第38回介護福祉士国家試験問題の講評(前半:Aパート)~パート合格がスタートしました

2026.01.27

第38回介護福祉士国家試験を振り返って

 町田福祉保育専門学校の石岡です。第38回介護福祉士国家試験を受験された皆さん、本当にお疲れさまでした。日々学習を重ねられ、そのご苦労は大変なものだったと思いますし、試験を終えた当日は、緊張から精神的にも身体的にも疲労を感じたのではないでしょうか。
結果発表の3月16日(予定)を迎えるまで気が気ではない心境だと思います。「けあサポ」の解答速報で自己採点をしつつ、今回の試験を一緒に振り返ってみましょう。



 

「パート合格」がスタート

 この第38回介護福祉士国家試験より、パート合格(合格パートの受験免除)が導入されました。今回は初回ということで、全受験者が「全問題(A・B・Cパート)」を受験することとなっています。本試験で合格して、介護福祉士資格を取得されることをお祈りしています。もし、不合格となった場合でも今回の試験で合格したパートは次回の試験では免除となります。(パート合格した試験から翌々年までが免除の対象)
 パート合格の導入により、午前と午後の科目編成が昨年(第37回)までと変更となりました。昨年までは、午前中に苦手とする人の多い「制度・法律系」「医療系」の内容が集中していたので「ツライ午前問題」となっていました。しかし、今回からは、午前中に「制度・法律系」は残りましたが、他は「コミュニケーション技術」や「生活支援技術」など、普段の実務につながる分野の科目が多く、比較的得点しやすいので「勝負の午前中!」という科目編成ではないかと思います。
 午後は、昨年までは比較的得点しやすい科目ばかりだった印象ですが、今回からは「医療系」の内容が集中していて難易度が高めで、昨年とは打って変わって「ツライ午後問題」となったのではないでしょうか。
 全体的な特徴を振り返りますと、昨年までかなり増えていた「図表問題」が、今年はなんと1問だけで、過去問を学習してきた皆様は驚きでしたね。さらに近年増えていた、各科目の「短文事例問題」さらに多く出題されていて(午前:18問,午後:11問)、事例の読解力も得点するための大きなポイントとなっています。

 

 今回と次回の2回にわたって、第38回の試験を振り返ります。今回受験した方、これから受験する方、各々の立場で参考にしてください。今回は、「午前」の問題です。
 なお、解答案については、 こちら をご覧ください。

 

 先程も触れましたが、午前は「制度・法律系」の内容を除くと、「コミュニケーション技術」や「生活支援技術」など普段の実務にもつながるような分野の科目が多く、得点しやすい問題が多かったのが特徴です。取りこぼしなく、効果的に得点を積み重ねることが重要なポイントとなります。そのコツなどにもふれながら、各科目を振り返ってみましょう。

 

各科目の講評

人間の尊厳と自立【2問】

 実務経験ルートの受験者は、科目名の「人間」の文字を見るとビックリするのではないでしょうか。介護とは「人間が人間を」相手にするものです。そのため、まず「人間」というものを理解しようというのが、この科目の目的です。人権や権利擁護、尊厳、自立支援、利用者主体の考え方などについて学びます。例年この科目からの出題は2問で、今回は「社会福祉を発展させた人物」と、「ALSの利用者家族の意思決定に関わる提案」を考える短文事例問題でした。「人物」の問題は過去3回出題がなく久々となりました。なお前回は、2年出題が続いており、学習が必要です。近年、アドボカシーやストレングス、エンパワメントなど、介護や福祉にかかわる用語に関する出題が多いので学習が必要です。介護現場では利用者の重度化が現実になっていると思いますが、そのなかでもいかに「自立支援」を意識できるかは重要な視点です。学習を現場でいかしていきましょう。

 

