今月のおすすめ「読み合い」絵本 8月

2025/08/01

8月に読みたい おすすめ「読み合い」絵本

 絵本には作者だけでなく、かかわる方々の思いが詰まっています。それぞれの絵本に込められた思いを知ることで、読み合いにも深みが出てきます。
 本コーナーでは毎月、この時期に読み合いたい絵本を年齢別に紹介します。

解説:佐々木由美子(東京未来大学こども心理学部教授)


0・1歳児におすすめの絵本

文:中川ひろたか 絵:森あさ子『さかながはねて』(世界文化社、2019年)

 

 ネコが池のほとりを歩いていると…魚がはねて「ぴょん」。ページをめくると、なんと魚はネコの頭にのっています。「あたまに くっついた ぼうし」。続いてネズミがボートに乗っていると、魚がはねて…。そうです。中川ひろたかさんの人気の手遊び歌「さかながはねて」が絵本化されたものです。登場する動物たちの表情がとてもユーモラス。カラフルな色と貼り絵をつかったあたたかな絵、ページをめくって現れる場面の意外性、さらにもともとの心地よい繰り返しのリズムがあわさって、楽しさ倍増です。そのまま読んでも楽しいですが、ぜひいっしょに歌いながら読んでみてください。

 

2・3歳児におすすめの絵本

作:田中清代『トマトさん』(福音館書店、2006年)

 

 表紙からはみ出すほど大きく描かれたトマトさんの顔。とてもインパクトがあります。夏の昼下がり。真っ赤に熟れたトマトさんが木からおちてしまいます。太陽が容赦なく照りつけるなか、ミニトマトさんたちはコロコロと川にとびこんで気持ち良さそう。「ぷかぷか およぐのなんか、みっともない」って強がっていたトマトさんですが、本当は体が重くてうまくころがれないのです。ひとりぼっちだし、どんどん暑くなるし、トマトさんはとうとう泣き出してしまいます。「わたしも およぎに いきたいよう」。それを聞いた虫たちやトカゲさんたちが、みんなで力を合わせて「えい えい えーい」。「じゃっぷーん!」。水に入ったトマトさんのうれしそうな顔! 強がり、後悔、悲しさ、さびしさ、喜び、そしてみんなの優しさ。さまざまな感情が豊かに伝わってきます。読後はたっぷり泳いだあとのように、とても爽やかな気持ちになります。

 

4・5歳児におすすめの絵本

作:長谷川摂子、絵:ふりやなな『めっきらもっきら どおんどん』(福音館、1990年) 

 

 遊ぶ友だちがいない! みんなどこにいったんだろう。かんたは、腹立ち紛れにでたらめな歌を大声でうたいます。「ちんぷく まんぷく あっぺらこの きんぴらこ じょんがら ぴこたこ めっきらもっきら どおんどん」。すると、奇妙な声が聞こえてきて、声のする穴の中をのぞいたとたん、穴にすいこまれて、着いたところは夜の山。おかしな3人組がかんたのところに飛んできます。3人と思う存分遊んだかんたですが、遊び疲れて3人がねむってしまうと、急にさびしくなってきて…。ちょっぴり怖くて、どきどきはらはら。かんたといっしょに異界の冒険が楽しめます。この作品をもとにしたごっこあそびや探検あそびの保育実践も数多くみられます。それだけ子どもたちの心を強く惹きつける作品です。呪文の言葉は、作者の長谷川さんが好きだった、奈良の新薬師寺の十二神将の一人「迷金羅(めきら)大将」がきっかけだといいます。不思議な言葉が開くファンタジーの世界を存分に楽しんでください。