今月のおすすめ「読み合い」絵本 12月
2025/12/01
今月のおすすめ「読み合い」絵本
1年を通じて、絵本を読み合う楽しさを伝えてきた本連載も、今回が最終回です。
保育所等では絵本を読んでもらうことが一番の楽しみという子どもも多いかと思います。
絵本には作者だけでなく、かかわる方々の思いが詰まっています。それぞれの絵本に込められた思いを知ることで、読み合いにも深みが出てきます。
しかしながら、年齢に応じた、季節に応じた内容を、と考えると、どういった絵本を選べばよいのか迷ってしまう方も少なくないでしょう。
本コーナーでは毎月、この時期に読み合いたい絵本を年齢別に紹介します。今日の絵本選びの参考にしてください。
著者紹介
佐々木由美子(ささき・ゆみこ)
東京未来大学こども心理学部教授。大学卒業後、山梨英和幼稚園教諭を経て大学院に進学。白百合女子大学大学院児童文学専攻修士課程修了、博士課程満期退学。東洋英和女学院大学大学院人間科学部幼児教育専攻修士課程修了
鶴川女子短期大学専任講師、准教授を経て現職。
専門は児童文化・文学、幼児教育。絵本学会 前事務局長。
0・1歳児におすすめの絵本
作:新井洋之『ツリーさん』(講談社、2012年)

12月といえばクリスマス。クリスマスって、子どもも大人もなんだかワクワクしますよね。今回は、全年齢でクリスマスの絵本を紹介したいと思います。
「みんなーくっついて」とモミの木が呼びかけると……「はーい」とやってきたのは金色のクリスマスボール。ぐるぐるとモミの木に巻き付きます。次にやってきたのは色とりどりのオーナメントたち。どんどん、すてきなクリスマスツリーになっていきます。でも、なにかが足りない……。
「おそくなっちゃった」。慌ててやってきたのは、星さん! ツリーが出来上がったところに、「メリークリスマス!」とやってきたのは……? ツリーを飾り付ける楽しさやワクワク感がいっぱいの作品です。読み終わった後に、クリスマスツリーの製作にもつながりそうです。紙でつくったモミの木に、シールやさまざまな形に切り抜いた色紙をペタペタ貼っていくと、かわいいツリーになります。指先を使う遊びの一つとして、ぜひ子どもたちと楽しんでみてください。
2・3歳児におすすめの絵本
文:長谷川摂子 絵・斉藤俊行 『クリスマスの ふしぎな はこ』(福音館書店、2001年)

クリスマスの晩、サンタさんがプレゼントを持って家にきてくれることが、子どもたちにとってどれだけ楽しみなことでしょう。そんな子どもたちの期待と興奮、本当にきてくれるかなという不安と待ち遠しさが凝縮された作品です。
ぼくは、庭で箱をみつけます。開けてみると、サンタさんが見えます! ぼくは箱を持ち帰って、こっそりベッドの下に隠します。「サンタさん、もうしゅっぱつしたかなあ」「そうねえ、サンタさん、おねぼうしてないと いいけどねえ」。お母さんの言葉に不安になって、例のサンタさんの箱を見に行くと……。よかった!サンタさんは出発準備の真っ最中です。サンタさん、もうソリで走っているかなあ。もう、ぼくのうちにくるかなあ……気になって気になって仕方ありません。そのたびに箱をのぞき込むぼく。不思議な箱は、サンタさんの現在を実況中継してみせてくれます。だんだんサンタさんがぼくの家に近づいてきている! 子どもたちも思わず、のめりこんでいきます。
朝、プレゼントを目にしたときのぼくの嬉しそうな顔。それと同じくらい嬉しそうな顔をした子どもたち。子ども時代の特権ですね。
4・5歳児におすすめの絵本
作・絵:せなけいこ『めがねうさぎの クリスマスったらクリスマス』(ポプラ社、2002年)

「♪クリスマスったら クリスマス なんといってもクリスマス…」。歌いたくなってしまうくらい、うさこはクリスマスが大好き。でも、なぜか、今年はサンタさんがくるのが遅いみたい。実は、サンタさんは、くまさんの家で冬眠用のグーグージュースをうっかり飲んでしまい、ぐっすり眠ってしまったのです! くまさんから連絡をもらったうさこは、おばけといっしょに、くまさんの家に駆けつけます。そして、サンタさんの代わりにプレゼントを配ることにします。サンタさんの代わりができるなんて、最高!!です。
この作品は「めがねうさぎ」シリーズの1冊。シリーズ第1作が1975年に出版されているので、50年にわたって愛されているシリーズです。「めがねうさぎ」のうさこは、せなさんのおばけ好きの息子さんがモデルとのこと。おばけに夢中になる息子さんをみて、子どもにとっておばけって魅力的なんだなと思い、描くようになったそうです。貼り絵のあたたかさと相まって、愛情のこもったやさしい作品です。
