障害福祉分野における人材確保と生産性向上について

2026/09/23

第1回障害福祉分野における人材確保・生産性向上に関する検討会について紹介します。

 令和8年7月28日に、「第1回障害福祉分野における人材確保・生産性向上に関する検討会」が開催されました。
 労働力人口の減少が見込まれる一方、利用者視点に立った質の高い障害福祉サービス等を提供するためには、必要な人員を確保するとともに、限られた人員でも質の高いサービスを提供できる体制を構築していく必要があります。また、令和9年4月1日施行の障害者総合支援法改正等において、人材確保や生産性向上を通じた質の高い障害福祉サービス等の確保及び経済基盤の確立を図るための取組の推進等が、国及び都道府県の責務として位置づけられました。
 これらを踏まえ、本検討会は、障害福祉分野における人材確保・生産性向上等の課題に対応した取組の検討を行うため開催されます。
 本記事では、資料をもとに、障害福祉分野における人材確保と生産性向上についての概況や取組、今後の進め方について、重要な点をピックアップして紹介します。資料の全体を確認したい方は、 第1回「障害福祉分野における人材確保・生産性向上に関する検討会」(資料) をご確認ください。

 


1. 生産性向上の基本的な考え方

 障害福祉における生産性向上とは、「支援者一人一人の力を引き出し、チームでその力を利用者に届けることで、新たな価値を生み出すこと」です。各法人・事業所がそれぞれの「あるべき姿」を実現し、全国の障害福祉現場での「当事者視点に立ったケアの充実」につなげていくため、法人・事業所ごとの特徴に応じて「現状」と「あるべき姿」を明らかにし、ギャップを埋める取り組みを進めていきます。
 多様な関係者がいる障害福祉の現場において、関係者一人一人が当事者意識を高め、現場が一丸となって前向きに取り組める環境をつくるためにも、協調性・包括性・共益性という3つの価値観を意識しながら進めることが重要であるとしています。そのうえで、次の「5つのステップ」を循環し、繰り返しながら、少しずつ前に進んでいくことが求められています。

 

①共感をつくる:支援者間で共通の「あるべき姿」を描く。
②課題を見える化する:「あるべき姿」と「現状」を比べ、その間のギャップを明らかにする。
③解決策を考える:課題について、無理なく実行できる解決策を考える。
④試してみる:解決策を具体的な取組に落とし込み、小さく試す。
⑤振り返る:取組を振り返り、次の取組へ発展させる。

 

 障害福祉の現場は、利用者の年齢や障害特性、生活環境も多様です。求められる支援の在り方は利用者一人一人によって異なります。チームで共同して支援を行うにあたり、支援者側にも、支援の在り方に関する一定の共通理解が必要です。

 

 また、障害福祉サービスや障害児サービスの利用者数は年々増加傾向にあります。その一方で、障害福祉関係職種の有効求人倍率は、令和7年度で3.28倍と、全職種を大きく上回る高い水準で推移しており、深刻な人手不足が続いています。人材確保が喫緊の課題となる中、現場の持続可能性を高め、利用者にきめ細かなケアを届けるためにも、生産性向上に向けた取組は必要不可欠です。

 


2.概況と取組

1.省力化投資促進プラン(障害福祉)

 令和7年に策定された「 省力化投資促進プラン 」では、障害福祉分野の生産性向上を強く推進しています。障害福祉現場における業務の効率化や職員の負担削減、サービスの質向上を推進するため、ICT活用等により業務量を縮減する事業所の割合を、現状の32.3%から令和8年に50%、令和11年には90%以上へと拡大する明確なKPIを示しました。これにより、持続的な賃上げに繋げていくとしています。障害者の就労支援については、第7期障害福祉計画等に係る基本指針において、福祉施設から一般就労への移行者数に係る目標を設定しています。また、相談支援等を行う都道府県 ワンストップ窓口 については、全47都道府県への設置を目指すとしています。

 

