今月のおすすめ「読み合い」絵本 9月

2025/09/01

9月に読みたい おすすめ「読み合い」絵本

 絵本には作者だけでなく、かかわる方々の思いが詰まっています。それぞれの絵本に込められた思いを知ることで、読み合いにも深みが出てきます。
 本コーナーでは毎月、この時期に読み合いたい絵本を年齢別に紹介します。
 今月は、秋の始まりを予感させる9月に読み合いたい絵本です。

解説:佐々木由美子(東京未来大学こども心理学部教授)


0・1歳児におすすめの絵本

作:林明子『おつきさまこんばんは』(福音館書店、1986年)

 

 2025年の中秋の名月は10月8日ですが、空気が澄んでお月さまがきれいに見えるこの時期、お月さまの絵本はいかがでしょう。
 表紙のまあるいお月さまの絵。子どもたちの視線が思わず惹きつけられます。夜になってお空が暗くなると、少しずつお月さまがのぼってきます。
 「おつきさま こんばんは」
 ところが、そこに雲さんがやってきて……。シンプルな物語ですが、明確な起承転結と、お月さまの豊かな表情が相まって、子どもたちは大人が思った以上の反応をみせてくれます。「こんばんは」の言葉に合わせて、お辞儀をしたり、雲がでてくる場面ではダメダメ〜と首を横にふったり、雲が通り過ぎると、ほっとした表情をしたり。
 表紙と対になった裏表紙のお月さまのお茶目な表情といったら! ぜひお月さまとの出会いをまるごと楽しんでください。

 

2・3歳児におすすめの絵本

作:tupera tupera『しろくまのパンツ』(ブロンズ新社、2012年)

 

 この時期、2歳児さんは、昼間布パンツで過ごすようになる子も増えてくることでしょう。自分でできることが増え、パンツも上手にはけるようになってきます。
 さてこれは、なくなってしまったしろくまさんのパンツをさがすお話です。「どこいにったんだろう」。しろくまさんが困っていると、ねずみさんが心配してやってきてくれました。
 「きょうは どんなパンツを はいてたの?」「わすれちゃった…」
 最初にみつけたのは、カラフルなしましまパンツ。でも、しろくまさんのパンツじゃないみたい。「じゃあ だれのパンツ?」ページをめくると、しましまパンツをはいた、しまうまさんが登場します。パンツの形に切り抜かれた仕掛け絵本になっているのです。
 次にみつけたのは、お菓子模様いっぱいのパンツ。花柄や水玉模様など、さまざまなパンツが登場し、ページをめくるたびにワクワクします。さて、しろくまさんのパンツは、みつかるのでしょうか? 
 表紙は、赤いパンツをはいたしろくまさん。赤いパンツは帯になっていて、「パンツをぬがしてからおよみください」とあります。そうです。物語は、もうすでにここからはじまっているのです。

 

4・5歳児におすすめの絵本

作:エリック・カール 訳:もりひさし『パパ、お月さまとって!』(偕成社、1986年)

 

 ある晩、お月さまがとても近くにみえます。モニカはお月さまと遊びたくなりました。でも、どんなに手を伸ばしてもお月さまには届きません。そこで…「パパ、お月さま とって!」。モニカの言葉にパパは奮闘します。長―いはしごをもってきて、お月さまと交渉すべく、上へ上へとのぼっていきます。
 ようやくお月さまに届いたものの、お月さまは大きすぎて持って帰れません。お月さまはパパに教えてくれました。「わたしは、まいばん すこしずつ ちいさくなっていくんですよ」。その言葉どおりに、お月さまは毎晩小さくなっていき、パパはお月さまがちょうどよい大きさになるのを待って………。
 ページが左右、上下に大きく広がり、長さや高さ、お月さまの大きさを余すところなく伝えてくれます。子どもたちから思わず「うわ〜」と声があがるほど。しかけが物語をより豊かにしてくれています。空の高さや月の満ち欠けへの興味もわいてきます。
 学ぶことは魅力的で、楽しいことであると示したいと願う作者ならではです。お月さまをとってと、幼かった娘にねだられたのは作者の実話とのこと。愛情に満ちた作品です。