独立・開業で広がる!ソーシャルワーカーの新しい働き方ガイド Vol.11 【独立・開業を選んだ人⑤】村田優美さん(けあする合同会社)の場合
2025/11/14
福祉職(社会福祉士・介護福祉士・ケアマネジャー等)必見!
この連載は、介護や福祉の仕事に熱い想いをもち、これから資格取得を目指している方、あるいはすでに資格をもっていて、さらなるスキルアップを考えている方に向けてお届けします。
今回は、医療法人でのケアマネジャー経験を踏まえ、ソーシャルワーカーとしての独立・開業の道を選んだ村田さんへのQ&Aを通じて、独立・開業に必要な心構えや視点をお伝えします。
聞き手:横田一也(株式会社カラーサ・社会福祉士事務所カラーサ代表)
村田さんのプロフィール

けあする合同会社代表/社会福祉士、介護福祉士、相談支援専門員、主任介護支援専門員。居宅介護支援事業所を運営すると同時に、現場で得た視点をもとに高齢者施設や医療機関へ美容技術者を派遣するなど「高齢者と美容をつなぐ事業」を展開し、 最近では外国人の介護教育、人材紹介の事業を行う等、幅広く活躍中。
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Q1 「独立・開業」の原動力となったものは?
医療法人で20年間、ケアマネジャーとして勤務し、介護福祉士・介護支援専門員・社会福祉士の資格を取得しながらキャリアを積んできました。しかし、このままでは成長が頭打ちになると感じ、「自分で考える」ことの重要性を痛感。高齢者のアピアランスケア※を研究するため大学院で学び始めました。そこで資格や制度、組織の枠にとらわれない新たな活動の可能性を知り、より自由で主体的な支援を実現するため独立を決意しました。
※アピアランスケア…がんやその治療によって生じる脱毛、手術痕などの外見の変化に対し、患者の身体・心理・社会的な苦痛を軽減するために行われるケア全般
Q2 「独立・開業」までのプロセスは?
ケアマネジャーとして培った経験とノウハウを基に、自ら法人を設立し「きのこケアプランセンター」を開業しました。同時に、かねてから思い描いていた「高齢者と美容をつなぐ事業」を立ち上げ、高齢者施設や医療機関へ美容技術者を派遣するサービスを開始。利用者の生活の質向上や自己表現の機会創出を目指しました。現在は6名の美容スタッフが活躍し、地域に根ざした多様な支援を展開しています。
Q3 独立・開業して良かったことは?
独立・開業して最も良かったのは、見える世界が広がったことです。介護・福祉・美容の枠を超え、さまざまな業界の人と出会い、視野が大きく広がりました。そのなかで自分の強みや提供できる価値を再確認し、異分野とのコラボレーションの可能性を強く感じています。また、経営者として社会起業におけるお金の流れや資金活用について深く考えるようになり、事業を持続的に発展させるための視点や判断力が培われています。
Q4 独立・開業して大変だったことは?
独立・開業当初は、税務や労務など経営に関する知識やノウハウがまったくなく、実務をこなしながら管理業務も並行する難しさを痛感しました。日々の業務に追われ、精神的にも厳しい時期がありましたが、そのなかで多くの方から助言や支援をいただき、支えられてきました。振り返ると、この苦しい経験こそが経営者としての基盤を築き、自ら成長するための大切な時間だったと感じています。
Q5 どんな人におすすめしたい?
独立・開業は、一人で完結する仕事ではありません。人とのつながりや協力関係が事業の発展に不可欠です。協調性があり、積極的にネットワークを築ける人こそ、多様な機会や可能性を広げられるため、この道に向いていると思います。
Q6 独立・開業後の成長戦略は?
けあする合同会社では、ケアプランセンターの活動を基盤に事業を拡大し、現在はケアマネジャーが20名を超える規模へと成長しています。現場で感じた「高齢者のアピアランスケア」の重要性から立ち上げた訪問美容事業では、利用者の生活の質向上に貢献してきました。
このように、日々の現場で得た気づきを具体的なサービスとして形にすることを大切にしています。近年は外国人の福祉教育・人材育成にも注力し、日本に来る前の現地での福祉教育から、日本での介護資格取得支援、就労後のサポートまで、一貫して伴走する体制を整えています。これにより外国人の労働環境の改善や定着支援につなげることを目指しています。
私自身もインドネシアに赴き、介護や福祉の知識と技術を直接指導するなど、国境を越えた活動を展開し、さらなる事業の多角化と社会的インパクトの拡大に取り組んでいます。

