「いつも同じことを言う」「昔の話をよく口にする」・・・ 高齢者によくみられる行動の理由を解説!
2026/03/18
「何度も聞き返される」「自分の意見を譲らない」といった高齢者の行動は、「年をとったから」と思われがちです。しかしその背景には、加齢に伴う心身の変化のほかに、その人が生きてきた時代背景や高齢期ならではの複雑な心理が隠されていることがあります。
日本は今や「人生100年時代」とも言われる長寿社会です。高齢期が長くなったことで、高齢者の価値観やライフスタイルも多様化しています。
本記事では、高齢者によくみられる行動を例に挙げながら、その背景にある理由や心理についてわかりやすく解説します。
【記事の監修者】
大谷佳子(おおや よしこ)
NHK 学園社会福祉士養成課程講師
1 多様化する高齢者
平均寿命の延伸により高齢期の平均的な長さは16〜22年ほどにもなり、高齢者1人ひとりが自分なりの過ごし方を創っていくライフステージになりつつあります。
これに伴い、多様な世代の人が「高齢者」として存在しています。たとえば、昭和の高度経済成長期に生まれた人と、大正生まれの人とでは、生まれ育った時代背景や社会環境、価値観などが大きく異なります。そのため、一見「老化現象」と思われがちな行動が、実はその世代に共通する特徴である場合もあります。
例えば、戦後の第一次ベビーブームに生まれた団塊世代は、同世代の人口が多く、常にアグレッシブに競い合う経験をしてきたため、競争意識や自己主張、負けん気の強さが特徴とされています。団塊世代は高齢者人口の多くを占めるため、その世代の特徴が高齢者特有の心理や行動のように見えている可能性もあるのです。
2 高齢期ならではの心理
高齢期は、さまざまな「喪失体験」に直面しやすい時期です。
<喪失体験の例>
- ・定年退職や引退に伴う「役割や立場の変化」
- ・定年退職や引退に伴う収入減少といった「経済的喪失」
- ・配偶者や友人との死別などによる「人間関係の喪失」
- ・病気などによる「身体的健康の喪失」など
こうした喪失体験の連鎖や、喪失後の生活への適応は、高齢者にとって大きなストレスになります。これまで当たり前にできていたことができなくなることで、自尊心が傷ついたり、思い通りにいかずフラストレーションを感じやすくなったりするのが、高齢期ならではの心理状態です。
3 年をとると性格は変化する?
「年をとると頑固になる、怒りっぽくなる」といった言葉を耳にすることがありますが、加齢のみが原因でパーソナリティ(性格)が一律に変化することはありません。
人の性格には、「三つ子の魂百まで」と言われるような生涯変わらない気質の部分と、環境の変化によって変わる部分があります。高齢期においては、身体機能の低下や病気といった「身体的要因」や、人間関係や役割の変化といった「社会環境的要因」が間接的に影響し、性格に変化が生じることがあります。
また、現役時代には理性によって抑えられていたその人本来の性格が、脳機能の低下や環境の変化によって抑えきれなくなり目立つようになる「性格の先鋭化」が起こることもあります。つまり、年をとったから怒りっぽくなったのではなく、もともとの短気な性格が表面化してきた可能性もあるのです。
4 聞き返す行動が多くなるのはなぜ?
高齢者が何度も聞き返す行動には、大きく二つの理由が考えられます。
①「老人性難聴」によって声が聞こえづらくなっている可能性
老人性難聴は高い音から徐々に聞こえにくくなるため本人が気づきにくく、音がゆがんだり混ざったりして聞こえることで、言葉が聞き取りづらくなります。特にサ行やタ行などの高い周波数の音が苦手になり、大きな声で話しかけられても聞き間違えをしやすく、何度も聞き返してしまうのです。
②相手が言っていることを「理解しよう」とする心理
高齢になると、情報を処理することが若い頃よりも苦手になります。一度にたくさんの情報を伝えられたり、早口で説明されたりすると、頭の中ですぐに処理できず、自分が理解できるまで聞き直したくなるのです。
高齢者に話しかける際は、低い声でゆっくりと、短い文章で一つひとつ相手の反応を確かめながら伝える配慮が必要です。
5 自分の意見を譲らないのはなぜ?
自分の考えに固執し、自分の意見を譲らない行動にも、次のようなさまざまな心理がはたらいています。
①長年の経験への自負
「自分には年を重ねた分の知識や経験がある」という思いから、どうしても自分の考えを譲れない気持ちが強くなることがあります。また、戦前や戦時中といった社会的背景・教育水準のなかで育ったという世代的な特徴が反映されている場合もあります。
②自尊心を維持したい心理
高齢期になると心身の機能が低下し、「今までできていたことができない」と感じる場面が増えます。すると、自尊心が傷つくのを恐れるようになり、失敗するリスクが伴う新しいことや不慣れなことを避け、自分が「うまくいく」と思える過去の経験や考えに固執しやすくなるのです。特に現役時代に活躍していた人ほど、この傾向が強くなりやすいとされています。
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