第38回介護福祉士国家試験問題の講評(後半:Bパート・Cパート)~パート合格がスタートしました
2026.01.30
第38回介護福祉士国家試験を振り返って
町田福祉保育専門学校の石岡です。第38回介護福祉士国家試験を受験された皆さん、本当にお疲れさまでした。いまは自己採点も終わっているところでしょうか。 前回 に続いて、今回は「午後」問題を振り返ります。今回受験した方、これから受験する方、各々の立場で参考にしてください。
なお、解答案については、 こちら をご覧ください(社会福祉振興・試験センターによる正式な解答の発表は3月16日の予定です)。
前回でもふれたように、午後は「医療系科目」が集中していて難易度が高めで、昨年とは打って変わって「ツライ午後問題」となったのではないでしょうか。各科目の出題の特徴や学習のポイントなどを振り返りながら見ていきましょう。
各科目の講評:Bパート
こころとからだのしくみ【12問】
この科目は、人間の身体構造や疾患、障害などの種類や特徴を学習するため、介護を学んでいくうえでは欠かせない科目です。Bパートの科目は、「医療系」といえる分野で、全般的に「知識の有無」が問われます。
例年1問目は「こころのしくみ」から、2問目に「からだのしくみ」から出題される傾向ですが、今回は5問目まで「からだのしくみ」から出題されました。前回(37回)、今回と続けて「からだのしくみ」からの出題数が多くなっているため、重点的に学習する必要のある分野といえます。続いて、移動、身じたく、食事、入浴、排泄、睡眠、終末期のこころとからだのしくみに関して、例年順番に出題されますが、今回は移動、身じたく、入浴に関する出題がありませんでした。「生活支援技術」と分野は重なりますが、この科目で問われる内容は技術(方法)ではなく、関連する医療的な知識です。なかでも睡眠や終末期に関しては必ず出題され、多くは「生活支援技術」と似通っているため、絞って学習することができそうです。
今回の特徴は「からだのしくみ」からの出題が多かっただけでなく、この科目の大半の問題が「からだのしくみ」要素のある出題ととなっていたことです。全体的に難易度が高く、深い知識が求められるような出題が多くありました。「からだのしくみ」の4問では、誤りの選択肢を消去していくのも難しかった人も多いのではないでしょうか。特に前半の問題では似たような過去問が少なかったことも、難しく感じた要因かもしれません。
問題66「低栄養の高齢者にみられる症状や行動」は、正答は「偏りのある食べ方をする」だと思われます。私は最初、「食べこぼしが減る」を解答にしようとしました。低栄養で食事量が少なければ、食事動作も減り、食べこぼしが減るのではないかと。しかし、低栄養と直接的な関係ではないので不正解となります。このように「最も」適切なものを解答する場合は早とちりせずに、一つずつ消去しながら答えていくことが重要です。
問題68「摂食嚥下の5期」は、「献立や食材の説明」がどの期にあたるかという出題でした。正答は「先行期」となりますが、この「先行期」と、「咽頭期」についてが多く出題される傾向です。「先行期」はまず食事を見て、匂いを感じて、食事を想像するところから食事が始まるということと、「咽頭期」はまさに「嚥下」をする場面だからではないかと思います。特に要介護者には「嚥下障害」のある人が多く、嚥下のしくみを理解することが重要であるため、出題されやすいのでしょう。
発達と老化の理解【8問】
介護福祉の仕事を大きく分けると、高齢者系と障害者系に分けることができます。障害者系には児童の分野も含まれますので、この科目の前半はその(児童の)「発達」、後半で高齢者の「老化」について学びます。例年の国試の傾向では、「乳幼児期の発達段階の理論」から、児童期に特徴がある障害などが出題されます。「老化」については、老年期の心身の特徴から、高齢者に多い疾患などが多く出題されます。
今回のこの科目は、近年の出題傾向と違い「障害者系、児童分野」からの出題が少なく、ほとんどが「老化(高齢者系)」からの出題が大半だったことが特徴です。例年1問目は「乳幼児期の発達」から出題されることが多いのですが、今回は、ハヴィガーストの「中年期の発達課題」でした。
