第31回社会保障審議会福祉部会

2025/11/26

 令和7年11月17日(月)に、 社会保障審議会福祉部会(第31回) が開催されました。

 まず、福祉部会におけるこれまでの議論の状況が報告され、続いて、介護保険部会、福祉人材確保専門委員会からの報告が行われました。


福祉部会における、これまでの議論の状況

1 地域共生社会の更なる展開について

 誰も取り残されることなく、地域で支え合う社会を目指す地域共生社会の理念と実践は、今後より一層、重要性が高まっていくことから、2040年に向けて更なる展開を図っていく必要がある。という認識の下で、「地域共生社会の在り方検討会議」や本部会における議論も踏まえ、個別の論点(①包括的な支援体制整備に向けた対応、②過疎地域等における包括的な支援体制整備のための新たな仕組み、③地域共生社会の理念の再整理・連携協働の強化)について、現状・課題、対応の方向性の整理を行うこととされています。
 包括的な支援体制整備については、市町村の取組がまだらで、都道府県支援も研修・情報提供にとどまり伴走不足である。重層的支援体制整備事業は量的拡大の一方、成果指標・評価が弱い。相談支援偏重で地域づくりまで手が回らず。住民協働の方策が不明瞭である。こども・若者支援が継続的に届いていない。学習・生活支援事業の実施自治体も伸び悩んでいる。といったことが議論され、検討の方向性として、①体制整備に必要な施策を明確化し、支援会議や協力団体委嘱等を全市町村で活用可能にする。②生活困窮者自立支援制度の対象拡大と一次相談の義務化を図る。③事業計画に目標・評価を必須化し、交付金は機能評価型へ。④こども・若者支援を体制整備指針で周知する。といったことが示されてきました。
 過疎地域等向け新たな仕組みについては、専門職確保困難な小規模自治体に分野横断の相談・地域づくり機能をパッケージ化して提供する。専門職の配置基準を簡素化し、自治体が窓口形態を選択できるようにする。都道府県・近隣市の後方支援を義務付け、後方支援事業を推進する。交付金は複数の制度の補助金を一体化し、事務負担を軽減する。といったことが議論されてきました。

 

2 身寄りのない高齢者等への対応・成年後見制度の見直しへの対応について

 新たな終身サポート事業について、契約締結には本人の判断能力が前提となる。利用料は原則自己負担で実費は別途。実施主体は限定しない。届出制とし、都道府県が調査・停止等を行えるチェック体制を法定化する。社協が担う場合は県社協・政令市社協が全域で実施し、運営適正化委員会が監督する。といったことが議論されてきており、部会意見として、自治体の役割の明確化、市町村地域福祉計画への位置付け、民間事業者のチェック体制の強化が必要であるとされています。
 成年後見の「中核機関」の法的位置付けについては、整備済み市町村は7割弱で、小規模自治体で整備が遅れている。法的根拠がなく個人情報共有や連携に障壁がある。といったことが議論され、検討方向性として、①家庭裁判所の意見照会に市町村が適切に対応する。②市町村には相談受付・チーム形成支援・ネットワーク調整等を担う努力義務を課す。といったことが示されてきました。

 

3 社会福祉法人制度・社会福祉連携推進法人制度の在り方について

 法人間協働で経営基盤の強化・地域福祉の充実を図る制度であるが、設立手続・業務要件が負担となっている。使いやすさ向上のため事務負担軽減と業務範囲緩和が必要となる。といったことが議論されてきました。

 

4 災害に備えた福祉的支援体制について

 平時からの連携体制について、能登地震で初動遅れと在宅避難者支援不足が顕在化している。包括的支援体制は防災分野との法定連携がなく自治体の取組に差がある。地域福祉計画の防災項目も曖昧である。といったことが議論されてきました。
 DWAT体制・研修については、DWATは通知ベースで実施されており、平時からの人材確保・訓練が課題となっている。派遣時の所属法人の理解や、要配慮者の情報提供の法的整理も必要。といったことが議論されてきました。

 

5 共同募金事業の在り方について

 共同募金は、戦後から地域福祉を支える寄附の受け皿だが、共同募金配分団体の寄附募集禁止は時代遅れである。準備金は災害限定で柔軟性が不足している。といったことが議論され、検討の方向性として、寄附募集禁止規定を撤廃(包括指定寄附金の対象維持を前提)する。準備金は先駆的・継続的な取組みにも活用できるよう透明性を確保したうえで使途を拡大する。オンライン等で募金方法・成果発信を強化する。といったことが示されてきました。


介護保険部会、福祉人材確保専門委員会からの報告

 次いで、介護保険部会における議論の状況が報告された後、福祉人材確保専門委員会における議論の整理状況が報告されました。

 

1 介護保険部会における議論の状況

 介護保険部会からは、①身寄りのない高齢者等が抱える生活課題、②地域ケア会議の活用推進・相談体制の充実、③地域ケア会議の現状と課題、④相談体制・ケアマネジメント体制の再構築、⑤介護予防・地域ささえあいサポート拠点整備モデル事業、⑥過疎地域等における包括的支援体制について、これまでの部会における意見とともに報告がなされました。
 今後は、地域包括支援センターの業務量軽減と財政・人材支援、士業・民間サービスとのネットワーク構築と早期連携、地域ケア会議の機能強化(個別-推進の連携モデル提示、テーマ設定の明確化)、介護保険外も視野に入れた相談窓口の多様化と制度間の入口整理、中山間地域に適した人材育成と多機能拠点の財政支援といったことが検討課題となります。

 

2 福祉人材確保専門委員会における議論の整理状況

 福祉人材確保専門委員会からは、介護人材を取り巻く状況と議論の経緯について説明がなされた後、①地域差を踏まえた各地域における人材確保の取組、②若者・高齢者・未経験者など多様な人材の確保・育成・定着、③中核的介護人材の確保・育成、④外国人介護人材の確保・定着について、議論の整理状況が報告されました。
 今後の方向性として、人口減少速度の地域差を踏まえ、地域軸・時間軸での多様な介護人材確保が最重要課題であること、処遇改善と専門性評価が不可欠であること、関係審議会等でさらに議論を深め、多面的に対策を推進する必要があることが示されました。


とりまとめに向けて

 本部会では、これらの報告に関して、各委員から、様々な角度からの意見が付されました。
 次回の福祉部会では、とりまとめの案が示されたうえで、議論がなされる予定となっています。