今月のおはよう21 認知症の人の「できる」を支える環境づくり

2026/07/15

『おはよう21』2026年9月号から、特集(認知症の人の「できる」を支える環境づくり)の内容を一部ご紹介いたします。


認知機能や身体機能が衰えると、
生活するうえでそれまで感じていなかった「苦手」が増えてきます。
ケアする側が支援することももちろん大切ですが、
認知症の本人が暮らしやすい環境をつくることも、同じくらいとても大切です。
本人が自分でできることを増やすための環境面での配慮について、
認知症の症状の理解をもとに解説します。


BPSDの背景にある困りごとに目を向けよう

介護現場で日々直面するBPSD(認知症に伴う行動・心理症状)。
すぐに対応しなければ、と焦るあまり、つい「どうやって行動を止めようか」と考えてしまいませんか?

 

今回の特集の出発点は、その視点を少しだけずらすことにあります。
認知症にやさしい環境デザインに関する、これまでの研究などをひもときながら、なぜ今、環境に注目するのかを解説します。


BPSDは「SOSのサイン」

大声を出す、絶えず歩き回る、介護を受け入れようとしない。
こうした一見理由がわかりにくい行動(BPSD)に、現場では日々対応に悩むことが少なくないかもしれません。

 

しかし、これらは「認知症だから起きる問題行動」ではありません。
本人が言葉にして伝えられない心理的な「不安」や「不快感」、身体的な「苦痛」を周囲に伝えようと、必死に訴えかけている「SOSのサイン」なのです。

 

まずは「困った行動」という見方から離れ、ご本人が「何に困っているのか」に目を向けることが、環境デザインの第一歩となります。

 


脳の機能変化と周囲の環境の「ミスマッチ」が引き金に

SOSが発信される背景について、本人の「病気のせい」や「症状の進行」だけに求めるのは適切ではありません。

 

認知症による脳の機能変化(見え方や記憶の仕方、注意の向け方の変化)に対して、周囲の物理的・感覚的な環境が合っていないこと。このミスマッチこそが、BPSDを引き起こす大きな要因の一つとなります。

 

この分野を国際的にリードしてきた、イギリスにあるスターリング大学認知症サービス開発センター(DSDC)の環境デザインの根底には「障害の社会モデル」という考え方があります。
つまり、認知症の人が直面する困難の多くは、本人の機能低下そのものよりも、その変化に周囲の環境が追いついていない(環境とのミスマッチ)ことによって生み出されている、という視点です。
環境が合わなければ、誰でも混乱し、怒りを感じやすくなるのです。

 

環境が変われば、「できる」が増える

記憶障害や見当識障害、実行機能障害といった中核症状そのものを大きく改善することが難しい場合でも、本人の低下した機能を補うように、環境を整えることは今日からでも可能です。

 

建物の大がかりな改修はできないとしても、色使いや光の調整といった、より身近な工夫によって暮らしのバリアを取り除くことができます。
環境という手がかりが整えば、本人は自ら状況を理解し、混乱せずに「自分でできること」を維持し、広げていくこともできるのです。

 

適切な環境が穏やかな暮らしとケアのゆとりを生む

「環境づくり」と聞くと、大がかりな設備投資が必要だと感じるかもしれませんが、ここで私たちが目指すのは現場レベルの工夫です。

 

職員の手や声かけによる直接的な支援や介助ばかりを増やすのではなく、周囲の環境にもケアをサポートしてもらう発想をもちましょう。

 

本人の視点に立った適切な環境に生まれ変われば、転倒やひとり歩きなどのリスクが減っていき、穏やかな暮らしがもたらされます。
その結果、現場スタッフの介護負担が軽減され、ケアのゆとりを生み出すのです。

 


続きは本誌でご覧いただけます。

 

執筆

執筆 木内大介 (株式会社メディヴァ)


以上は、『おはよう21』2026年9月号の特集の内容の一部です。このほかにも本誌では、下記のトピックを取り上げ解説しております。ぜひお手に取ってご覧ください。

 

特集

認知症の人の「できる」を支える環境づくり

CONTENTS

1 BPSDの背景にある困りごとに目を向けよう
2 身体のバリアフリーから認知機能を支えるバリアフリーへ
3 環境づくりで大切な基本方針と視点
4 場面別! 環境づくりはここがポイント


『おはよう21 2026年9月号』

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