問題75「健康な状態と心身の機能が低下して介護等が必要な状態の“中間”を示す用語」が出題され、正答は「フレイル」でした。筋力が低下した状態をさす「サルコペニア」や、運動機能の低下をさす「ロコモティブシンドローム」などとしっかり区別できておらず間違えた人もいたのではないでしょうか。
問題78「加齢に伴い階段を上ると息切れしやすくなる恒常性の機能」は、「予備力」が正答でした。人間の身体は、負荷がかかったときにそれに耐えるように予備力が備わっています。予備力が低下することにより、平常以上の活動をした場合に対応できなくなります。高齢者は肺活量が低下するので、普通の歩行では問題なくても、走ったり、階段を上ったりすると息切れしやすくなります。
今回の難易度としては、「こころとからだのしくみ」ほど高くはなかったですが、例年の傾向と違って高齢者に関する出題が多かったため、現場経験ルートの受験者では「障害者系事業所」に勤務されている(いた)方には難しかったかもしれません。
認知症の理解【10問】
この科目は、高齢者介護を学ぶうえで必須となる「認知症」に関する科目です。要介護・要支援者における認知症の人の数は、年々増え続けています。高齢者系の事業所で業務を経験して受験された皆さんにとっては、身近な科目といえるのではないでしょうか。
学習内容としては、認知症に関する基礎(原因疾患や周辺症状、BPSDなど)や認知症ケアの方法、家族への支援などが中心で、ここから出題が多くあります。覚える内容は難しいですが、高齢化社会を生きる私たちにとって、試験勉強や業務に活かすといった視点以外に、日常生活でも役立つ分野といえます。
今回の傾向としては、例年出題のある「認知症関係の法制度」に関わるような問題が少なかった印象です。唯一関連したのが、「認知症疾患医療センター」「認知症初期集中支援チーム」「若年性認知症支援コーディネーター」の取組みや役割を問う問題でした。
他の問題では、介護現場での認知症の利用者の症状や状況に関連した出題が多かったのが特徴ではないかと思います。問題85は「レビー小体型認知症の症状」を問う問題でした。「基本中の基本」となる出題形式であれば「幻視」「パーキンソン症状」「日内変動」を問います。しかし、今回は、「自律神経症状による起立性低血圧」が正答となる設問でした。幻聴と幻視を混同したり、側頭葉の萎縮(前頭側頭型認知症)と間違えてはいないでしょうか。パーキンソン症状の一つ「自律神経症状」で起こる「起立性低血圧」について、深く知識を得ておかないと解けない問題だったかと思います。
例年は、行政の施策やサポート体制などの出題が多く、制度系科目のような知識を問われるため、次回(第39回)を受験される場合はしっかりと学習しておきたいところです。
大半が基礎的なものや現場に即した出題が多かったため、例年から比べると難易度は高くなかったのではないかと思います。
障害の理解【10問】
この科目は、障害者介護を学ぶうえで必須となる科目です。「社会の理解」での出題もある、障害者総合支援法などの障害者福祉や介護の実践にかかわる法律や制度から、障害の種類、難病、疾患などの基礎や、障害を抱えた人の心理や家族の支援まで学習の範囲は多岐にわたります。
今回は「ソーシャルインクルージョン」「片麻痺や言語障害を伴うことのある疾患」「国際障害者年」「筋萎縮性側索硬化症(ALS)の症状」「補装具」など、例年の傾向と変化なく幅広い分野から出題されています。
問題92「知的障害」の出題では、「障害が発達期にあらわれる」が正答でした。18歳を過ぎて知的に障害を負った場合は「精神障害」になります。もう一つ、療育手帳の設問も間違いやすかったのではないでしょうか。療育手帳の等級や基準は法律で定められていないため、自治体によって異なります。
