字がうまく書けない子 原因と解決法
2025/09/01

文字や絵をうまく書けない子の原因と対応法をご紹介します!
監修者プロフィール
笹田 哲(ささだ さとし)
神奈川県立保健福祉大学 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 教授。作業療法士。広島大学大学院医学系研究科修了、博士(保健学)。明治学院大学大学院文学研究科心理学専攻修了、修士(心理学)。
園や小学校を訪問し、子どもの生活・学習動作(姿勢、目と手の不器用さ)を研究テーマとし、体の使い方や発達が気になる児童・生徒の学習支援に取り組んでいる。NHK・E テレ番組『ストレッチマン』番組企画委員、同『でこぼこポン!』番組監修を務める。著書に『気になる子どものできた!が増える 体の動き指導アラカルト』『同 3・4・5歳の体・手先の動き指導アラカルト』『同 書字指導アラカルト』『同 食事動作指導アラカルト』(中央法規出版)などがある。
いくら練習しても字がうまくならない・・・
小学生になると、ひらがなやカタカナ、数字など、「書く」動作がとても多くなります。しかし、中にはなかなか思うように書けず、苦労をしているお子さんもいらっしゃると思います。保護者や先生が「丁寧に書きなさい」「何度も練習して」と言ってやらせても解決しない場合があります。
例えば、「あ」「ね」「さ」「し」などの形を見てまねして書くことができない、四角いマスや十字線のガイドがあっても字が中心から大きくずれる、そもそも字の始まる地点が適切でない、マスから字が大きくはみ出す、上下のバランスが極端に悪い字になる、といったことがあります。
また、数字では「0」「8」「9」の始点と終点が合わないため、書いた本人も「0」か「6」かがわからなくなったりして計算を間違えてしまう、ということも起こります。
文章になると、文字の大きさがバラバラになったり、徐々に字が大きくなっていったり、文がどんどん斜めになっていく、テストなどで限られた解答スペースに答えを書ききれなくなる、などの様子が見られることもあります。
そのほかに気になることとしては、力が入りすぎて濃い字になる、逆に筆圧が弱すぎて薄い字になる、消しゴムでうまく字を消せない(紙を利き手と逆の手でしっかり押さえられない)、図形の特徴をとらえてまねして書くことができない、定規を使って線が書けない、とくに斜めの線を見たり書いたりするのが苦手、というお子さんもいます。
文字や図形をうまく書けない原因は?
どうしてそのような問題が起きてしまうのでしょうか? 一般的には、手・指が不器用、鉛筆の持ち方が悪い、といった原因が考えられます。しかし、「字を書く」「線を書く」という動作をするときに、人は体幹や腕、目や脳(認知)、感覚(触覚やバランスなど)、さまざまな機能を総動員しています(ピラミッド図を参照)。

p.4(2025年、中央法規出版)
ピラミッド図に対応する、下記の点を一度確認してみましょう。
①環境や姿勢-椅子や机の高さがあっていますか?
足裏が床にしっかりつき、膝、腰、肘が無理なく、ほぼ90度になるように。
浅く腰かけて後ろに寄り掛かっていないか、猫背になっていないか確認。
②鉛筆の持ち方-持ち方は適切ですか?
親指が出っぱる、鉛筆の先を持っている、力が入りすぎ、手首が曲がるなどがないか確認。
③視覚-机の上、周囲、自分の動きが見えていますか?
手本とノートの向きが適切か、先生の指示を見聞きしているか、自分の体や手の向き・動きを見ているか確認。
④認知-見たものをしっかりとらえ、理解していますか?
「どこから書き始めるか」「線の長さ」「線の向き」などの情報を的確にとらえているか、今何にどのように取り組むか、理解ができているかを確認。目的や意欲(モチベーション)なども認識・気持ちに影響します。
このようなさまざまな要素が一つでも欠けたり、不適切な状態になったりすると、しっかりと座って手指を支えられない、見えているものと手指・体の感覚がずれる、目で見て体の動きを適切に調整するということがしにくくなります。保護者や先生がしっかりと子どもの全体の姿を見て、サポートをしてあげてください。
字を書く前に育てたい力
目と手指・体の動きの調整・連動がうまくいっていないお子さんの場合は、まずは「しっかりと対象物を見る」「特徴をつかむ」「自分の身体の動かし方をイメージできる」といった力を養うことがとても効果的です。例えば、さまざまな子ども向けのイラストなどを多用したワークブックや、迷路、図形のパズル、塗り絵などで、楽しく遊びながら、そういった力をつけることもよいでしょう。絵本や広告チラシなどを見て、「りんごをさがす」「『あ』の字を探す」というような親子でできる簡単なクイズもよいでしょう。
苦手な字を何十回も書かせるトレーニングはおすすめしません。文字や図形を書くのが苦手なお子さんの中には、手指の器用さが育っていない場合もありますし、目と手の協同作業が苦手な場合もあります。それぞれのお子さんの状態を見て、遊びのなかで楽しく、それらの力を育めるように工夫をしてみましょう。
「書く」前の段階の力を育む指導法やワークブック、文字を書く際に斜めマスで文字の特徴をとらえやすくしたワークブックがありますので、ぜひご活用ください。
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