第10回 地域共生社会の在り方検討会議
2025/05/27
.png)
令和7年5月20日(火)に、第10回地域共生社会の在り方検討会議が開催され、これまでの審議の成果となる「「地域共生社会の在り方検討会議」中間とりまとめ(案)」が示されました。
5月28日(水)には、 「地域共生社会の在り方検討会議」の中間とりまとめ が公表されました。
本記事は、5月20日(火)の検討会議を元に作成しております。
地域共生社会の実現に向けた取組の開始
中間とりまとめ(案)の「0.はじめに」にも記されている通り、地域共生社会の理念・概念が提唱され、政府において本格的な取組が開始されてから10年弱が経過しています。
この間に、令和2年の社会福祉法改正によって「重層的支援体制整備事業」が創設されるなど、地域共生社会の実現に向けた制度整備が進められてきた一方で、制度の狭間に置かれる事案への対応や、地域ぐるみでの支え合いを十分に築けていない現状が指摘されています。
検討会議の設置―地域共生社会の実現に向けた5つの論点―
こうしたなか、厚生労働省は、令和5年6月に「地域共生社会の在り方検討会議」を設置し、下記を主な検討課題として議論を重ねてきています。
①地域共生社会の更なる展開に向けた対応
②身寄りのない高齢者等への対応
③成年後見制度の見直しに向けた司法と福祉との連携強化等の総合的な権利擁護支援策の充実の方向性
④社会福祉法人・社会福祉連携推進法人の在り方
⑤社会福祉における災害への対応
これまでの検討会議では、先進的な自治体・事業者などからのヒアリングも行い、有識者(構成員)による議論が重ねられ、地域共生社会をめぐる課題や今後の方向性が整理されてきました。
検討会議のこれまでの検討内容を詳しく把握されたい方は、厚生労働省HP(
地域共生社会の在り方検討会議
)をご覧ください。
地域共生社会をめぐる現状認識―中間とりまとめ(案)―
検討会議は、地域共生社会の実現への本格的な取組開始から約10年が経過したものの、取組は一部先進自治体にとどまると指摘しています。
中間とりまとめ(案)では、地縁・血縁などの従来のつながりが希薄化し、単身世帯、とりわけ高齢単身世帯が急増する「2040年問題」を背景に、包括的対応が急務であるとされています。
地域共生社会の理念再整理と連携強化―中間とりまとめ(案)―
まず、地域共生社会の理念として、あらゆる人が排除されずに参画し、互いに支え合うことの重要性が指摘され、行政・住民双方の責務を整理する必要があるとされています。
地域住民が排除されず参画する意義を法文上に反映する、行政が「支え合う関係づくり」を支援する旨を明確化する、といった方向が示されました。
次いで、福祉サービス提供等における「意思決定支援」への配慮に関しては、福祉サービスの提供等に当たっては、意思決定支援への配慮の必要性を明確化することについて、法令上の規定の整備の検討を進めるべきとされました。
福祉以外の分野との連携・協働についても、まちづくり・農業・住まい・交通・消費者行政・防災・司法等の他分野とのそれぞれの役割を踏まえた連携・協働を推進するため、法令上の規定の整備の検討を進めていく必要があるとまとめられています。都道府県による後方支援強化や地域運営組織(RMO)との協働も提案されています。
論点①:包括的支援体制と重層的支援体制整備事業―中間とりまとめ(案)―
重層的支援体制整備事業は、包括的な支援体制の実現を後押しする手段の一つとされていますが、中間とりまとめ(案)では、既存の制度を活用しつつ、地域住民との対話を重視し、段階的に課題を洗い出したうえで導入の可否を判断すべきだ、と強調されています。
(1)現状・課題
包括的な支援体制の整備は市町村の“努力義務”だが、何をもって「整備済み」と見るか不明確で、約45%の市町村が具体的検討に着手していない状況となっていることが報告されています。