近年はこの科目だけでなく多くの科目で、介護現場に関わる事業所やそこに配置される(関わる)専門職とその役割に関する問題が多く出題されています。今回もこの科目では問題99や問題100がそうでした。介護支援専門員は介護保険に関わりケアプランを、サービス管理責任者が個別支援計画を作成し、障害支援区分(要介護度も)は市町村が決定します。地域支援事業(介護保険法)、地域生活支援事業(障害者総合支援法)は、市町村の事業(問題99の正答)となります。「スプーンが上手く握れない人の自助具の作成」の正答は「作業療法士」でした。義肢装具士は義肢や装具を製作します。スプーンを上手く握れない人にスプーンの柄の部分を工夫するなどして自助具を作成するのは、「作業療法士」です。「スプーンの文字を見て食事を連想した人は、食べることに関連する口腔に関わる「言語聴覚士」と間違えませんでしたか。こちらは摂食・嚥下の機能訓練をする専門職です。
一部深い知識を問われる出題もありましたが、難易度は例年通りだったのではないでしょうか。
医療的ケア【5問】
科目名からイメージとして「難しそう……」と学習を敬遠しがちな科目かもしれません。しかし、全科目のなかでも最少の「5問」(※)となっているためか、例年はイメージの割には得点させてくれるような出題となっていて難易度が高い問題は少ない印象でした。それと同時に介護福祉士資格の取得において、この科目の規定が受験者を後押ししてくれていました。実務経験ルートでは、実務者研修において「医療的ケア」を対面で学び、養成校ルートに関しても各養成校で「医療的ケア」の科目があるためです。両ルートとも演習では内容を丸ごと暗記しなければ合格できないため、演習の実施から多少時間が経っていても、問題を見れば手技などを思い出す人も多く、得点率は悪くない科目となっていました。
科目の内容としては、医療的ケアの法的背景や清潔保持、感染予防、健康状態の把握からはじまり、喀痰吸引や経管栄養の実施手順が出題されます。この「実施手順」が、前述のとおり、緊張しながらも手技の手順をくり返し対面で練習してきたことが、試験中に発揮されます。
今回は例年の傾向とは違って、難易度が高かったのではないでしょうか。
1問目は「バイタルサイン」が出題されました。これは、「こころとからだのしくみ」などで出題されることもある分野です。「喀痰吸引」からは2問、「経管栄養」からは2問(1問は胃の構造)と、こちらは例年どおりの出題傾向だったと思います。
過去の出題では、各ケアの「準備」「実施手順」「片付け」からの出題も多かったのですが、今回は「気管カニューレの構造」「喀痰排出を促す対応」「ボタン型胃ろうチューブを挿入している利用者のケア」で、「基本中の基本」の内容ではなかったのではないかと思います。
本校の学生も毎年受験後に自己採点をするのですが、今回彼らは「難しかった」と口にしていました。皆さんはいかがでしたか。
Cパート
介護過程【8問】
介護では、対象者への「よりよい生活の提供」が目的になるといえます。よりよい生活を提供するためには、その対象者を知り(アセスメント)、その方法を考え(計画)、実際に支援(実践)し、その結果を反省(評価)する必要があります。各事業所などに勤務されている皆さんも、日々の業務でこのようなことを常に頭の中で考えているはずです。それを学問にしているのが「介護過程」といえます。国試では、「意義や基礎的理解」「チームアプローチ」「展開の理解」(さまざまな事例の検討)という4項目から出題されます。
今回は、前半は一般問題が4問、後半は事例問題で、1つの事例につき2問×2事例と、計4問が出題されています。科目の特性か、半数以上が事例となるので、ここでも読解力が求められます。前半の出題は、例年「アセスメント」「計画立案」「目標設定」「評価」といった介護過程の基礎となる項目から出題されます。この科目の中では学習しやすい項目なので、しっかりと押さえておく必要があります。今回は「利用者尊重」の視点があれば解けた問題が多かったのが特徴です。ここでも専門職とその役割が出題されていて、次回(第39回)を受験される場合は、前述の通りしっかりとここを押さえた学習をしておく必要があると考えます。
事例問題では、2つの事例とも「利用者の家族」が登場します。家族の意見や意思を尊重しがちですが、やはり基本は「利用者主体」です。その視点を忘れないということと、「介護福祉職が何をするか」という視点ではなく、「利用者にとって何が必要なのか」という視点が、得点するためには重要になります。
