会話が止まる人と会話が続く人はどこで差がつく? コミュ力が磨かれるポイントを紹介!
2025/07/25

日々の対人援助業務において、利用者や患者、同僚、上司、他職種など、さまざまな人々と人間関係を築くことは不可欠です。しかし、「この人は何を言っても無駄だ」「考え方が違うから仕方ない」と感じ、会話が止まってしまう経験はないでしょうか。実は、人間関係がうまくいかないとき、会話が止まってしまうことには明確な理由があります。
【記事の監修者】
竹田伸也(たけだ しんや)
鳥取大学大学院医学系研究科臨床心理学専攻教授・専攻長。博士(医学)。
香川県丸亀市生まれ。鳥取大学大学院医学系研究科医学専攻博士課程修了。
日本老年精神医学会評議員、日本認知症予防学会代議員、鳥取県社会福祉審議会委員長、鳥取県介護保険事業支援計画・老人福祉計画策定・推進委員会委員長等を務める。
1 言葉かけが大事なワケ
人間関係が八方ふさがりに陥る主な理由は、会話が止まってしまうことにあります。ケアをする仕事にとって、会話は基本的で最も大切な意思疎通の手段であることをふまえると、会話が止まることは「事故」とすらいえます。
会話が続かない理由は、会話の入口である「言葉かけ」が適切でないことにあります。例えば、「あなたの考えは間違っている」と言葉をかけられたうえで「私の話を聞いてください」と言われたときと、「あなたの考えも一理ありますね」と言葉をかけられたうえで「私の話を聞いてください」と言われるのとでは、どちらと会話を続けたいかは明白でしょう。
コミュニケーションの本来の意味は「やりとり」であり、相手が受け「とり」やすい言葉かけを「やる」ことで成り立ちます。そのため、会話を止めずに続けるには、最初の言葉かけが非常に重要になるのです。
2 自他尊重のこころ
言葉かけが相手に届くためには、言葉と目で見える情報や、耳で聞こえる情報といった非言語コミュニケーションを一致させることが不可欠です。例えば、病気の告知を受けた患者に対して、医療者が終始笑顔で話を聞くと、言葉が適切でも患者は「寄り添ってくれていない」と感じ、不快にさせてしまうことがあります。自分の実感と言葉、そして非言語コミュニケーションが一致すること(自己一致)によって、言葉かけに力が宿り、会話が続く力となります。
言葉かけが相手にしっかりと届き、それを受けた相手と会話が続くための条件は、自分も相手も大切にした「自他尊重のこころ」にもとづく言葉かけをすることです。
一方的に「押しすぎ」の言葉かけは自分を大切にしますが相手を大切にしていません。反対に言いたいことが言えない「引きすぎ」の言葉かけは、相手を大切にしますが自分を大切にしていません。どちらかしか大切にしない言葉かけは会話を止めてしまいます。自分も相手も尊重する態度を育むことで、会話が続く豊潤な言葉かけを送り出せるようになります。
3 相手の言い分や気持ちを承認する
相手がこちらの言葉かけを受け取ってくれない最も大きな理由は、相手の言い分や気持ちを承認できていないことです。相手の事情を汲まずに一方的な指導をしてしまうと、言葉は受け取ってもらえません。
一方で承認の言葉かけは、相手の行為の良し悪しを評価するのではなく、相手の事情を認めるものであるため、こちらの言葉を受け取ってもらいやすくなります。
4 ケース例:利用者編「不安そうな利用者にうまく対応できない」
地域包括支援センターに初めて相談に来た利用者がとても不安そうな様子でいる
会話が止まる人
支援者のAさんは、相談に来た不安そうな利用者に対し、緊張した硬い表情で早口に対応してしまいました。これにより、利用者はAさんの言葉以外の態度(非言語コミュニケーション)に注目し、ますます不安を強めてしまいました。
会話が続く人
会話が続く人の場合、利用者の不安が強いときこそ、穏やかな口調と表情で対応しています。穏やかな態度での言葉かけは、利用者の不安をやわらげ、こちらの言葉が入りやすくなります。また、支援者の穏やかな口調に合わせて利用者の口調も落ち着き、安心して相談に臨むことができます。
5 ケース例:他職種編「他職種から守備範囲外の依頼をされた」
利用者の主治医が訪問介護を希望していると、医療機関の看護師から連絡があった
会話が止まる人
支援者のAさんは、主治医が訪問介護を希望しているという看護師からの依頼に対し、自身の事業所の守備範囲外であったため、「それは私の職務の範疇ではないのでできません。すみません」と、ただ断ってしまいました。この対応は、そこで会話を止めてしまい、利用者の支援が滞るだけでなく、今後の他職種との信頼関係の構築を損ねる可能性があります。
会話が続く人
できないことははっきりと伝える必要がありますが、ただ断るのではなく、「主治医が依頼された理由がわかれば一緒に検討できるかもしれません」といった、ささやかな提案を添えることが重要です。
次の支援につながるような提案により、依頼した他職種と信頼関係を育むことができ、利用者支援を前に進めやすくなります。
もっと知りたい方に! おすすめ書籍
本記事の内容は、下記書籍の内容をもとに編集・作成しております。