施設看護師の不安を解消! 病院との違い・「臨床判断」のコツ
2026/02/20
病院から介護施設へ。初めて施設で働く看護師が抱く「判断」への不安を、医師の視点から解消します。
石川崇広(いしかわ・たかひろ)
『迷わない・慌てない 介護現場の看護師のための 臨床判断・対応ハンドブック』著者
千葉大学大学院医学研究院総合医科学講座特任准教授、医学博士。東千葉メディカルセンター糖尿病・代謝・内分泌内科副部長。専門は糖尿病・代謝・内分泌内科、老年医学。大学病院および地域中核病院に勤務しながら、2010年より現在まで介護老人福祉施設の嘱託医を務めている。日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本糖尿病学会糖尿病専門医・研修指導医、内分泌代謝・糖尿病内科領域 専門研修指導医、日本老年医学会老年科専門医・指導医、日本老年医学会代議員。
はじめに:施設看護師が抱える「孤独な判断」への不安
「重症患者の多い病院で働いてきたけれど、介護施設で一人、急変時に対応できるだろうか……」
「医師がいない夜間や週末、自分の判断ひとつで入所者さんの命が左右されると思うと怖い」
病院から介護施設へ転職したばかりの看護師の多くが、このような不安を口にします。病院では常に医師が近くにおり、指示を受けて動くのが基本でした。しかし、施設は「生活の場」であり、医師は常駐していません。ここでは、看護師が「指示を受ける側」から「判断・指示をする側」への交代を求められるからです 。
この記事では、初めて介護現場に飛び込む看護師が、自信をもって「臨床判断」を行えるようになるためのポイントを解説します。
病院と施設の違い:求められる役割の転換
病院と介護施設では、看護師に求められる役割が根本的に異なります 。
病院:治療の場。医師が中心となり、看護師は状態把握や医師の指示に基づく医療行為を行う 。
施設:生活の場。医師は非常勤であることが多く、夜間も不在。医療的な判断や対応は、実質的に看護師が中心となる 。
「先生ではないので無理」と思う必要はありません。看護師の皆さんは、すでに基本的な医療知識やバイタルサイン測定の技術を持っています。あとは、これまで医師が頭の中で行っていた「考え方の手順」を知り、考え方を転換するだけでいいのです 。
医師の頭の中を覗く:正しい「臨床判断」のステップ
医師が診断を下す際、最初から「病名診断」ができるわけではありません。まずは、現在の症状から暫定的な「臨床判断」を行っています 。施設看護師も、以下の4つのプロセスを辿ることで、適切な判断が可能になります 。
1.的確な情報収集(LQQTSFAの活用)
漏れなく情報を集めるためのフレームワークとして「LQQTSFA」を活用しましょう 。
L(Location): 部位
Q(Quality): 性状
Q(Quantity): 程度
T(Timing): 時間と経過
S(Setting): 状況
F(Factor): 寛解・増悪因子
A(Associated manifestation): 随伴症状
認知症の方で言葉での確認が難しい場合は、表情や「普段との違い」に着目して推察します 。
2.情報の解釈・分析
集めた情報を、緊急性の観点から分析します。特に「スピード(発症までの時間)」と「トレンド(悪化しているか不変か)」が重要です 。
突発的に発症し持続している: 脳梗塞や心筋梗塞など、緊急性が非常に高い 。
ゆっくり悪化している: 感染症や腫瘍などを疑い、受診のタイミングを調整する 。
3. 臨床的な判断(緊急性・治療可能性・有病率)
「様子を見る」「医師に報告」「救急搬送」の分岐点を見極めます 。
緊急性:命にかかわる一刻を争う状況か 。
治療可能性:病院に行くことで状態の改善が期待できるか 。
有病率:珍しい病気より、まずは「高齢者にありふれた病気」から疑う 。
4. 振り返り
医師への報告後や受診後の結果を確認し、「自分の見立ては妥当だったか」を心の中でこっそり振り返ります。これが次の自信につながります 。
まとめ:あなたは「優秀なメカニック」
高齢者の経過は飛行機の着陸に似ています 。私たちはパイロット(本人)がスムーズに着陸できるよう、わずかな異音や不調に気づく「優秀なメカニック」です 。「何だか普段と様子が違う」という、日頃から本人を見ている皆さんの感覚こそが、重大な病気を見つける何よりの武器になります 。
介護現場での仕事はプレッシャーもありますが、一人ひとりの人生に深く関わり、見届けることができる大きなやりがいがあります 。焦らず一歩ずつ、施設看護師としてのスキルを磨いていきましょう。
もっと詳しく知りたい方はこちら
『迷わない・慌てない 介護現場の看護師のための 臨床判断・対応ハンドブック』

