今月のおすすめ「読み合い」絵本 10月
2025/10/01

今月のおすすめ「読み合い」絵本
保育所等では絵本を読んでもらうことが一番の楽しみという子どもも多いかと思います。
絵本には作者だけでなく、かかわる方々の思いが詰まっています。それぞれの絵本に込められた思いを知ることで、読み合いにも深みが出てきます。
しかしながら、年齢に応じた、季節に応じた内容を、と考えると、どういった絵本を選べばよいのか迷ってしまう方も少なくないでしょう。
本コーナーでは毎月、この時期に読み合いたい絵本を年齢別に紹介します。今日の絵本選びの参考にしてください。
著者紹介
佐々木由美子(ささき・ゆみこ)
東京未来大学こども心理学部教授。大学卒業後、山梨英和幼稚園教諭を経て大学院に進学。白百合女子大学大学院児童文学専攻修士課程修了、博士課程満期退学。東洋英和女学院大学大学院人間科学部幼児教育専攻修士課程修了
鶴川女子短期大学専任講師、准教授を経て現職。
専門は児童文化・文学、幼児教育。絵本学会 前事務局長。
0・1歳児におすすめの絵本
作・絵:とよたかずひこ『なでなでももんちゃん』(童心社、2016年)
この作品は「ももんちゃんあそぼう」シリーズの18作目。シリーズ最初の『どんどこももんちゃん』(2001)から、2025年ですでに24年、26作品が出版されています。どの作品も、とてもあたたかくて、読後にやさしい気持ちになります。
さて……金魚さんとおばけさんの元気がありません。おなかが痛いんです。
「ねえ、きんぎょさんと おばけさんのおなか…なでなでしてくれる?」
ページをめくると、おなかをだして気持ちよさそうに目を閉じている金魚さんとおばけさん。「なでなで なでなで」。なでなでしてもらったら、すっかり元気になりました!
次に、おなかが痛いとやってきたのは、サボテンさん。そして、ももんちゃんのおなかまで痛くなってしまい……。
子どもたちと一緒に「なでなで なでなで」してみてください。「なでなで」などのスキンシップで、脳内にオキシトシン(幸せホルモンとか、絆ホルモンといわれるものです)が出やすくなり、なでなでしても、されても、ストレスの軽減や情緒の安定につながります。
最後のページ、ももんちゃんがママのおなかをなでなでしています。読んだだけでも幸せな気持ちになります。
2・3歳児におすすめの絵本
作:多田ヒロシ『ねずみさんのながいパン』(こぐま社、2000年)
食欲の秋ですね。ネズミさんが、自分の体の10倍もありそうな長〜いパンを抱えて急いでいます。
「どこに いくのかな?」ページをめくると右手にピンクの家が見えます。
「このうちかな?」
ところが、それはゾウさんの家。ゾウさんの家では、もうご飯を食べているところ。ごちそうは、りんごとバナナです。ネズミさんは「とっとこ とっとこ」。
次に見えてきた家は、黄色にまだら模様。これは?? 次々に現れるユニークな外観の家は、誰の家かわかるヒントがたくさん描かれています。誰の家なのかをあてるのも、ゾウさんやキリンさんたち、それぞれの動物の家族が、どんなごちそうを食べているのかを見るのも、わくわくします。
最後に見えてきたのは、どうやらネズミさんの家。たくさんの子ネズミたちが、おなかをすかせて待っています。ネズミさんの家のごちそうは、あの長いパンとそして……? 繰り返しの楽しさと、いろんな動物たちの食卓が想像力を広げてくれます。
4・5歳児におすすめの絵本
作:松岡享子 絵:林明子『おふろだいすき』(福音館書店、1982年)
お風呂はあまり好きではないという子も多いかもしれません。でも、この作品を読むと、お風呂がなんだかとっても魅力的に感じられるはず……。それだけのびやかなファンタジーの世界が展開します。
ぼくが、あひるのおもちゃのプッカをつれてお風呂に入っていると、お風呂の底からざーっと大きな亀が浮いてきました。
「うみは、そこのほうより、うえのほうがあついんだね」なんて亀がいいます。ここは海でも川でもなく「ぼくんちのおふろ」なのに。
ところが、ぼくが後ろを振り向くと、そこには2匹のペンギンが立っていて、ぼくが落としてしまったせっけんを追いかけて競争をはじめます。そして今度はオットセイ!? そして、とうとうクジラまで!
枠をつかった技法をはじめ、湯気やシャボン玉、肌のつや感など温度や質感のあるやわらかな絵が、ファンタジー世界にリアリティを生み出しています。最後は大きなバスタオルを持ったおかあさんに抱きとめられて……。
最終ページのにこやかな笑顔。絵本を楽しんだ子どもたちもおんなじような表情をしています。