースに合わせて落ち着いてできていましたね!水分補給のタイミングも自然で、利用者さんが安心して召し上がっているのが印象的でした。私も見ていてとても安心しました。どうしてあのタイミングで水分をすすめようと思ったのですか?……なるほど、素晴らしい気づきですね。その丁寧な対応、これからもぜひ続けてくださいね!」
関係性を壊さず成長を促す「叱り方(指導)」5つのポイント
「叱る」という行為は、相手を責めて感情をぶつけることではありません。本来の目的は、不適切な行動を改め、次にどうすべきかを明確にすることです。
1. 改善すべき行動を見たらできるだけ早く指摘する
2. 問題点について、事実を具体的に伝える(感情的にならない)
3. その行動がもたらす影響や、自分の感情を伝える
4. 「なぜそうなったのか」背景を聴き、改善策を一緒に考える
5. 未来への期待を伝えて締めくくる
実践!申し送りで大切な情報を伝え忘れたときの声かけ
修理に出していたPHSがユニットにないことを、夜勤者への申し送りで新人スタッフが伝え忘れてしまい、現場が混乱してしまった場面を例にします。
× NGな叱り方:
「なんでそんな大事なことを伝え忘れるの?夜勤の人がどれだけ困ったかわかってる?もっとちゃんと確認してよ!」
(感情等かつ抽象的なお説教になり、新人は萎縮するだけで改善につながりません)
○ 成長を促す叱り方:
「Aさん、さっきの申し送りで、PHSが修理中でユニットにないという情報が抜けていましたね。夜勤さんが探し回ることになってしまい、緊急時の対応が遅れるリスクがあったので、私は少し心配になりました。どうしてあのとき、その情報が抜けてしまったのか、一緒に振り返ってみましょうか。……なるほど、他の引き継ぎ事項に気を取られていたのですね。次からは、物品の状態をメモに書き出して、それを見ながら伝えるようにしましょう(具体的な改善策)。Aさんなら次は必ず意識できると思います。期待していますね」
まとめ:指導は「未来への投資」
忙しい介護現場では、ついつい「背中を見て覚えて」「慣れればわかるから」と言いたくなってしまう瞬間もあるかもしれません。しかし、一歩立ち止まって、「行動」に注目した具体的な声かけを意識するだけで、新人の育ち方は驚くほど変わります。
「叱責(怒る)」は能力の否定ですが、「指導(叱る・ほめる)」はスタッフの未来への投資です。現場全体で人を育てる文化をつくり、より強いチームを目指していきましょう。
この文章は以下の書籍の一部を要約したものです。もっと詳しく知りたい方は
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