包括的な支援体制を実現する手段としての重層的支援体制整備事業は、実施自治体が増加しているものの、住民との対話や事業準備会議を設置していない自治体が約6割、実施計画に評価項目を盛り込んでいない自治体が約3割という状況であり、都道府県は助言・援助責務を負うものの、研修や伴走支援などの受け皿が脆弱だとされています。
(2)主な意見
自治体ヒアリング・検討会で出された主な意見として、「重層的支援体制整備事業を使わない市町村にも支援会議等を普遍化してほしい」「体制整備の評価指標が欲しい」「小規模市町村は窓口の一本化が不可避」「地域づくりを担う人材が不足」「都道府県への研修・伴走支援を強化すべき」といったものが挙げられています。
(3)対応の方向性(5本立て)
① 全市町村への伴走支援
国・都道府県が支援会議や重層的支援会議の枠組みを“未実施自治体”にも拡大する方向性を示し、生活困窮者自立支援制度を中核に介護保険など既存制度と連携する「既存制度活用アプローチ」を提示しています。
② 過疎地域向け「機能集約化アプローチ」
小規模自治体でも相談支援と地域づくりを一体的に担える柔軟な仕組みを新設し、人材は都道府県派遣で補完する方向を示しています。
③ 都道府県の後方支援強化
アドバイザー派遣や伴走支援を拡充し、国は実践事例・専門家を都道府県に紹介するという方向性を示しています。
④ 重層的支援体制整備事業の質向上
「体制=支援完了」ではなく、機能・取組に応じた財政支援へ見直しを図る方向性、地域資源の見える化や対話プロセスを国が具体化し定期的な検証・見直しを法令で義務化する方向性を示しています。
⑤ 指針・人材育成・財政措置
地域づくりの要素を指針に明示し、まちづくり的能力をもつ人材を制度横断的に育成することや、取組規模に応じた財政支援も検討することを提示しています。
論点②:身寄りのない高齢者等への支援―中間とりまとめ(案)―
身寄りのない高齢者等への対応に関して、相談窓口の整備や住まい・死後事務等への支援策強化が論点となっています。
日常生活支援や死後事務を一体提供する「総合的支援パッケージ」のモデル事業を評価しつつ、資力に左右されない仕組み、民間サービスの質の担保、既存の居住支援事業との整理を課題に挙げました。
また、既存の協議会・プラットフォームの活用により地域ネットワークを構築すべきと指摘しています。
論点③:成年後見制度と権利擁護―中間とりまとめ(案)―
成年後見制度の見直しに向けては、「中核機関」の法制上の位置づけや権限を明確化し、家庭裁判所や権利擁護支援チームとの連携を円滑化することが求められると指摘しています。
司法と福祉をつなぐ「中核機関」を法律上明確化し、相談対応、専門職連携、家庭裁判所への情報提供等の権限を規定するよう提案しました。広域設置や委託も可能とする方向が示されています。
論点④:社会福祉法人の役割と今後―中間とりまとめ(案)―
法人の経営協働化や大規模化、地域共生社会の担い手としての役割強化も論点に上がっています。
社会福祉法人・社会福祉連携推進法人が地域共生社会の中核として機能し続けるため、①公益的取組の位置付け明確化、②連携推進法人制度の柔軟化、③過疎地域での法人間協働の強化、という3点を中心に法令・運用の見直しを行うことが提案されています。
論点⑤:社会福祉における災害対応―中間とりまとめ(案)―
災害時は地域全体が「福祉の欠けた状態」となり得るため、平時から防災分野と連携した体制を構築する必要性を指摘し、DWAT(災害派遣福祉チーム)の法制度整備と研修強化を求めています。
おわりに—今後の課題
中間とりまとめ(案)では、2040年に向けて地域社会が抱える課題に対応し、誰も取りこぼされることのない包括的な支援体制を構築するための方向性が示されています。
地域住民の主体性と行政の後方支援の両輪が不可欠であると強調し、幅広い主体が連携協働して地域共生社会を実現する道筋を示しました
検討会議は「取組はこれからが本番」とし、人と人が支え合う、新たな繋がりを生み出すことの価値と意義を提唱し続け、そして、実行に移していく必要があるとしつつ、制度改正を含む具体化の役割を、関係審議会にも委ねています。