雇用・福祉の連携と障害者雇用率制度等の在り方について
2026/10/21
第143回障害者雇用分科会について紹介します。
令和8年10月の 第143回労働政策審議会障害者雇用分科会 では、同年9月の「 障害者就労に係る雇用福祉横断検討会 」における「 雇用と福祉の果たすべき機能・役割と連携の基本的考え方(中間とりまとめ) 」の報告がなされた後、障害者雇用率制度における事業協同組合等算定特例制度の見直し等について具体的な議論が行われました。本記事では、雇用福祉横断検討会の中間とりまとめの要点と、雇用分科会における議題について、内容をピックアップしてご紹介します。
雇用福祉横断検討会「中間とりまとめ」の要点
①制度創設からの変化と現状の課題
平成17年の障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)制定から約20年が経過し、一般就労における雇用障害者数は、約27万人(平成17年)から約70.5万人(令和7年)へと大幅に拡大しました。また、20時間以上30時間未満で働く短時間労働者や、10時間以上20時間未満で働く重度障害者等について、実雇用率の算定対象とされるなど、障害者の状態に応じて柔軟な働き方ができるよう、制度改正が進められてきました。
一般就労の進展により、「通常の事業所に雇用されることが困難」(一般就労が困難)と判断される状態像は当時から大きく変化してきています。特に就労継続支援A型については、公費(障害福祉サービス等報酬)による支援員配置等を前提とする福祉的就労と企業による一般就労との間で、状態像の範囲に乖離が生じていると指摘されています。
一方で、就労系障害福祉サービスの利用者数の推移についても、就労継続支援B型を中心に全体として増加を続けており、障害福祉から一般就労への移行者の増加数を大幅に上回っています。これは、就労継続支援A型・B型を利用する障害者のおおむね半数を精神障害者が占めており、その割合が年々増加していることや、高齢化・重度化によって利用期間が長くなり、その分働くことを希望する利用者が増加していることが背景にあると考えられています。
②雇用と福祉の機能・役割と「基本的考え方」
上記の変遷を踏まえ、障害者就労に係る雇用福祉横断検討会では以下の「基本的考え方」を再確認・整理しました。
・一般就労が可能な状態像にある者:一般就労において雇用機会を設ける。
・一般就労が困難な者:福祉において、一般就労への移行支援、又は就労の場を設ける。
一般就労における働き方が多様化・柔軟化したこと等により、一般就労の困難さが大きく変化してきたことも踏まえ、改めて本人の希望と状態像等を踏まえた丁寧なアセスメント(就労選択支援等)を行うことで、地域の実情等を踏まえた支援方針の検討が行われることを前提としつつ、 雇用と福祉それぞれの果たすべき機能・役割を再確認し、連携を強化していくこととしています。
③障害者雇用の「質」の向上
雇用の「量」の確保を優先する動きに対し、労務提供の対価として賃金を支払う契約関係という雇用本質に立ち返り、障害者の「戦力化・活躍の促進」(事業主側)と「成長・やりがい・貢献実感」(障害者側)を両立させる「質の向上」が求められています。
第143回 障害者雇用分科会での論点
①事業協同組合等算定特例制度の見直し
事業協同組合等算定特例制度は、中小企業の中には個々では障害者雇用を進めるのに十分な仕事量を確保するのが困難な場合もあることから、複数の中小企業が共同で障害者の雇用の場を生み出すことを目的として、平成20年の法改正で創設された制度です。
平成28年には、国家戦略特別区域法(平成25年法律第107号)の改正にて、主に同業種の事業主が設立する事業協同組合方式に加え、異業種の事業主の参画が期待でき、簡便に設立できる有限責任事業組合(以下、LLP)が制度の対象に追加され、令和5年4月より全国展開されました。
LLP追加以降、認定数は増加した(令和7年時点で13組合中6組合がLLP)ものの、一部で制度の趣旨にそぐわない実態や、活用しづらい要件がある点が課題となっています。
②算定特例グループ内にA型事業所を含む組合の現状
令和7年6月時点で算定特例を適用する13組合のうち6組合がグループ内に就労継続支援A型事業所を含んでおり、雇用障害者の大半(73%〜98%)をA型事業所が占める結果となっています。
本来は中小企業同士が業務を出し合って共同で雇用を生み出すべきところを、A型事業所を組み入れてその雇用量を特定事業主(企業)間で通算するだけで、企業側が自ら新たな雇用促進や業務出し合いを行っていない事例が多発しています。こうした実情に対し、障害者雇用ビジネスと同様に「雇用責任の希薄化」や「不適切な雇用管理」につながるとの厳しい指摘がなされています。
③要件見直しの方向性
こうした課題に対し、労働政策審議会では以下のような見直し方針が提示されました。
1.業務を出し合う仕組みへ
障害者雇用数が不足する特定事業主に対して、算定特例グループ内の「雇用促進事業」への実質的な業務発注(最低発注金額等の設定)を原則化し、国が最低発注金額の基準を設定することとしてはどうか。
2.新規雇用量の創出要件化とA型事業所の位置付け
既存のA型事業所の雇用量を単に通算する申請を是正するため、申請前にA型事業所が有していた雇用量を含めず、特定事業主の不足数に応じた「新たな雇用量」が創出されていることを確認とすることとしてはどうか。
なお、A型事業所の利用者を雇用率制度や納付金制度の対象に含めるべきか否かという根本的課題については、雇用福祉横断検討会での結論を踏まえて今後さらに検討を行う。
3.参画する事業主規模の拡大と最低限障害者雇用数の緩和
LLPの算定特例の対象について、従業員数500人以下規模の企業まで拡大することや、雇用義務未満(37.5人未満)の企業についても、業務切り出しのコンサルティングを受けながら雇用促進事業へ参画することを可能としてはどうか。
また、現行では、組合自身に1人以上かつ20%以上の障害者雇用を求めているが、組合自身及び特定事業主の最低雇用人数要件を原則廃止したうえで、特定事業主の障害者雇用への必要な関与・理解促進のための措置の実施を求めることとしてはどうか。
④在宅就業障害者支援制度・もにす認定の適正化
在宅就業障害者支援制度や優良中小事業主認定制度(もにす認定制度)においても、信頼性と適正性を確保するため、下記のような論点で見直しが行われます。
1.受発注関係の偽装・不正請求への対応
同一グループ内の企業と就労継続支援B型事業所との間で、B型事業所の通常の業務を書面上「在宅就業への発注」と偽装し、特例調整金等を不正請求するケースを是正するため、同一グループ内での発注を特例調整金等の対象外として明確化してはどうか。
2.障害者虐待等への対処
在宅就業支援団体の登録要件やもにす認定基準に「障害者虐待などの不適切な対応がないこと」を明記し、発覚した場合には取消処分等を行えるよう規程を整備してはどうか。 (※現行の規定では不適切な対応がないことは要件に位置付けられていないため、こうした事案に対し、必要な措置を講じることができない。)
3.フリーランス法違反の欠格事由化
在宅就業障害者(特定受託事業者)との取引適正化を図るため、フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律、令和5年法律第25号)違反を在宅就業支援団体の欠格事由に追加してはどうか。
まとめ
本記事では、令和8年秋に公表された「雇用福祉横断検討会」の中間とりまとめと、第143回労政審障害者雇用分科会における最新論点を解説しました。障害者就労をめぐる制度は、「量の確保」から「質の担保」や「適切な役割分担」を追求するものへ変化しています。
なお、本記事で触れている「障害者雇用の質」「障害者雇用率制度等」については、本サイト「
今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会報告書
」でも解説していますので、適宜ご参照ください。
