第120回社会保障審議会(介護保険部会)
2025/05/29

第120回社会保障審議会(介護保険部会)について紹介します。
第120回社会保障審議会(介護保険部会)
第120回社会保障審議会介護保険部会が、2025年5月19日に開催されました。
4月20日に公表された「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会の中間とりまとめで提示された論点などを踏まえて、今回は「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築」「介護人材確保と職場環境改善・生産性向上、経営支援」について、委員から様々な意見が出されました。
会議の場で出された主な意見について紹介します。
1.地域の3類型によるサービス提供体制の構築
人口動態の変化に対応するため、全国を「中山間・人口減少地域」「大都市部」「一般市等」に分類し、サービス提供体制を整備するという案が出されています。
これに対し、委員からは次のような意見が出されました。
・類型ごとに人員配置などを設定すること自体には一定の合理性がある
・様々な特性をもつ地域を3つの区分に当てはめることは簡単ではない
・地域によって受けられるサービスが異なると不公平が生じる可能性がある
・異なる類型の地域にまたがって活動する事業所において、給付管理などの業務が煩雑化する可能性がある
少子高齢化の進行により、それぞれの地域によってサービスの需要の状況は変化することが予想されています。地域の実情に即したきめ細かい対応を行うための案が示されたことには一定の評価がありつつも、実現に向けては多くの課題が残されています。
2.介護人材の確保と処遇改善
2040年度には約272万人が必要とされる介護人材の確保は、介護保険制度の継続のために喫緊の課題です。そのための最大の論点は何といっても処遇改善でしょう。これまでも議論されてきましたが、今回も抜本的な施策を求める声が多く聞かれました。
・他産業との賃金格差が拡大し、現在の公定価格の設定では人材流出に歯止めをかけられない
・人材の獲得のため民間の職業あっせんを利用せざるを得ず、経営が圧迫されている事業所が多くある。
・外国人人材が定着するためには、日本語支援のみでなく、地域に定着できるような環境整備が必要
・(人口減少地域における市町村事業でのサービス提供について)そもそも役場の職員ですら十分な数を確保できていない状況がある。仮に財源を確保できたとしても人材を集められるとは思えない
介護の担い手がいなくなり、「保険あってサービスなし」の状況になれば介護保険制度そのものの根底が揺らぎます。人材の確保とそのための処遇改善には迅速な対応が求められます。
3. サービスの質の評価
サービス提供体制のあり方を検討する上では、その結果サービスの質が高まるかどうか、あるいは低下しないかどうかを吟味する必要があります。これまでも「サービスの質の評価」として指摘されてきたこの点を、いま一度捉え直す必要性が唱えられました。
・サービスの質が、アウトカム(サービスによって生じる効果)ではなくストラクチャー(人員や設備の基準)で評価されてしまっている
・業務効率化や生産性の向上は、サービスの質の向上を第一にする必要がある
・サービスの質とは何かという研究がこれまで十分に行われてこなかった
これまで抽象的に用いられることも多かったサービスの「質」を評価するための考え方や手法について、さらなる議論が期待されます。
4.事業者の大規模化、協働化
サービス事業者の効率化を図り、生産性を向上させることも重要な課題です。
そのための方策として、ICTの活用などとともに、大規模化によるバックオフィス業務の効率化が推し進められています。また、小規模事業者の経営基盤の安定のためにも、事業者間での連携・協働化が促進されています。
・効率化のためにはある程度の大規模化・協働化が必要
・地域ごとのローカルルールについて整理する必要がある
・社会福祉連携推進法人制度の活用が望まれるが、社員が社会福祉法人であることなどの条件が厳しい
大規模化・協働化の必要性が認められる一方で、そのための具体的な施策やその実効性について検討を求める声が挙げられました。
今後の予定
今回の部会では、2つのテーマについて議論が行われました。次回以降、その他のテーマについても検討が行われ、今年の冬頃をめどにとりまとめが行われる予定です。
審議会の資料等は、
厚生労働省のHP
から確認することができます。