今月のおはよう21 どこに気づいて、何を書く? “目のつけどころ”で変わる介護記録
2025/06/23

『おはよう21』2025年8月号から、特集(どこに気づいて、何を書く? “目のつけどころ”で変わる介護記録)の内容を一部ご紹介いたします。
利用者の健康状態やその日の過ごし方など、介護職が毎日記入する「介護記録」。 単に「書かなければいけないもの」と感じている人もいるかもしれませんが、利用者が健康で快適に過ごすためのヒントがつまっている大切なものです。
そんな記録を最大限活かすためには、どこに気づいて、何を書けばよいのでしょうか。
ケアの質が変わる介護記録の目のつけどころを学びます。
どこに気づいて、何を書く?
介護記録の目のつけどころ
ケアの質を高める介護記録の目のつけどころを、エピソードを交えながら紹介します。
目のつけどころ① 利用者の言動は具体的に書く
エピソード
家族から虐待を受けていた利用者のSさん。
周囲の人への不信感からか、入居後しばらくは、さまざまな場面で介助を嫌がる様子がみられ、多くの職員が頭を悩ませていました。
ある日、職員Aが、職員Bの記入したSさんの夕食時の記録を読むと、特に嫌がるそぶりはなかった模様。
自分が食堂に誘導したときの記録と比較して、その理由を考えてみることにしました。
職員Aの記録
「食事の時間ですよ。今行かないと食べられませんよ」と声をかけると、「食べたくない」と言い、目を閉じられた。
職員Bの記録
「食事の時間ですが、おトイレは大丈夫ですか」と声をかけると、ベッドから起き上がられた。手引き介助でトイレに誘導後、そのまま食堂の席に着いた。
具体的な記述で記録同士を比較する
職員Aも職員Bも、自分の言動と利用者の反応を具体的に書いていたことで、対比することが可能になりました。
このように、利用者にどのようにアプローチし、利用者はどういう反応をしたのかを具体的に記録に残せば、適切なケアの方法を考え、試すことができます。
一方で、そうした具体的な反応を書くのではなく、「拒否」という言葉でまとめてしまう記録もありますが、これはNG。
拒否と書くのは、利用者を「問題行動のある人」に塗りこめようとする職員側の目線です。
「拒否をされた」と感じても、どんな言葉・態度を示したのかを客観的に書くことがポイントです。
利用者の言葉や態度をそのまま書けば、自分で利用者の思いを汲み取れなくても、記録を見たほかの職員が何かを感じることもあります。
その行動が実は「拒否」ではなかったということもあるでしょう。
目のつけどころ② 利用者のプラスの面に目を向ける
エピソード
ふだんから、利用者や職員に「あっちへ行け」「うるさい」など、強い言葉が絶えない認知症のある男性の利用者Tさん。
ある日のTさんの介護記録にこんな記述がありました。
デイルームのテーブルで、Xさん(女性の利用者)がうつぶすように寝ていました。
すると、Tさんが近づいてきて、Xさんに「あんた、疲れとるなら、ベッドに行って休みなさいよ。無理はされんよ」とやさしく言われていました。
この記録を読んだ職員からは、「Tさんを暴力的な人としか見ていなかった。偏見だったかも」「記録には、職員目線の困りごとしか書いてなかった」との発言がありました。
これを契機に職員がTさんを見る目が変わり、記録にもTさんのやさしい一面がたびたび出てくるようになりました。
プラスの面に目を向けるとかかわり方の糸口が見つかる
介護職の大きな悩みといえば、認知症のある人とのかかわりでしょう。
「認知症があっても、かかわり方次第で穏やかになる」と頭の中でわかってはいても、かかわり方の糸口が見つからないことがあります。
すると、詳細な記録として残すのは、職員が対応に苦慮する場面やトラブルがあった場面、そこで行われた対応になりがちです。
マイナスをゼロにするための記録ともいえます。
「ニヤリ・ホット」という言葉があります。
利用者の笑顔や前向きな行動など、思わずニヤリとするような心が温まる出来事を記録し、共有する取り組みです。
「ニヤリ・ホット」を記録に残せば、利用者のプラスの側面に目が行き、かかわり方の糸口が見つかることがあります。
また、「拒否」と同様、「暴言を吐いた」「暴力を振るった」「わがままを言った」「抵抗した」などは職員側の目線の言葉です。
利用者がどのような言葉や態度を示したのか、具体的に書きましょう。

執筆
第1章・第2章
取材協力:舟田伸司(富山県介護福祉士会 会長)
執筆:佐賀由彦(ライター)
第3章
執筆:加藤幸夫(千葉県介護福祉士会 理事)/山本真也(北海道介護福祉士会 副会長)
第4章
取材協力:五十嵐修平(北海道介護福祉士会 理事)
佐藤しづか(特別養護老人ホーム遊楽の丘)
真鍋哲子(株式会社ONMUSUBI代表取締役)
執筆:佐賀由彦(ライター)
以上は、『おはよう21』2025年8月号の特集の内容の一部です。
このほかにも本誌では、下記のトピックを取り上げ解説しております。ぜひお手に取ってご覧ください。
特集
どこに気づいて、何を書く? “目のつけどころ”で変わる介護記録
1 「 記録って何のために必要?」介護記録がもつ4つのポテンシャル
2 どこに気づいて、何を書く? 介護記録の目のつけどころ
3 ケアの質を高めた介護記録の4事例
4 多職種で語る 介護記録の“ココが大事”
『おはよう21 2025年8月号』

●本書のお買い求めは、
中央法規オンラインショップ
が便利です。
年間購読(増刊号2冊含む計14冊)のお客様は、1冊あたりの割引に加えまして毎月の送料をサービスさせていただきます!
さらに、年間購読の方限定の動画配信サービスもご利用いただけます!
●電子版も好評発売中!
販売サイトは
Amazon
、
富士山マガジンサービス
から順次拡大予定!