今月のおすすめ「読み合い」絵本 11月

2025/11/04

今月のおすすめ「読み合い」絵本

保育所等では絵本を読んでもらうことが一番の楽しみという子どもも多いかと思います。
絵本には作者だけでなく、かかわる方々の思いが詰まっています。それぞれの絵本に込められた思いを知ることで、読み合いにも深みが出てきます。
しかしながら、年齢に応じた、季節に応じた内容を、と考えると、どういった絵本を選べばよいのか迷ってしまう方も少なくないでしょう。
本コーナーでは毎月、この時期に読み合いたい絵本を年齢別に紹介します。今日の絵本選びの参考にしてください。

 

著者紹介

佐々木由美子(ささき・ゆみこ)
東京未来大学こども心理学部教授。大学卒業後、山梨英和幼稚園教諭を経て大学院に進学。白百合女子大学大学院児童文学専攻修士課程修了、博士課程満期退学。東洋英和女学院大学大学院人間科学部幼児教育専攻修士課程修了
鶴川女子短期大学専任講師、准教授を経て現職。
専門は児童文化・文学、幼児教育。絵本学会 前事務局長。


0・1歳児におすすめの絵本

作:みなみじゅんこ『どんぐりころちゃん』(アリス館、2013年)

 

 葉っぱの穴から、誰かがのぞいています。「だあれかな?」。答えはどんぐりころちゃん。ころちゃんが、木の上で歌いはじめます。「♪どんぐり ころちゃん あたまは とんがって おしりは ぺっちゃんこ どんぐり はちくり しょ♪ ぽーん!」飛び出していった先には、お友達だちがいっぱい! 
 これは、わらべうた「どんぐりころちゃん」が絵本化されたものです。わらべうたの心地よいリズムと、うれしそうに歌って踊るころちゃんの姿に、思わずひきこまれていきます。そのまま読んでもリズミカルな文章で楽しめます。しかし簡単な旋律なので、歌いながら読んでみるのもおすすめです。
 絵本を楽しんだ後は、わらべうたでもたくさん遊びましょう。「ぽーん」のところで、赤ちゃんを抱き上げて、高い高いをします。1歳児さんなら、ころちゃんを真似て、いっしょに身体を動かすのも楽しいでしょう。


2・3歳児におすすめの絵本

文:中川ひろたか え・村上康成 『さつまのおいも』(童心社、1995年)

 

 この季節。お芋掘りをする園も多いのではないでしょうか。お芋掘り、楽しいですよね。では、お芋さんたちは、いったいいつもどのように過ごしているのでしょう。
 物語は、土のなかのお芋さんたちの暮らしから始まります。お芋さんたちはご飯を食べるし、歯も磨きます。それに、みんなで体操したり腕立て伏せをしたり、走ったりとトレーニングもしているんです! なんのためにトレーニングをしているかというと……お芋掘りをしにやってきた子どもたちとつなひきをして勝つためです。さあ、つなひきがはじまりましたよ。「うんしょ とこしょ うんしょ とこしょ」。子どもたちも、お芋さんたちも、力一杯ひっぱります。さて、勝ったのはどちらだったでしょう。
 お芋さんたちの表情も個性的でユーモラス。子どもたちの笑顔がたくさん生まれてくる作品です。


4・5歳児におすすめの絵本

作:西原みのり『おちばいちば』(ブロンズ新社、2011年) 

 

 さっちゃんが幼稚園で作ったどんぐりのお馬さん。縁側で眺めていたら、テントウムシをのせて歩き出しました。びっくりしたさっちゃんが追いかけていくと、びゅーっと強い風が吹いてきて、いつの間にか、さっちゃんもどんぐりのお馬さんに乗っています。
 「さぁ でかけよう!」着いたところは、「おちばいちば」。虫たちがたくさんのお店を出していて、とてもにぎやかです。最初に入ったお店はトカゲのごちそうやさん。「くーださいな くださいな。きのみの おだんご くださいな」。モグじいさんの雑貨屋さんや、マダム・ガガのブティックもあります。さて、さっちゃんが市場でみつけたものは、落ち葉の傘や、落ち葉の指輪、落ち葉の靴や種の舟などなど……。見開き一面に描かれた品物が、どれもほしくなってしまうほど、とてもすてきです。
 こまやかに描き込まれた絵が、いやがうえにも想像力と創作意欲をかきたててくれます。そして、極めつけは落ち葉の魚市場! つくってみたい!! お店やさんを開きたい! 子どもたちの「やってみたい」を刺激してくれる作品です。