独立・開業で広がる!ソーシャルワーカーの新しい働き方ガイド Vol.15 あなた自身のソーシャルワークをデザインする
2025/12/12
福祉職(社会福祉士・介護福祉士・ケアマネジャー等)必見!
著者
横田一也(株式会社カラーサ・社会福祉士事務所カラーサ代表)
松谷 恵子(まつたに社会福祉士事務所所長)
小川 幸裕(弘前学院大学社会福祉学部教授)
全15回にわたる連載「独立・開業で広がる!ソーシャルワーカーの新しい働き方ガイド」も、今回で最終回を迎えました。最後までお付き合いいただき、心から感謝申し上げます。
この連載は、介護や福祉の仕事に熱い想いをもち、ご自身のソーシャルワークをさらに深めたいと願うすべての方へ向けて、独立・開業という選択肢を具体的にお届けすることを目指してきました。
6名の実践者の多様なストーリーを通じて、独立・開業という道のりのリアルな姿、そしてその先に広がる可能性を感じていただけたのではないでしょうか。
最終回となる今回は、連載全体を振り返りながら、これから新たな一歩を踏み出す皆さんの「スタートライン」となるべき、3つのメッセージをお届けします。
1. すべての始まりは、誠実な「問い」から
連載を通じて登場した実践者たちに共通していたのは、キャリアの出発点に社会や組織に対する誠実な「問い」があったことです。「もっとこうすれば、本当に必要な支援を届けられるのに…」という組織への葛藤、障がいのある方が不便を強いられる社会への「違和感」、そして「このままでは成長が頭打ちになる」という自分自身への危機感。この「問い」を生み、育てる力は、現状にとどまらず、より良い支援を模索し続けるソーシャルワーカーに求められる力といえます。
独立・開業は、決して現状からの逃避ではありません。それは、目の前の課題から目をそらさず、どうすればより良い支援ができるかを問い続けた結果としてたどり着く、主体的な「ソーシャルアクション」です。
あなたが今、心のなかに抱いている小さな「問い」や「もっとこうしたい」という想いこそが、未来のソーシャルワークをデザインする最も大切な原動力となります。
2. 理念を支える「知識」と「仲間」
その熱い想いを確かな形にするためには、理念を支える現実的な「準備」が不可欠です。本連載では、事業計画の立て方、資金調達、法的手続き、そしてリスク管理といった、独立・開業に必須の知識を解説してきました。特に、すべての実践者が異口同音にその重要性を語っていたのが、「ネットワーク(仲間)」の存在です。
Vol.9の門田さんの事例のように、複雑な法務・税務手続きで頼りになる専門家。Vol.5の松谷さんのように、孤立しがちな独立当初の精神的な支えとなる先輩や同業者。そしてVol.13の髙田さんのように、同じ志をもって共に事業を創り上げるパートナー。ネットワークとは、単なる名刺の数ではなく、こうした多様な役割をもつ「知恵と勇気の共同体」なのです。
孤独な決断を支えてくれる同業者とのつながり、そして共に事業を創り上げる信頼できる仲間。独立は「個」の挑戦でありながら、決して一人で完結する仕事ではないことがわかります。
知識を学び、信頼できる仲間とつながること。この両輪が、あなたの理念というエンジンを力強く動かし、困難な航海を乗り越えるための羅針盤であり、安全な港にもなってくれます。
3. 事業を継続させる「しなやかな戦略」
独立・開業はゴールではありません。事業を継続させ、社会に価値を提供し続けるためには、理念と経営を両立させる「しなやかな戦略」が求められます。
本連載では、そのための多様なモデルをご紹介しました。
● 支援活動そのものが事業のPRとなる「ソーシャルビジネス」という視点(Vol.7の坂根さんの事例)。これは、支援の質を高めることが、そのまま事業の価値向上に直結するモデルといえます。
● 安定した中核事業を基盤に、新たな挑戦へ投資する「安定した中核事業を土台とした、段階的な事業展開」の考え方(Vol.11の村田さんの事例)。安定した収益基盤を守りながら、現場のニーズを元に新たな挑戦を行うことで、リスクを管理しつつ成長を続けます。
● 理念を追求する「赤字事業」を、収益を確保する「黒字事業」で支える「事業ポートフォリオ」の発想(Vol.13の髙田さんの事例)。理念のために採算度外視の支援も行いながら、事業全体としては健全な経営を維持する、覚悟とバランス感覚が求められます。
● これらに共通するのは、理想を追求しながらも、現実的な経営視点をもっていることです。この「ライフワーク(理念)」と「ライスワーク(収益)」のジレンマ を乗り越えるための戦略こそが、あなたの事業を未来へとつないでいきます。
● あなた自身のソーシャルワークを、デザインする
独立・開業という選択肢に限らず、「自分はこれから、どんなソーシャルワークをしていきたいのか」を考えることは、とても創造的な営みです。
悩むこともあるでしょう。そんなとき、この連載で紹介したさまざまな実践者の歩みが、あなただけの答えを見つけるための、ささやかな「ヒント」になれば幸いです。

著者紹介
横田 一也(よこた かずや)
株式会社カラーサ・社会福祉士事務所カラーサ 代表/認定社会福祉士(地域社会・多文化分野)・介護福祉士・介護支援専門員・大阪府人権擁護士等。
障害者・高齢者福祉分野を中心に支援経験を重ね、2012年に独立。ソーシャルワーカーとして子どもから障がい者・高齢者まで幅広い支援活動を行う。成年後見人等の受任のほか、スクールソーシャルワーカーや大学等講師を務める。訪問ケア・人材育成事業で地域に根ざした活動を展開。
松谷 恵子(まつたに けいこ)
まつたに社会福祉士事務所所長/認定社会福祉士(児童・家庭分野)・介護支援専門員。
高齢者の通所介護・グループホームの勤務を経て、2011年10月まつたに社会福祉士事務所開設。福祉全般の相談業務、第三者委員やオンブズマン、成年後見人等の受任、スクールソーシャルワーカー、スーパーバイザー、非常勤講師・研修講師等を行う。
小川 幸裕(おがわ ゆきひろ)
弘前学院大学社会福祉学部 教授/社会福祉士。
独立・開業したソーシャルワーカーを対象とした調査に基づき、ソーシャルワーク実践の構造や要因を分析。研究活動の傍ら、地域の活動をとおして地域の社会福祉連携の推進に貢献し理論と実践の架け橋となる活動に取り組む。
