道なき道をゆく! オルタナコンサルがめざす 強度行動障害の標準的支援 第28回 支援とマネジメントを分断するな!
2026/05/07
この記事を監修した人

竹矢 恒(たけや・わたる)
一般社団法人あんぷ 代表 社会福祉法人で長年、障害のある方(主に自閉スペクトラム症)の支援に従事。厚生労働省「強度行動障害支援者養成研修」のプログラム作成にも携わる。2024年3月に一般社団法人あんぷを設立し、支援に困っている事業所へのコンサルテーションや、強度行動障害・虐待防止などの研修を主な活動領域とする。強度行動障害のある人々を取り巻く業界に、新たな価値や仕事を創出するべく、新しい道を切り拓いている。
前回は、この連載のまとめに向けて、現場が変わらない理由を、「支援の問題」ではなく「構造の問題」として捉え直す必要性についてお話しました。個々の支援の質や現場の力量だけに目を向けるのではなく、その支援がどのような仕組みの中で行われているのか。そこに着目することが重要である、という整理でした。
この連載の中でも、形を変えながら何度か触れてきましたが、ここであらためて確認しておきたいことがあります。
それは、「支援」と「マネジメント」を分けて考えない、という視点の大切さについてです。問題は「支援」ではなく「構造」にあります。
今回は、そこをあらためて確認していきたいと思います。
なぜ現場はかみ合わないのか?
現場の支援について考えるとき、どうしても「支援そのもの」や「支援者の力量」などに目が行きがちです。
その支援者が、どのようにかかわるのか。どのように観察するのか。どのように行動の意味を捉えるのか。もちろん、これらは非常に重要ですし、この連載でも繰り返し扱ってきたテーマでもあります。
しかし一方で、こうした支援の工夫が、現場全体としてなかなか共有されず、定着しないという現実も、同時に見てきました。
「ある職員のかかわりではうまくいっている」
「私のときには問題は起こらない」
「特定の○○さんのときにだけ問題が起こる」
「しかし別の職員では再現できない」
「会議で決まったはずのことが、現場では実行されていない」
こうしたズレは、決して珍しいものではありません。そしてこのズレを、「誰の支援が正しいのか?」、または「誰が間違っているのか?」という視点で整理しようとすると、議論は個人の問題に収束していくことになります。
見えてきたのは「マネジメントの問題」
この連載では、ここで少し立ち止まって考えてみる必要性を訴えてきました。
「なぜ、その(うまくいった)支援は共有されなかったのか」
「なぜ、再現されなかったのか」
「どうして支援者によって違いが生じるのか」
「なぜ、現場に落とし込まれなかったのか」
こうした問いに向き合ったとき、見えてくるのは、支援そのものの問題というよりも、「それを支える仕組み」の問題です。
つまりこれは、やるべき支援とそれを支えるマネジメントが分断されている状態を示しています。
ここでいう「マネジメント」とは、単に管理職の役割におけるマネジメントだけを指しているわけではありません。
「支援の方針をどのように決めるのか」
「その内容をどのように共有するのか」
「誰がどのような役割を担うのか」
「現場で起きていることをどのように振り返るのか」
こうした、支援をチームとして成立させるための仕組み全体を指しています。
この連載でも繰り返し触れてきたとおり、支援は決して個人だけで完結するものではありません。むしろ、チームとしてどのように支えるのか、その構造によって大きく左右されるものなのだと思います。
現場を支える三つの層
あらためて整理すると、現場は大きく三つの層で成り立っています。
一つ目は「支援」。利用者への具体的なかかわりです。
二つ目は「支援のマネジメント」。現場の運営や調整など、チームとして支援を成立させる仕組みです。
そして三つ目が「組織マネジメント」。組織全体の意思決定や仕組みの設計といった、基盤となる部分です。
この三つの層は、本来一体として機能するものです。
しかし、実際の現場では、それぞれが分断されているケースも少なくありません。支援は現場任せ、マネジメントは管理職任せ、経営はさらに別の話。それぞれがそれぞれの情報も知らないまま、働いている。場合によっては、それぞれがどのような役割を担っているのかさえ共有されていないこともあります。残念なことですが、そんな現場もまだまだ存在しています。
その結果、それぞれが噛み合わないまま動いている。当然の結果でもあります。
支援とマネジメントを分断させるな!
当然ですが、支援の方針が曖昧であれば、職員ごとに判断が分かれます。会議で決まったことが共有されていなければ、現場で実行されることは難しくなります。記録が機能していなければ、正確な情報は引き継がれません。また、会議などで意見を言いにくい雰囲気があれば、現場の違和感は表に出てきません。役割が不明確であれば、責任の所在も曖昧になります。
こうした一つひとつは小さなことのように見えますが、積み重なることで、現場全体の支援の質に影響してしまう内容です。
ここまでたどると、少しずつ見えてくるものがあります。
支援を変えようとするとき、必要なのは「より良いかかわり方」を探すことだけではありません。もちろん、これが一番大切なことであることは言うまでもありません。
そのうえで、そのかかわり方が、チームとして共有され、再現され、継続される仕組みをどうつくるのか。そこまでを含めて考える必要があります。つまり、「支援」と「マネジメント」は、切り離して考えるものではなく、むしろ切り離してはいけないものだと思うのです。
この連載を通してお伝えしてきたことは、個々の支援の技術だけではありません。
・それをどう現場に根付かせていくのか
・どうチームとして機能させていくのか
そのための視点を、さまざまな形で提示してきたつもりです。
その意味で、「支援とマネジメントを分断させるな!」というのは、この連載を通して一貫してお伝えしてきたメッセージでもあります。
では、このような構造を前提としたときに、実際の現場をどのように動かしていくのか。どこから手をつけ、どのように変化を生み出していくのか。
次回は、「それでも現場を動かすために」というテーマで、より実践的な視点からまとめを発信していきたいと思います。

