障害者の地域生活支援も踏まえた障害者支援施設の在り方
2026/10/07
障害者の地域生活支援も踏まえた障害者支援施設の在り方に係る検討会について紹介します。
障害者の地域生活支援も踏まえた障害者支援施設の在り方に係る検討会では、令和7年9月の第4回検討会で報告書のとりまとめが行われて以降、改めて議論が必要であるとの認識のもと、令和8年6月に、検討会が再開されました。
本記事では、報告書の内容をまとめたうえで、今年開催された検討会における議論の内容をピックアップして紹介します。過去の検討会資料や、本記事で触れていない、各法人による事例報告などの資料については、
厚生労働省のホームページ
をご確認ください。
第4回検討会:議論のとりまとめ
令和7年9月16日に開催された第4回検討会において、それまでの議論のとりまとめが行われました。同月24日に公表された 報告書 から、主なポイントを整理します。
①障害者支援施設とは
障害者支援施設とは、「障害者につき、施設入所支援を行うとともに、施設入所支援以外の施設障害福祉サービスを行う施設」と規定されている施設です(障害者総合支援法第5条第11項)。具体的には、障害者に対して、主として夜間に「施設入所支援」、昼間は「生活介護」など日中活動支援を行う社会福祉施設のことをいいます。入所者に対してサービスを提供しつつ、多くが地域移行に取り組んでおり、入所者を削減することで、強度行動障害を有する方や医療的ケアが必要な方に向けた専門的な支援を、より充実させることができるよう努めています。
②これまでの経緯と現状
制度面では、平成26年の障害者権利条約批准、令和4年の国連・障害者権利委員会による対日審査総括所見での「脱施設化及び自立生活支援」の勧告や脱施設化ガイドラインの公表など、地域での自立支援へ向けた第7期障害福祉計画(令和6〜8年度)の基本指針においても、施設入所者の6%以上が地域生活へ移行し、入所者数を5%以上削減することが成果目標として設定されています。
現在の基本データを見ると、令和7年3月時点での施設数は2527施設、入所者数は12万1521人です。累計では多くの障害者が地域移行を果たしてきたものの、年間の移行者数は減少傾向にあります。背景には、入所者の重度化・高齢化(50代以上が半数以上、支援区分6が約57%)や、地域における重度障害者の受け入れ体制が不十分であることなどがあります。
また、調査研究によると、多床室のみの施設が14.5%残存しており、すべての多床室を個室化する予定のある施設は14.9%にとどまるなど、住環境の整備やユニットケア(実施率18.2%)の推進が課題となっています。さらに、すべての利用者に対して地域移行の取組を行っている施設は18.2%であり、地域の居住の場(グループホーム等)の不足や関係機関とのネットワーク不足が大きな壁となっています。
③障害者支援施設のあるべき姿とは
障害者総合支援法の基本理念を踏まえ、障害者支援施設は地域移行を支える通過点であるべきであることを念頭に置きつつ、法人の運営者や施設管理者、職員等との認識を共有し、取組を進めていくことが重要です。具体的には、下記の4つの取組が示されました。
(1)利用者の意思・希望の尊重
どこで・誰と・どのように生活したいかという、本人の意思・希望が尊重される意思決定支援のため、理解しやすい情報を提供するとともに、体験や経験を通じた選択の機会を確保し、本人の自己実現に向けた支援を行う。
(2)地域移行を支援する機能
令和6年度報酬改定で加算が設けられた動機付け支援や、地域移行の意思確認等に取り組み、地域の受け皿の整備と併せて、外部の関係者とも連携する。また、令和8年度から義務化されている地域移行等意向確認担当者の選任・指針の作成についても、「
障害者支援施設における支援者のための地域移行等の意向確認マニュアル
」を踏まえた取組を推進する。
(3)地域生活を支えるセーフティネット機能
地域での生活が困難となった場合に一時的な受け皿としての役割を果たし、本人が選択した生活環境に再度戻れるよう、短期集中的な支援を行う。施設の有する知識・経験・支援技術等の専門性の還元、緊急時や災害時における拠点としての活用を推進する。
(4)入所者への専門的支援や生活環境
強度行動障害や医療的ケア、ろう重複・盲重複への対応体制を整えるとともに、終末期における看取りまでの支援を推進する。また、プライバシーが保たれた個室化・ユニット化、昼夜分離、個々のニーズに応じた活動の推進などを通じて、より地域生活に近い環境へ改善していく。
④今後の取組に向けて
第8期(令和9~11年度)の障害福祉計画に係る基本指針においても、地域移行者数や施設入所者数の削減の目標値を設定し、実態把握の方策も含め、具体的な対応を検討する必要があります。基本指針の目標等の在り方は障害者部会で議論していくとともに、報酬の在り方は次期報酬改定等に向けて検討することとしています。
第5回検討会:施設入所待機者の把握方法
令和8年6月に再開される形となった第5回検討会では、上記のとりまとめを踏まえ、各自治体における、施設入所待機者の把握方法が共有されました。
施設の待機者ニーズは単に「施設入所」のみを求めているとは限らず、グループホームや一人暮らしを含む「居住支援全般に関するニーズ」とも捉えられます。障害者支援施設における地域移行や地域生活支援を推進する上では、施設入所待機者の正確なニーズ把握が欠かせません。しかし、待機者の実態把握方法や定義は自治体ごとに大きく異なります。
主な把握スキームには、①施設事業者が申請を受けて名簿を作成・共有するケースと、②自治体が点数化された評価基準(障害区分・家族状況・介護者の年齢・他サービスの利用状況等)に基づき優先順位を設定して名簿を作成するケースの2つが見られます。
また、一部の自治体では、システム化による業務効率化やHPでの情報公開などの工夫を行っていますが、平等性や緊急性を真に把握できているかといった課題については、引き続き検討が必要であるとの意見もありました。
*居住支援法人について
第5回検討会においては、居住支援法人の取組の発表もなされました。
「居住支援法人」とは、住宅セーフティネット法第59条に基づき、居住支援を行う法人として、都道府県が指定するものです。NPO法人、一般社団法人、社会福祉法人、居住支援を目的とする会社等がその対象となります。都道府県は、住宅確保要配慮者の居住支援に係る新たな担い手として指定することができます。
主な業務は、登録住宅の入居者への家賃債務保証や、見守りなど要配慮者への生活支援、情報提供や残置物処理などで、単独で住宅を確保することが困難な方全般に対して支援を行うものです。これらの業務に対し、定額補助の支援を受けることができます。
まとめ
令和8年7月に開催された第6回検討会においては、地域移行に取り組んでいる複数の社会福祉法人による事例報告がなされました。
今後のスケジュールについては、他の検討会における検討状況も踏まえて再考することとしていますが、本記事で取り上げた報告書の内容や、第5回・第6回検討会でのヒアリングの内容は、令和9年度の次期報酬改定にできる限り反映させていくこととしています。
