第3回 2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会
2026/07/01
2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会における議題について紹介します。
2026年6月22日に、「第3回 2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会」が開催されました。当日は、①2040 年に向けた看護職員に求められる資質について、②看護職員の資質の向上に向けた取組について、③看護師等養成所について、④看護職員の需要推計について、が議事として示され、資料をもとに構成員から意見が出されました。
本記事では、「2040年に向けた看護職員に求められる資質」とその「資質向上に関する取組」に関する検討内容をピックアップして紹介します。本記事で取り上げていない議題や検討会全体について知りたい方は、「
第3回 2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会:資料
」をご覧ください。
1.2040年に向けた看護職員に求められる資質
現在、2040年に向けた医療需要を踏まえた地域医療構想の検討が進められていますが、今後の人口減少・高齢化に伴う医療ニーズの質・量の変化や生産年齢人口の減少を見据えた医療提供体制の構築に当たり、地域医療の支え手である看護職員の需給の状況を見通しつつ、看護職員の資質を高めるとともに、各地域における養成・確保策の検討を進めることが求められています。
看護職員に求められる資質については、以下の9つに焦点を当て、検討会構成員から意見が出されています。一方で、看護職員の背景が多種多様であり、1つの同じ“資質”にまとめていくことに困難があるという意見や、地域偏在の是正など、環境整備とセットで議論すべきであるという意見も挙がっています。
●看護職に求められる基本的な資質
①コミュニケーション能力、対人能力 ⑥多職種と連携・共働する力
②ジェネラリストとしての能力 ⑦AI、ICT技術を活用する能力
③患者の状態の変化に対応し、自律的に判断する能力 ⑧管理、マネジメント力
④疾病予防、重症化予防のため先手を打つ力 ⑨専門職として役割を見極め、果たす力
⑤地域包括ケアを担う能力(在宅・生活の理解)
2.看護職員の資質向上に向けた取組について
①看護職員に対する研修の現状と課題
新人看護職員研修の制度と実施実態
新人看護職員に対する研修は2010年から努力義務となり、①基礎教育を土台とした臨床実践能力の向上、②複数患者・多重課題に対応した医療チームの中での臨床実践能力の強化、③医療機関における組織的な研修の一環としての位置づけ、④実効性ある運営体制や研修体制の整備、⑤ニーズに対応した研修の見直しの必要性、という基本方針のもと、
新人看護職員研修ガイドライン
(以下、ガイドライン)において到達目標を示しています。
現状、ガイドラインに沿った研修を実施している施設は増加傾向にありますが、中小規模ではガイドラインに沿わない独自の研修を行っている施設も1割程度あります(2023年医療施設静態調査)。
また、2025年度厚生労働科学研究「看護職員の育成に係る実態調査研究」において、研修責任者・看護部長、教育担当者、実地指導者、新人看護職員を対象に、研修の実施状況や到達目標の達成状況についての調査が行われました。新人看護職員研修について課題と感じていること・困っていることについては、実地指導者・教育担当者がともに「新人看護職員に主体的な学習を促すことが難しい」など新人看護職員に関する項目を挙げていることに加え、「人員に余裕がない」といった体制面に関する項目も課題として挙がっていました。
さらに、看護師の特定行為研修(※)の共通科目で学ぶ内容については、今後限られた人材で質の高い看護を提供していくためにすべての看護師が身につけておくべき知識・技能であり、看護師の基礎教育から組み込むべきとの意見もあります。
訪問看護における新人看護職員の育成
訪問看護においては、関係団体が「 訪問看護師のための生涯学習ガイド 」(日本訪問看護財団)を作成するなど、新卒を含めた各キャリア段階で求められる能力や育成支援等を示しています。また、より具体的な育成支援として、各都道府県の看護協会等においてガイドラインが作成されており、併せて実施した試行事業を通じて、実際に新卒の看護職員が訪問看護ステーションに就職した例もあります。
各都道府県において研修事業が行われていますが、今後の医療ニーズの変化を踏まえた人材確保が課題となっており、新卒であっても訪問看護に従事できるよう、研修体制を整備することが求められています。しかし、訪問看護に特化したガイドラインはないため、地域ごとの研修に委ねられており、新人看護職員研修後の資質向上に係る研修も、すべての都道府県において実施されているわけではないのが現状です。
②看護職員の資質の向上に係る論点