毎年難易度は低めの科目で、今回も同様だったと思います。この科目では、多く得点できたのではないでしょうか。
総合問題【12問】
総合問題は「高齢者(2事例)」「障害者(2事例)」の4事例×3問ずつの出題で、合計12問となります。出題内容は「関連する法制度」「対象者の疾患名や特徴」「対応方法」などが問われ、事例を読解して解答を導きます。そのため、全科目をしっかりと学習しておくことが必要です。そのうえで、模試や模擬問題集などで傾向をつかみ、読解力を養うとよいでしょう。
今回は、前回の試験で「ジェノグラム」や「人物」が出題されたときのような驚きはなく、例年通りの出題内容だったと思います。
最初の事例では、手足の震えについて「体内物質の影響」があり、その物質を問う問題の正答は「ドーパミン」でしたが、ここは医療的な知識が問われる出題でした。問題116では「Aさんに勧めるサービス」が出題され、事例問題の典型的な問題といえました。サービスの特徴や内容を知識として覚え、事例文をしっかり読み解くことで解答できます。Aさんは「要支援2」「宿泊」(家族が出張ある)「自宅で生活」という情報と合わせれば、「介護予防小規模多機能型居宅介護」と解答が導けます。
2つ目の事例は、「金銭管理」「日常生活自立度判定基準Ⅲa」「パーソンセンタードケア」について、知識を問う問題が出題されていたのが特徴でした。
3つ目の事例は、ストーマを造設した利用者の事例で、「正常時の便の性状」「便のにおいに影響の少ない食品」「地域課題の検討」と、こちらも知識が問われる出題でした。「地域課題の検討」は、知的障害のある人の災害時の避難などに不安があるという地域課題をどこに働きかけるかを問うものでした。正答は「協議会」と思われますが、ここは深い知識が必要な出題でした。
4つ目の事例は高次脳機能障害の利用者についてではありますが、出題はすべて、利用者に関する内容ではなく、介護福祉職(介護主任含む)がどのような対応をするかについてでした。このような問題の場合は、「利用者尊重」を忘れずに解答を導くことが必要となります。
さて、2回に分けて第38回介護福祉士国家試験を振り返っていきました。以前は「筆記試験と現場は違う」と捉えられていたように思いますが、そんなことはありません。介護現場で役立ち、よりよい介護ができるように国家試験があり、学習する内容はそこをとらえたものになっているのです。
日々の勤務と学習の両立は大変で、努力が必要です。しかし、試験のために学習したことは必ず業務に生きます。頑張って国家試験に挑戦して合格し、取得した「資格証」は誇るべきものです。努力した自分を褒めるためにも喜ぶべき証です。
よく「職場で言われたので資格を取らなくては」と嫌々受験をしている方の声を聞きます。しかし、資格はそれを取得するための「過程」にこそ意味があると思います。試験に向けた学習が介護現場での業務への自信になり、きっとよりよい介護につながるでしょう。
これから受験する方にとって、日々の学習は大変なことだろうと思います。「過程」を大事にしながら努力を続け、自信をもって来年の国試受験に挑戦できるようになるのが、資格証よりもある意味では大切なことかもしれません。
今回の試験で総合得点が合格点に達しなかった人でも、「A」「B」「C」のパートのうち合格点に達しているパートは、次回の受験が免除されます。残念ながらどのパートにも合格点がなく全問題の受験となる場合は、今回と同様の学習が必要ですが、免除のパートがある場合は、受験するパートに集中して学習できるようになります(なお、免除のパートがあっても、全パートを受験することができます)。
頑張ってください!!
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◎「人間の尊厳と自立」(2問)+「介護の基本」(10問)で、1科目群 「人間関係とコミュニケーション」(4問)+「コミュニケーション技術」(6問)で、1科目群 ※各1科目群で1点以上の得点がないと総合得点が合格点に達していても不合格となる。 |