介護の基本【10問】

 この科目では、介護の成り立ちから現在に至るまでの歴史にはじまり、介護福祉士を規定する法律である「社会福祉士及び介護福祉士法」やその役割、倫理など、この資格の基礎を学びます。介護の対象となる人の理解や自立支援、介護サービスの理解、多職種連携、安全とリスクマネジメント、労働者としての法制度に健康管理など、内容は多岐にわたります。そのため、他科目と重なる部分が多いことも特徴で、介護についての学習を包括した学習範囲となっています。
 国試では上記の項目からまんべんなく出題されますが、半分は法制度や理念などの知識が問われる問題、もう半分は利用者やその家族、介護従事者などの心情や対応方法などが出題となる傾向です。知識系は「社会の理解」と重なる部分も多いため、併せての学習となります。心情や対応方法に関する出題は得点を重ねたいところです。午前の科目ではこのような問題が多くなりますので、「自立支援」「利用者主体」「受容・共感・傾聴」「安全」という視点をどの選択肢がより意識しているのかが解答の際のポイントになるので、覚えておくとよいでしょう。
 第38回の特徴としては、法制度に関わるような問題が5問でした。特に「指定避難所での要配慮者に対する生活」が出題されたように、近年は各地で災害が発生している状況から、災害に関する出題の頻度が上がってくると思われます。「老健における在宅復帰に向けたカンファレンス」にて連携職種を問う出題があり、他科目を含めても「各専門職種とその役割」など関連する事柄を学習しておく必要があります。「サービス管理責任者」や「訪問介護員」の発言を問う短文事例2問は確実に得点したいところで、「利用者主体」「自立支援」などの基本姿勢をしっかりと意識できていれば解ける問題です。こちらは難易度としては低く、得点できたのではないでしょうか。
 法制度でよく出題される「社会福祉士及び介護福祉士法」は、介護福祉士の資格を取得する試験である以上、必ず得点したいところです。「介護保険施設における防災対策」は、前述の通りで、各施設、事業所、介護従事者にとって他人事ではない項目です。防災の法制度、災害時の避難や対応など様々な事柄を知っておくことで、試験対策というだけでなく介護現場でも生かせるでしょう。今回は「ストレスチェック制度」が出題されましたが、こちらも各介護現場では激務により介護従事者に心身の不調が発生している状況を聞きます。試験対策というだけでなく、一社会人として知識をもっておくといいでしょう。また近年は、様々な感染症が流行して介護現場ではその対応に苦労しています。「予防対策」「流行時の対応」などをしっかりと理解し、「生命を守る仕事」であることをあらためて意識したいですね。

 

社会の理解【12問】

 介護福祉の基本(介護保険法、障害者総合支援法など)であり、土台となる社会保障制度(社会保険、公的扶助、公衆衛生、医療制度など)について出題されます。全科目のなかでも多くの受験生が苦手と感じ、学習を避けたくなる科目かもしれません。ですが、12問と問題数が多いことから、この科目を攻略することが合否を左右するといっても過言ではありません。ほとんどの問題で法律や制度、理念などの「知識の有無」が問われます。よって、問題文の流れや勘では解くことができないため、コツコツと学習の積み重ねが必要です。
 今回は、前述の基本的な法制度をしっかりと学習して押さえていれば解ける問題が多いですが、昨年のような「基本中の基本レベル」の設定とは言えない出題だったと感じます。難易度は中程度といった出題が多かった印象でしたが、皆さんはいかがでしたか。特徴としては、障害福祉分野3問、介護保険分野3問(有料老人ホーム含む)と、出題の半分が介護分野で密接に関わる法制度だったことでしょうか。普段の実務につながる内容であり、しっかり学習したいところです。近年、この科目では「生活保護」と「生活困窮者自立支援法」の出題はどちらか1問でしたが、今回は両方の出題がありました。
 「4つの助(自助・互助・共助・公助)」のうち「自助」を問う短文事例問題は、迷われた方も多いのではないでしょうか。自助は「自分のことは自分でする」ということ、そこにはサービスを自費で購入することも含まれます。自分で通報しても、対応する公共サービスは公金となることに注目したいところです。「民法の親族」を問う出題は難易度が高かったでしょうか。親等や血族、姻族など、生活保護や成年後見制度の学習でも触れることから学習するものと思いますが、さらに踏み込まれた内容だったと思います。「生活保護」「法定後見制度」の出題に関しては、数少ない「基本中の基本レベル」の設定だった印象です。
 前回(第37回)の講評では、「近年この科目は難易度が以前より下がっている印象」と書きました。しかし、今回は難易度が何回か前に戻ったような印象があります。皆さんも、この科目が難しかったと感じていませんか?

 

人間関係とコミュニケーション【4問】

 この科目はタイトルのとおり、「人間関係」を中心としたコミュニケーションを学びます。「自分を知り、相手を知る」――介護にとって必要な「人間と人間の関係」を基本とした方向性からのコミュニケーションを学びます。加えて、2年前から「リーダーシップ」「スーパービジョン」など介護チームを“組織”ととらえて組織や個人の成長、マネジメントにつながる部分の学びが組み込まれました。以前の出題は2問だったのが、第35回から4問に増えました。
 傾向として前半は「コミュニケーション」にかかわる分野、後半は「チームマネジメント」からの出題となっています。やはり今回も前半2問は「人間関係の基本」を問う出題で、後半2問は「コンプライアンス」と「スーパービジョン」に関する出題でした。特に、後半2問については、今回を合わせた過去問4回分を見ると、出題傾向としては満遍なく出題基準の中項目「チームマネジメント」の内容を出題している途上のように感じます。次回(第39回)を受験する方は過去問を押さえつつ、出題がまだない「集団討議」「SDS」あたりを学習してみてはいかがでしょうか。 ※なお、総合問題(第38回)にて、「コーチング」「ティーチング」「コンサルテーション」が出題されています。