現状やこれまでの議論を踏まえ、看護基礎教育から臨床判断能力を含む臨床実践能力がシームレスに積み上げられていくような研修に向けて、研修の内容・方法、評価方法、到達目標などについて、訪問看護も含めたガイドラインの改定が必要であるとの考えが示されました。また、新人看護職員研修以後も、各領域やキャリアに合わせた研修内容とすることや、好事例を収集して広く展開していく必要があるとしています。
3.看護師等養成所について
①看護師等養成所の現状と課題
看護基礎教育・学生を取り巻く現状
近年、看護師養成所では、入学者数の減少と学生の多様化が進んでいます。若い世代では、住環境の変化や科学技術の進歩により、人間関係の希薄化や生活体験の不足が進んでおり、文章作成能力や読解力、多様な生活スタイルを理解し信頼関係を築く対人能力の向上が求められています。さらに、入学後は学習内容の難しさや課題の多さに直面し、学業継続への負担感を持つ学生が増加しており、支援体制の不足が課題となっています。
専任教員に関する課題
養成所の専任教員は、業務負荷の増大と急速な高年齢化という二大課題に直面しています。1~3年目の若手教員は、膨大な仕事量や休日出勤に加え、学生の個別対応や実習指導に強い困難感や悩みを抱えています。その結果、入職5年未満の退職者が全体の約半数を占める深刻な状況です。
一方で、現在の養成教育を支える50歳代以上の専任教員・教務主任の割合は56%まで増加しています。この中心層は今後10年以内に一斉に定年退職を迎える見込みであり、若手への教育ノウハウの継承や、中長期的な教員不足を補うための就業継続支援、さらには教員の負担を軽減する組織的なサポート体制の構築が急務となっています。
看護教育におけるDX化
看護師等養成所において、限られた人的・物的資源の中で教育の質を維持・向上させ、教職員の勤務環境を改善するため、養成所でのDX化が推進されています。具体的には、シミュレータによる技術習得や教育用電子カルテを用いた看護過程の展開、VR技術による希少事例の擬似体験などが挙げられます。
実際に、デジタル実習記録システムの導入事例では、教員が外部実習先からでも場所を選ばずに添削・指導を行えるようになり、移動時間や時間外勤務が削減され、教職員の働き方が改善されました。学生にとっても、即時のフィードバックにより指導の往復が増え、個別指導が充実する効果が出ています。一方で、システムの安定性や操作性の課題も報告されています。
看護師等養成所の統廃合
少子化に伴う定員充足率の低下により、地域の養成体制を維持するための統廃合やサテライト化の動きが進んでいます。2020年度から2024年度にかけて多くの看護師養成課程が廃止されており、今後も多数の廃止が予定されています。
統廃合にあたっては、既存の施設設備や教員を有効活用し、遠隔授業の推進を図る養成所の取り組みに対して支援を行い、多様な背景を持つ学生のニーズにあった魅力的な学習環境の整備、各教員の授業準備にかかる業務負担の軽減等に資することを目的とした、遠隔授業推進支援事業が実施されます。実例として、大学が自治体と連携して遠隔地にサテライトキャンパスを新設し、オンラインと対面を組み合わせて地域医療を支える人材を養成する試みや、在宅療養推進のための多機能施設の中に、民間の看護師養成所のサテライト教室を整備する取り組みが進められています。
②看護師等養成所に関する論点
少子化に伴う18歳人口の減少等により、看護師等養成所の受験者数の減少が顕著であり、学生の多様化もあいまって、看護教育現場の負担が増大しています。こうした状況の中、地域における必要な看護職員を持続的に養成する体制を確保するため、看護師等養成所の統廃合を進めるにあたっての課題への対応や体制整備を進める必要性が示されました。
具体的には、
・多様化する学生への丁寧な指導に伴う教員の業務負担を軽減するため、ICTや動画教材等の共通教材を導入して教務を効率化すること
・将来の教員不足を見据え、定年後のベテラン教員の再雇用など就業継続の仕組みを整え、若手へのノウハウ継承を進めること
・養成所の統廃合を進める際、段階的に課程を廃止していく過程でも指定規則により「専任教員8名以上」の配置が厳格に求められるため、この教員配置基準を実情に応じて柔軟化すべきかどうか
などが議論の焦点となっています。
4.まとめ
今回の検討会では、研修の実施と併せて、新人看護職員が安心して学び、成長できるようにするための環境整備、教育を行う管理者の育成も必要である旨の意見が挙がりました。現状の把握や考え方の整理、より実態に即した施設整備や運営基準の見直し、財政的な支援の整備が求められています。
今後の検討会情報は、
厚生労働省のホームページ
をご確認ください。
※特定行為
「診療の補助であって、看護師が手順書により行う場合には、実践的な理解力、思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能が特に必要とされるもの」(保健師助産師看護師法第37条の2)である
38の行為
を指します。特定行為を行う看護師は、厚生労働大臣が指定する研修機関において「特定行為研修」を受けることが義務づけられています。
