言語聴覚士もも先生の発達凸凹キッズのことばの相談室 第17回

2026/09/18

ことばの発達は、 発達の凸凹にかかわらず、子育て中の親がもっとも気になることの1つです。背景には、発語の時期が早い、遅い、ことばが多い、少ない、発音が明瞭、不明瞭など、まわりの子と比較しやすく、不安や悩みの種になりやすいということがあります。この連載では、日々、保育園や幼稚園での巡回相談、療育機関でのことばの療育を行っている言語聴覚士のもも先生に、「ことば」や「食べること」など、お口に関するよくある相談にわかりやすく答えていただきます。


Q. おしゃべりは上手だけれど、話がどんどんそれたり、まとまらなかったりする子にどう対応したらいい?

 

A. 話がそれる背景には、記憶や会話のルールの理解など、いくつかの要因が考えられます。話の流れを「見える化」したり、大人の相づちを工夫したりしながら、「会話」の経験を積んでいきましょう。

 

 「日曜日にパパとママと公園に行って…。〇〇ちゃんのママのお仕事は病院なんだって。ぼくのパパは、いま会社でお仕事。パソコン打つのがすごく速くて…」。こんなふうに、次から次へとことばがあふれてくる子どもの話を聞いていて、「あれ? いま何の話だったかな?」と戸惑った経験はないでしょうか。
 もしかすると、子どもの頭の中では「公園→〇〇ちゃんに会った→〇〇ちゃんのママ→自分のパパ」というように、何かしら話題のつながりがあるのかもしれません。ただ、聞いている側からすると、話はどんどんそれていき、たくさん話してくれたけれど、その割には何が言いたいのかが伝わってこないと感じるでしょう。よくおしゃべりをする子で、ときに一方的に話し続けることもある子どもに、大人はどうかかわればよいのでしょうか。今回は、その背景と対応を考えていきます。

 


背景として考えられること

 おしゃべりは上手だけれど、話がどんどんそれたり、まとまらなかったりする子の背景としてまず考えられるのは、話ながら内容を一時的に頭に残しておく力(ワーキングメモリ)の課題です。話しながら「自分がどこまで話したか」を覚えておくことが難しく、前に話したことを忘れてしまうので、話題が飛んでいることに気づきにくいのです。
 また、話の途中で気になることが浮かぶと、そのことに触れずにはいられない、という特徴をもつ子もいます。頭に浮かんだことに次から次へと引っぱられて、話がどんどんそれていくのです。
 さらに、「会話」には「ひとつの話題をある程度続ける」「お互いがおおむね順番に話す」という暗黙のルールがあります。発達凸凹キッズは、こういった暗黙のルールにそもそも気づいていない・知らない場合があり、その結果、話が飛んだり一方的になったりしている可能性もあります。そして、会話は本来、相手の様子を見ながら進めるものですが、話すことに精一杯で、相手が「???」という表情になっていることに気がつかず、話し続けてしまう子もいます。
 もう一つ、私の臨床での印象ですが、よく話す子どものなかには、実は相手にそれほど「聞いてほしい」と思っていない子もいるように感じることがあります。そのような場合は、自分が話すことが目的なので、相手は誰でもよく、相手の相づちがあろうがなかろうが、一方的に話します。
そして、これらの課題には、共通して「どのくらいことばの力が育っているのか」が関係しています。


話題を維持して、相手と「会話」をするための工夫

 会話の力を育てていくために、私が臨床で実践している方法の一つが、ホワイトボードにキーワードを書きながら話を聞く方法です。子どもが話したことばの中から大事なことばを拾って書きます。文字がまだ読めない子の場合は、イラストや数字に置き換えます。こうすることで、「あなたの話をちゃんと聞いているよ」ということが子どもに視覚的に伝わります。話がそれすぎたときや、こちらから質問したいときには、「ここの話なんだけどね」とボードを指させば、戻る場所が目で見てわかります。「どこまで何を話したか」というメモリー(記録)を、頭の中ではなく、外側につくるイメージです。

 

 

 より手軽にできる方法としては、話の中のキーワードや、子どものセリフをオウム返しのように真似して返す方法があります。たとえば、子どもが「はじめて新幹線にのったの」と言ったら、「へぇ! 新幹線」「はじめて新幹線に乗ったんだね」などと返します。ことばをくり返すことで、子どもがその話題にとどまりやすくなるほか、相互にキャッチボールをしながら話す練習にもなります。
 さらに、あえて「ここがわからなかったよ」「もう一度教えて」と伝えることも大切なかかわりです。相手の反応を受け取ることが難しい子には、「わからない」というサインを表情ではなく、ことばにして伝えます。子どもの話したい気持ちを遮らないように気をつけながら、「いまのところ、もう一回、言ってくれる?」と伝え、教えてくれたときには「〇〇ということなんだね、ありがとう」と肯定的に返します。「伝わった」という手ごたえの積み重ねが、相手を意識して話す力を育てていきます。


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 大人が会話の方法を正したり、「このように話しなさい」と強制したりするのではなく、少しの工夫をすることで、子どもの「相手に伝わった」「話せて楽しかった」という経験が積み重なるとよいと思います。

 

(参考文献)
矢幡洋『自閉症児のことばを育てる発達アプローチ ことばの6ステージ・特徴の理解と逆転の支援』ぶどう社、2023年
藤野廣・綿貫愛子『絵でわかる なぜなぜ会話ルールブック これでわかるコミュニケーションのなぞ』合同出版、2018年


著者紹介

三輪桃子(みわ・ももこ)

言語聴覚士、保育士。ことば・発達・集団生活の相談室コトバトコ主宰。乳幼児健康診査や子育て支援センターの母子相談、園での巡回相談にも従事している。いちばん好きなのは、保護者や保育者と子どものサポートについてあれこれ悩み、話し合う時間。著書に『発達凸凹キッズがぐんと成長する園生活でのGood!なサポート 苦手を減らして小学校につなげる工夫』『発達凸凹キッズの子育てナビ 年齢別にわかる!いまがんばりたいこと、がんばらなくてもよいこと』(いずれも共著、中央法規出版)がある。

 

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