 

コミュニケーション技術【6問】

 本科目では、介護は「人間が人間にする」ことから、人と接するときに必要となるコミュニケーションの基本や基礎的技術、様々な対象者への方法、チーム・コミュニケーション、記録の方法などについて学習します。以前は8問の出題でしたが、第35回から「人間関係とコミュニケーション」が2問増えて4問となり、「コミュニケーション技術」は2問減って6問となりました。昨年同様に、今回も全体の半分となる3問が短文事例問題となっていて、読解力も併せて求められる傾向です。
 今回の短文事例問題は、会話の基本となる「話を聞く技術」、「全盲の利用者の周囲の利用者への依頼」、「記憶障害の利用者の発言を促す」といった対応方法を問う出題でした。一般問題3問も、「利用者尊重」の視点があれば解けた問題です。この科目の最後の問題「客観的事実」の出題はいかがでしたか。「想像」「推測」などを入れず「事実」なのはどれかを考えれば解けるのですが、言葉にすれば簡単ながら意外と難しいのでは。人間関係の中では、やはり「こうなのかな」など相手のことや状況を想像や推測してしまいます。そのような想像と事実を分けて考えなければいけません。この科目はもともと難易度が低めの科目ですが、今回はさらに得点しやすくなっていたのではないかと思います。

 

生活支援技術【26問】

 この科目で学習する分野は、「生活支援(家事)」「生活支援技術(介護技術)」「福祉用具・住環境」の大きく3つに分けられます。生活支援(家事)では、家庭経営から掃除、調理、洗濯(被服)などを学びます。生活支援技術(介護技術)では、ADLに関する分野(移動、身じたく、食事、入浴、排泄、睡眠など)や終末期における介護技術を学んでいきます。福祉用具や住宅改修は、介護保険制度では購入や貸与の対象となっており、関連する分野を学びます。国試では、生活支援や福祉用具・住環境などで知識を問われる科目です。介護技術については「根拠に基づいた介護方法や留意点」「心情や対応方法」に関する出題となる傾向です。
 「介護方法や留意点」の出題は日頃の業務を根拠立てて考えることで対応でき、「心情や対応方法」の出題は先ほどふれた「自立支援」「利用者主体」「受容・共感・傾聴」「安全」という視点で解答可能です。介護福祉士を受験する人にとって全科目の中で一番身近な科目であるために、これまでの国試でも全体的には難易度は高くありませんでした。第36回くらいまで、数問が「高難度」であったり、「驚いた!」といった印象に残ったりする問題がありました。前回、今回とそのような問題はなく、出題がおとなしめだった印象です。前述したように、近年増えていた「図表問題」が1つに減って、この科目で出題されました。「腹部の清拭」をイラストで問う問題ですが、「の」の字に拭くという基本的な問題でした。便秘の時の「腹部マッサージ」でもこれが出てきますね。
 全体的に過去の問題に類似した基礎的な技術から出題されていて非常に解きやすく、基本をしっかりと押さえている人であれば、かなり高得点だったのではないでしょうか。近年「家事支援」に関する問題が3~4問程度、必ず出題されています。今回は「被服の繊維や衣類の性質と洗濯方法」「訪問介護員の食材購入」「認知症利用者の未開封の健康食品の大量購入への対応」が出題されました。「認知症利用者の大量購入」と聞くと、「クーリングオフ」を連想するかもしれませんが、自身が店舗(スーパー)に行って購入したものは対象外です。
 このあたりは普段から自宅で家事をしている人や訪問介護員では基本となる項目で正答しやすかったでしょう。「家事支援」に関しては、普段家事をしない人や養成校ルートの新卒学生などは、重点的な学習が必要かもしれません。例えば、今回の出題である「洗濯」や「衣類の保管(しみ抜き、防虫剤など)」、「消費者保護の制度」などは覚えておくと日常生活で役立ちます。
 全科目中一番出題数が多い「26問」であり、今回のように「基本中の基本レベル」の設定となる出題が多かった場合は、この科目で安定的に多く得点できたかどうかが合否に大きく影響してきます。取りこぼしのないように、問題文や選択肢をしっかりと読み、すぐに解答しようとせず、誤った設問をしっかり消去しながら解いていくとよいでしょう。

 


 

◎「人間の尊厳と自立」(2問)+「介護の基本」(10問)で、1科目群

「人間関係とコミュニケーション」(4問)+「コミュニケーション技術」(6問)で、1科目群

※各1科目群で1点以上の得点がないと総合得点が合格点に達していても不合格となる。

 


\\ Follow me //

X


中央法規メルマガ会員 募集中!

国家試験受験生に向けた情報を、メルマガにて配信しています。ご登録は こちら から!