2.当事者視点に立ったケアの充実のための生産性向上

 間接業務を効率化し、利用者の支援に注力できる環境づくりや、人材確保が難しい中でも、直接処遇業務の負担軽減・質の向上を推進することが重要です。生産性向上の事例として、指定申請や報酬請求書類の標準様式化、事業者・自治体間システムの共通化(令和9年度中を目途に実現予定)が進むほか、ペーパーレス化や電子公印の導入で押印・ファイリング時間を大幅に削減した例や、生成AIを活用して面談記録の作成時間を1件あたり30分から6.6分に縮減するなど、テクノロジーの導入によって、支援の手を止めずに業務を効率化する成功例が生まれています。

 

3.令和7年度補正予算による施策

 国は人材流出防止と生産性向上を急ピッチで進めるため、手厚い補正予算を計上しています。処遇改善では、他産業との賃金差を埋める緊急対応として、障害福祉従事者に月1.0万円相当の賃上げ支援を実施します。あわせて、介護ロボットやICTのテクノロジーを活用し、生産性向上に寄与する「介護テクノロジー導入支援事業」や、地域障害児支援体制充実のための「ICT化推進事業」を展開しています。さらに、都道府県ワンストップ型サポートセンターの整備費用を補助し、事業所が課題整理からテクノロジー導入・定着まで相談できる伴走支援体制を後押ししています。

 

4.令和8年度実施中の生産性向上関連主要施策

 令和8年度は、制度や報酬改定を通じて生産性向上を本格的に定着させるフェーズに入ります。処遇改善加算では月1.0万円(3.3%)の賃上げに加え、生産性向上や協働化に取り組む事業所へ月0.3万円(1.0%)の上乗せ措置が講じられます。制度面では、指定申請や報酬請求書類の標準様式化が令和8年4月より施行され、行政・事業者間の手続負担が大きく軽減されます。また、社会福祉法等の改正に基づき、都道府県ごとに人材確保や生産性向上を推進する関係協議会の設置が義務化されます。国・都道府県の責務としてサポート体制を明確化し、持続可能な現場づくりを支援します。

 


3.今後の進め方

 今後は、下記の取組を中心に、生産性向上に関する検討を進めることとしています。

 

① 障害福祉現場における生産性向上に係る実証の実施(20事業所程度)
② 創出された効果をふまえ「生産性向上ガイドライン」として取組内容を明文化
③ 生産性向上の取組や成果等を評価する仕組みの検討
④ 「生産性向上ガイドライン」等の普及・展開による、 障害福祉現場における生産性向上の取組の推進

 

 ④「生産性向上ガイドライン」については、令和7年に策定された「 障害福祉現場における生産性向上の基本的な考え方 」を基に、介護保険分野の「介護サービス事業における生産性向上(業務改善)に資するガイドライン」も参考としつつ、障害福祉サービス事業における生産性向上ガイドラインを策定することとし、下記のとおり構成案が示されています。

 

共通編
障害福祉現場における生産性向上の考え方や課題、改善活動の標準的なステップ・取組例を示す

サービス類型別
生産性向上の取組パターン別に、大きく①訪問系・相談支援系、②施設入所系・居住支援系、③通所系、④児童系の4パターンを作成し、類型別に応じた課題の設定・改善の取組をまとめる


4.その他

 上記のほか、障害福祉分野においては、しごとの魅力を伝えるため、福祉の仕事の内容や、実際に働いている人や利用者へのインタビュー、よくある質問などをまとめ、デジタルパンフレットや動画を作成するなどの取組も行っています(厚生労働省「 障害福祉のお仕事の世界 」参照)。本検討会で検討する方針を踏まえ、ターゲットごとに訴求力の高い媒体(WEBサイト、SNS、紙媒体など)を活用し、戦略的な広報を実施する予定としています。
 今後は、全5回の検討会を通して、人材確保・生産性向上に関する当事者団体等の意見に関する報告や暫定版ガイドラインの審議を行い、令和9年2月に取組の最終報告、令和9年3月ごろ開催予定の「障害福祉現場における生産性向上推進フォーラム」において、ガイドライン等を全国に周知する予定としています。
 直近の開催は、令和8年9月中が予定されています。検討会の開催予定や各種資料は、 厚生労働省のホームページ をご参照ください。