Q&Aでわかる!介護施設の看護実務 【Q14】

2025/08/01

「看護師」の職場といえば、真っ先に病院が思い浮かぶと思います。しかし、実際の職場は多機にわたり、介護施設もその一つです。本連載では、介護施設に勤務する看護師の業務内容や考え方、介護職などの他職種との連携について、特に重要な項目をピックアップしてQ&Aの形で紹介していきます。

 

【著 者】

前川 静恵(まえかわ・しずえ)
社団法人是真会病院病棟師長、慈恵病院看護部長、長崎市医師会保健福祉センター、老人保健施設ハーモニーガーデン副施設長、有限会社Gracias かいごの花みずき施設長、株式会社パールの風代表取締役、社会福祉法人鳳彰會副理事長などを経て、現在社会福祉法人鳳彰會理事、特別養護老人ホームひこばえ施設長、ケアハウスひこばえの苑施設長。看護師、介護支援専門員。
主な著書に、『訪問介護事業所サービス提供責任者仕事ハンドブック』中央法規出版、2006、改訂版2009、三訂版2013、『デイサービス業務実践ハンドブック』中央法規出版、2014、改訂版2015、など。

 

Q14 インフルエンザの予防と発生時の対応は?

[Answer]

 施設の構造によって利用者の居室の配置に違いがあります。個室の場合は各自で感染への対応が可能です。多床室の場合はほかの利用者の感染を防ぐことが重要です。
 予防や発生時の対応については、各々の施設でマニュアル化されていると思いますので、それを職員が周知し、確実に守られることが大切です。
 予防のために職員のマスク着用の義務づけを10~11月ごろから行い、家族など外からの来訪者にも手指消毒やマスク着用を義務づけ、インフルエンザ罹患者が発見された場合には、まずその利用者を隔離するなどの対応が必要です。
 「うつらない、うつさない」を念頭に全員が協力しあって施設全体の蔓延を防ぐ努力が必要です。

 

[解 説]

 多床室で罹患者が発生した場合、職員は発生した室内ではガウンテクニックを行い、ガウンを着用します。アルコール消毒スプレーを常に身につけ、こまめに手指消毒、手袋(必要時)・マスクの着用、うがい・手洗いを励行し、清潔・不潔の区別を再確認します。発熱や体調不良時は無理せず申し出ることも重要です。
 罹患した利用者を、まず個室に隔離します。複数罹患した場合は医師の指示のもと、他の利用者の集合を避け、食事は各自室とするなど隔離します。バイタルチェックと全員の状態観察を十分に行い、早期発見に努めます。
 罹患した室内のベッド、椅子、車椅子、手すり等はアルコール消毒、床、廊下は次亜塩素酸ナトリウム消毒液で清掃します。室内は1~2時間ごとに換気し、加湿器を設置、ない場合は水を入れたバケツや濡れたタオルで湿度を保ちます。部屋の入口には速乾性アルコール消毒液を設置し、出入りの際に手指消毒を徹底します。
 家族へは罹患した時点で報告し、主治医と相談の上、面会制限や面会謝絶を決定した場合は文書で通知します。ことづけ物は事務所で対応し、状態説明は看護師が随時行います。「うつらない、うつさない」を念頭に全員で協力し、蔓延を防ぐ必要があります。

 

※本連載は、前川静恵先生の著書『Q&Aでわかる!介護施設の看護実務―特養の実地指導・連携・ケア』(中央法規出版、2022年10月発行)をもとに作成しています。施設看護師の業務をさらに深く知りたい方は、本書をぜひご覧ください。