現場の「迷い」を断ち切る!障害福祉サービス支給決定・実務の「急所」 第3回 障害支援区分~区分と支給量のギャップをどう説明するか~

2026/04/14

著者
小川 幹夫(おがわ みきお)


自治体職員。都内自治体にて、10年にわたり障害福祉サービスの支給決定・支給量算定実務に従事。現場での豊富な経験に基づき、制度の「建前」と運用の「実態」をひも解く視点を持つ。司法書士有資格者として、行政法および障害福祉制度の高度な法的思考(リーガルマインド)に基づいた実務解説を得意とする。東京都身体障害者福祉司会元会長。

 

 前回までで、支給決定にあたっての「申請者の希望」という視点にスポットを当てて考えてきました。
 今回は、支給決定プロセスにおいて重要な位置を占める「障害支援区分」について整理していきます。

 


障害支援区分について

 まず、障害支援区分(以下「区分」とします。)とは何かを確認しておきましょう。

 

 区分とは、障害者等の障害の多様な特性や心身の状態(以下「心身の状況」とします。)に応じて必要とされる標準的な支援の度合いを総合的に示す指標です。
 介護保険制度における「要介護度」に相当するもので、非該当および区分1~6の6段階で判定されます。
 この「標準的な支援の度合いを6段階に分けて示している」という点が、市区町村が定める支給決定基準における標準支給時間(単位)数(以下「標準支給量」とします。)と深く関係しています。

 

 区分は以下のような流れを経て認定されます。

 

  ① 市区町村職員等による障害支援区分認定調査
  ② 医師意見書の提出
  ③ ①・②の結果を入力して行うコンピュータによる一次判定
  ④ ①~③を踏まえた市区町村審査会による二次判定
  ⑤ ④の答申に基づく市区町村による区分決定

 


区分と支給量のギャップ

 認定された区分と、その後のプロセスを経て実際に決定される支給量との間にギャップが生じることは、制度設計上、ある意味で当然の結果ともいえます。
 なぜなら、区分はあくまで「標準的な支援の度合」を示す指標であるのに対し、実際の支給量は市区町村の個別の支給決定基準に照らし、家族の介護状況といった個別事情を「勘案」して判断されるためです。

 

 なお、この支給決定基準については、事務処理要領の中で行政手続法第5条に基づく審査基準に該当すると明記されています。
 また、審査基準は、同条3項により「行政上特別の支障があるときを除き、<中略>適当な方法により公にしておかなければならない」とされていることから、多くの自治体がWEB上で支給決定基準を公表しており、申請者が区分ごとの標準支給量を知っていることも少なくありません。

 

 そのため、実際に決定された支給量が区分に対応する標準支給量よりも少ない場合に「なぜこの区分なのにこの支給量なのか」という疑問や不安を抱かれることも想定されます。
 逆に、区分に対応する標準支給量の範囲では支援が不足することもあります。これに対応するのが非定型の支給決定になります。


ギャップをどう説明するか

 実際に決定された支給量が標準支給量を下回る場合は、申請の段階から支給決定後の受給者証の交付に至るまで、支給決定プロセス全体について丁寧に説明していくことが不可欠です。

 

 後の回で詳しく述べますが、支給決定プロセスは、相談支援専門員等と支給決定に従事する市区町村職員との協働によって進められます。
 この過程において、申請者や家族と対話をする機会は複数回ありますが、市区町村職員の関与場面としては、主に次のような機会が挙げられます。
 (相談支援専門員の関わり方については後の回で言及します。)

 

  ① 申請受理時
  ② 障害支援区分認定調査時
  ③ サービス利用意向調査時
(②と同時に行われることも多い)
  ④ 支給決定通知書の送付時

 

 これらの一つひとつの場面において、制度の趣旨や支給決定の考え方、そして現段階の手続きがどのような意義を有しているかについて、できる限り分かりやすく説明していくことが重要です。


新規申請時の認定調査は正確だったか

 区分の有効期間は最長3年とされていますが、その間に、心身の状況に変化が生じることは十分に想定されます。
 そのため、状況の変化に応じて区分変更の手続きを行い、現在の支援ニーズを改めて認定調査に反映させることは、実務においても一般的に行われています。
 新たな区分に基づいて支給量の算定を行うことで、利用者のニーズにより即した支援体制を構築していくことが可能になります。

 

 しかしながら、新規申請により区分が認定され、個別事情を勘案したにもかかわらず、標準支給量の範囲内では現実の支援ニーズを十分に満たせない場合はどうでしょうか?

 

  「当初の認定調査が心身の状況を正確に反映した内容となっていただろうか?」

 

という点において疑義が生じ得ます。

 

 制度上は、非定型の支給決定として標準支給量を超過した支給を行うことも可能とされています。
 ただし、その場合には、市町村審査会またはこれに準ずる合議体において、個別事情を踏まえた丁寧な審査が求められます。
 その結果として、支給決定までに一定の時間を要し、申請者にとってはサービス利用開始時期の遅延といった負担を強いることになります。

 

 十分な認定調査を行った結果として、標準支給量では対応しきれないという結論に至ったのであれば、それは制度上、やむを得ないケースといえるでしょう。
 例えば、調査項目の中で区分判定への影響が比較的小さい項目についての評価が相対的に重く出ている場合や、そもそも調査項目には含まれていない事項について特別な事情がある場合には、認定された区分よりも現実の支援ニーズの方が高くなることも十分に考えられます。

 

 しかし、もしも認定調査における聞き取りや評価に何らかの不備や過小評価があったとすれば、本人の心身の状況を正確に反映していない調査といわざるを得ません。
 その結果として生じる不利益は、最終的に申請者本人が被ることになるのです。これはあってはならないことです。

 

 

 障害福祉サービスの利用を一日でも早く開始したいと考える申請者の利益を守るためにも、「認定調査において、心身の状況を正しく評価する」という、極めて基本的でありながら重要な点を、調査担当者は常に意識しておく必要があるのです。