今月のおはよう21 イザというときにあわてない 介護現場のよくある「ピンチ」解決術
2025/06/02

『おはよう21』2025年7月号から、特集(イザというときにあわてない 介護現場のよくある「ピンチ」解決術)の内容を一部ご紹介いたします。
不測の事態や利用者の急変など、日々の仕事のなかで介護職がピンチだと感じることは少なくありません。
そんなとき、どう対応すればよいのか?
介護現場でよく起こりがちな「ピンチ」と、それを上手に乗り越える方法をまとめます。
介護現場でよくある「ピンチ」とその対応
食事場面
食事介助中に利用者が居眠りしてしまう
こんなときどうする?
覚醒レベルを上げる
利用者が居眠りをすると、食事介助に時間がかかり、その後の業務にも影響が出てしまう…。
「ピンチ」と感じる介護職がいるでしょう。
原因としてまず考えられるのは、食事時の姿勢です。
いすや車いすに座っていると、背もたれに寄りかかってしまうことがあります。
そのような場合は、腰から背中にかけてクッション等を入れ、上体を起こし、少し前かがみ姿勢にすることで、誤嚥防止と同時に、利用者の覚醒レベルを上げることができます。
また、利用者の足の裏をしっかりと床につけることも大切です。
フットサポートに乗せたままにせず、床に降ろしたほうが姿勢も安定し、覚醒レベルも上がります。
覚醒レベルを上げるもう一つの方法は、食前の口腔ケアの実施です。
唾液の分泌を促すとともに、口の中がさっぱりとし、食欲増進の効果もあります。
今後はどうする?
疲れやすさに配慮する
しっかりと目が覚めていない状態での食事摂取は、誤嚥や窒息といった危険な事態を招くことにつながります。
高齢になると疲労感や眠気を感じやすく、特に食事の時間帯にその傾向が強くなることがあります。
ベッドから車いすへ移乗してから、長時間食堂で待たされて、食事が始まる頃にはすでに疲れてしまって、居眠りにつながっているケースもあります。
こうした状態は、薬の副作用や睡眠障害などが原因で起こることもあります。
利用者が居眠りしてしまう原因を丁寧に探り、多職種で情報を共有し、連携していくことが大切です。
隣の席の人の食事も食べてしまう
こんなときどうする?
隣の利用者と距離をとる
認知症の中核症状の一つに理解・判断力の低下があります。
認知症の進行に伴い、自分の置かれている状況を正しく理解し、状況に応じた判断をする能力が低下していきます。
また、大脳の前頭葉には欲求をコントロールするはたらきがあります。
前頭葉が萎縮すると、欲求のコントロールが難しくなります。
たとえば、「食べたい」という欲求を抑えられなくなり、理解・判断力の低下と相まって、ほかの人の食事に手を伸ばし食べてしまう行為がみられます。
こうしたときは、その場での対応に時間をかけて取り組む対応があります。
その場での対応は、まず隣の利用者との距離を十分にとることです。
手を伸ばしても手が届かなければ、隣の席の人の食事を食べてしまうことが回避できます。
食用を満たす工夫を実践する
時間をかけて取り組む対応としては、日頃から利用者の食欲を満たす工夫を実践することです。
たとえば、食事やおやつの時間に、職員のほうから「おかわりはいかがですか」「これも食べませんか」と積極的に声をかける方法があります。
もちろん、栄養管理や体重管理など医療職と連携する必要はありますが、いつでも食欲を満たせる環境にあることが認識されれば、ほかの利用者の食事に手を伸ばすことが減るかもしれません。
今後はどうする?
利用者ごとの原因を探る
たとえば、左半側無視のある利用者の場合、左側の食べ物を認識できず、右側しか手をつけないことがあります。
右側にあるものだけでは食欲を満たすことができず、右隣の利用者の食事も自分の食事だと思い、手を伸ばしてしまうことがあります。
単に「認知症だから」と安易に考えず、利用者ごとの原因を日頃から探っていくことが大切です。
また、ほかの利用者の食事を食べてしまう場合、食事形態が合っていないと、誤嚥や窒息のリスクがあります。
日頃からほかの人の食事に手を伸ばすことが多い利用者であれば、万が一のことを考え、食事形態が同じ利用者を隣の席にする工夫もよいと思います。
執筆
伊東一郎(介護コンサルLink株式会社 代表取締役)
以上は、『おはよう21』2025年7月号の特集の内容の一部です。このほかにも本誌では、下記のトピックを取り上げ解説しております。ぜひお手に取ってご覧ください。
特集
イザというときにあわてない 介護現場のよくある「ピンチ」解決術
1 イザというときにあわてない 介護職の心得5か条
2 介護現場のよくある「ピンチ」とその対応
①食事場面
②排泄場面
③入浴場面
④移乗・移動・歩行の場面
『おはよう21 2025年7月号』

●本書のお買い求めは、
中央法規オンラインショップ
が便利です。
年間購読(増刊号2冊含む計14冊)のお客様は、1冊あたりの割引に加えまして毎月の送料をサービスさせていただきます!
さらに、年間購読の方限定の動画配信サービスもご利用いただけます!
●電子版も好評発売中!
販売サイトは
Amazon
、
富士山マガジンサービス
から順次拡大予定!