今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会報告

2026/06/03

第137回労働政策審議会障害者雇用分科会における報告について紹介します。

 2026年4月20日に、第137回労働政策審議会障害者雇用分科会が開催され、13回にわたって行われた「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」の報告書等の資料をもとに、制度改正に関する議論が開始されました。

 

 本記事では、議論の基となる「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会 報告書」「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会 制度的対応 ・検討の方向性」の2つの資料から、議題をピックアップして紹介します。
 本記事で取り上げていない議題や分科会全体について知りたい方は、 第137回労働政策審議会障害者雇用分科会(資料) をご覧ください。


障害者雇用の質について

1.障害者雇用の質の規定及び事業主の認定制度の創設

障害者雇用の「質」のガイドライン等の創設

 障害者雇用の「」として重視すべき要素をガイドラインに示し、その根拠及び内容を法令上に規定することで、事業主が目指すべき方向性を明確化し、企業における取組を推進していく方向で検討を深めていくとしています。
 一方で、事業所の規模によって可能な取組が異なり、一律の法令明示は一定の高いハードルとなるため、新たに障害者雇用を進めようとする事業主を萎縮させない形でどのように規定できるか、慎重に検討すべきとの意見もありました。

 

●障害者雇用の「質」として特に重視されるべき中心的な要素

・職務の選定・創出と障害特性等との適切なマッチングや、成長を促すOJTの確保など、能力を十分に発揮できるよう促進し、その成果を事業活動に活用すること
・採用後の配置・育成や障害特性に配慮した働きやすさを高める措置など、適正に雇用管理を行うこと
・発揮した能力に対して正当な評価を行い、処遇に反映させること
安定的な雇用契約期間を確保すること

 

 また、事業主の認定制度(もにす認定制度(※))の対象を拡大し、企業規模にかかわらず、「質」の向上に向けた取組を促進していくとしています。

 

2.いわゆる「障害者雇用ビジネス」に係る対応

 主たる労働者とは異なる就業場所において障害者を勤務させているなど、いわゆる「障害者雇用ビジネス」を使用している場合は、一定の項目(就業場所、業務内容など)の報告を求めることで、行政庁において網羅的に状況を把握し、必要な指導監督が行えるよう検討を進めています。
 報告の対象となる「障害者雇用ビジネス」そのものの定義付けや、利用企業の事務負担・心理的負担についても考慮しつつ、「障害者雇用ビジネス」及び利用企業の望ましい在り方に関するガイドラインの創設に向けた議論が行われています。

 


障害者雇用率制度等の在り方について

 現行の障害者雇用義務制度(法定雇用率の算定)は原則として障害者手帳の所持者に限られていますが、手帳を所持していない難病患者や精神・発達障害者、就労継続支援A型事業所やその利用者などについて、個人の状況を鑑み、新しく位置付けを行うことについて検討が進められています。ここでは、難病患者、精神・発達障害者に関する制度の見直しと、障害者雇用納付金について紹介します。

 

1.手帳を所持していない難病患者の位置付け

 手帳所持者と同等以上の高い就労困難性を抱えているものの、身体障害者手帳の交付基準(身体障害者福祉法別表)に該当しないために手帳を持つことができない難病患者が存在しています。本人からの申請に基づき、医師の意見書や難病の特性(易疲労性、自己管理の必要性など)を踏まえた就労困難性のアセスメントを行い、一定の水準にある者を個別に判定する仕組み(個別判定制度)の創設が検討されています。
 判定された難病患者については、まずは実雇用率における一定の算定を可能とし、施行状況を見ながら将来的な雇用義務化を検討していく方針が示されました。対象者の範囲については、公正性の確保のため、対象範囲の明確性と一律性を十分に確保しながら制度設計を行うこととされています。

 

2.手帳を所持していない精神・発達障害者の位置付け

 雇用率制度の対象は精神障害者保健福祉手帳の所持者のみとする現行の仕組みを維持しつつ、職場を含めた社会全体の理解の促進を図っていくとともに、合理的配慮の推進や関係機関における支援をさらに進めていくとしています。
 また、精神障害者保健福祉手帳には有効期限があることから、更新が得られなかった場合に、一定期間については引き続き雇用率制度の対象とすることについて、制度上の取扱いを検討する方向で概ね意見が一致しています。ここでの「一定期間」については、今後の議論の対象となっています。

 

3.障害者雇用納付金の適用範囲について

 障害者雇用納付金は、事業主の社会的連帯を理念とし、事業主間の経済的負担の調整と雇用義務の意識強化を図るための制度で、現行の制度では常用労働者100人以上の事業主が対象とされています。しかし、常用労働者100人未満の事業主において、法定雇用率達成企業の割合が半数を下回り、長期的にみると改善傾向が見られない状態が続いていることから、中小企業の障害者雇用を支援する施策の拡充・強化を目指し、新たに納付金の納付義務の対象とすることについて議論が行われています。
 障害者雇用をしていない企業が1人目の雇用に踏み出す背中を押し、障害者の働く場を増やしていくべきとの意見がある一方、中小企業等特有の経営環境を考慮することや、受入れ態勢を整備することなど、準備が不十分なまま無理に雇用しても、企業と障害者の双方にとって好ましくない結果につながりかねないため、中小企業における障害者雇用の進展を確認した後に、改めて検討するべきといった意見も挙がっています。

 


まとめ

 障害者雇用の場は、雇用義務制度の創設の翌年である1977年に1.09%であった実雇用率が、2025年には2.41%となり、大きく広がってきました。一方、法定雇用率は短期間に連続で、大幅に引き上げられてきており、2026年7月からは2.7%への引き上げが予定されています。

 

 こういった現状も踏まえ、労働政策審議会障害者雇用分科会においては、障害者雇用の「質」の向上と、その反映に向けた具体的な運用方法について議論が進められていきます。
 第137回の障害者雇用分科会では、関係団体からのヒアリングも開始されており、5月27日に開催された第138回の障害者雇用分科会でも引き続き関係団体からのヒアリングが行われています。
 6月以降は、各議題についての議論が開始されていく予定です。障害者雇用分科会の詳細は、 厚生労働省のホームページ でご確認ください。

 

※もにす認定制度
 正式名称は「障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度」で、厚生労働大臣が認定を行います。「企業と障害者が明るい未来に向けて共に進んでいく」という期待から、認定マークの愛称が「もにす」であることに由来しています。制度の詳細は 厚生労働省のもにす認定制度のページ をご確認ください。