Q&Aでわかる!介護施設の看護実務 【Q16】
2025/08/29

「看護師」の職場といえば、真っ先に病院が思い浮かぶと思います。しかし、実際の職場は多機にわたり、介護施設もその一つです。本連載では、介護施設に勤務する看護師の業務内容や考え方、介護職などの他職種との連携について、特に重要な項目をピックアップしてQ&Aの形で紹介していきます。
【著 者】
前川 静恵(まえかわ・しずえ)
社団法人是真会病院病棟師長、慈恵病院看護部長、長崎市医師会保健福祉センター、老人保健施設ハーモニーガーデン副施設長、有限会社Gracias かいごの花みずき施設長、株式会社パールの風代表取締役、社会福祉法人鳳彰會副理事長などを経て、現在社会福祉法人鳳彰會理事、特別養護老人ホームひこばえ施設長、ケアハウスひこばえの苑施設長。看護師、介護支援専門員。
主な著書に、『訪問介護事業所サービス提供責任者仕事ハンドブック』中央法規出版、2006、改訂版2009、三訂版2013、『デイサービス業務実践ハンドブック』中央法規出版、2014、改訂版2015、など。
Q16 施設での看取りにおける看護師の役割は?
[Answer]
「看護師=医療」という概念が強いなか、「利用者本人の思い(価値観、人生観)に添った生活の場」である施設での看取りにおいて、病状や疾患に視点を置くのが看護だと思います。
「看取り」の時期には、疾患そのものからの増悪や、レベル低下、機能低下などによりさまざまな症状が出現します。そうしたことに気がつかない介護職員も多いので、看護師の視点から、死期が近まるときの症状などを介護職員に説明し、認識してもらうようにします。
医療的治療、技術ではなく、利用者の苦痛を除去し、安楽に過ごしていただくために介護職員ともども一丸になって援助していくのが看護師の役割と言えます。
[解 説]
看取りにおいて最も大切なことは、「心から利用者に寄り添う気持ち、傾聴、共感の心」を持つことだと考えられます。特に施設においては、「医療的な延命措置は望まず、苦痛なく、穏やかに過ごさせてほしい」という家族の意向も多く、その意向を尊重することが重要です。したがって、看護師は利用者の状態を正確に把握するのはもちろんのこと、介護職員との綿密な情報共有、主治医や家族との緊密な連携、そして何よりも利用者本人を含めた信頼関係を基盤として、一日一日を安らかに過ごせるように支援していくことが、施設における看取りの看護師の最も重要な役割と言えるでしょう。
※本連載は、前川静恵先生の著書『Q&Aでわかる!介護施設の看護実務―特養の実地指導・連携・ケア』(中央法規出版、2022年10月発行)をもとに作成しています。施設看護師の業務をさらに深く知りたい方は、本書をぜひご覧ください。
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