こども性暴力防止法施行準備検討会
2025/07/24

第4回こども性暴力防止法施行準備検討会について紹介します。
こども性暴力防止法施行準備検討会について
「こども性暴力防止法施行準備検討会」では、こどもへの性暴力が、その権利を著しく侵害し、生涯にわたって心身の発達に深刻な影響を与え得る、絶対に防がなければならない行為であるという理念のもとに令和6年6月に成立した、「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(以下「こども性暴力防止法」)の施行に向けた検討を行っています。「日本版DBS」を導入するための法律としても注目されています。
こども性暴力防止法は、対象となる事業者や従事者が広範かつ多数に及ぶこと、また、事業者や地方公共団体に事務負担が生じることを考慮し、可能な限り早期の施行準備が必要とされました。そこで、学識経験者、若者、保護者、被害者支援者、教育・保育関係事業者など、幅広い層の意見をもとに、具体的な施行事項を検討し、決定することを目的に、令和7年4月に本検討会が設置されました。
この記事では、令和7年6月30日に行われた第4回検討会について解説します。
1.主な検討事項と主な意見
この検討会における主な検討事項としては、次のようなものがあげられてます。
・制度の対象となる事業や業務の範囲の明確化
・民間教育保育等事業者の認定基準と手続き
・早期把握・相談・調査・保護・支援・研修といった安全確保措置の内容
・犯罪事実確認の義務化とその手続きや情報管理措置
中間とりまとめの素案が示された第4回検討会では、事業者や関係者から様々な意見が寄せられています。
・いとま特例(緊急時における犯罪事実確認の猶予)の期間について、事務処理に時間がかかる可能性を考慮し、現行の3か月ではなく6か月の期間が必要である。
・男性育休の取得促進などの背景から、有期雇用契約者が短期間で離職・再任用を繰り返す際の犯罪事実確認の事務負担と金銭的負担の軽減が必要
・情報開示に関しては、学校規模によっては職種単位の情報開示でも個人特定のリスクがあるため、一律に開示を推奨しないことと、情報開示請求者の範囲を限定する必要がある。
・ベビーシッターマッチングサイト事業者については、認定対象であることを明確に示すガイドラインを整備する必要がある。
・体操教室などの講師派遣事業者についても認定対象とすべき など
2.中間とりまとめ素案の内容
「中間とりまとめ素案」では、法の円滑な施行に向けた具体的な対応案が示されています。
制度の対象は、「学校設置者等」(国公立の学校、児童福祉施設、認定こども園など、法律で義務が課される事業者)と、「民間教育保育等事業者」(学習塾、スポーツクラブ、ベビーシッターマッチングサイトなど、内閣総理大臣の認定を受ける事業者)に大別されます。民間教育事業については、技芸や知識の教授を行うこと、標準修業期間が6か月以上であること、対面指導であること、事業者が用意する場所で行うこと、指導者の人数が政令で定める3人以上であること、などの要件が盛り込まれています。
また、対象となる業務範囲も具体的に整理され、教員や保育士などの「教員等」、民間事業者の管理者や指導者などの「教育保育等従事者」が含まれます。
安全確保措置は、主に以下の内容が提案されています。
・ 早期把握:日常的な観察、面談、アンケートの実施、内部での適切な報告。
・ 相談:相談員の選任や窓口の設置・周知、外部相談窓口の周知。
・ 調査:児童等の人権と特性に配慮し、公正かつ中立な事実確認を行う。
・ 保護・支援:被害児童等と加害が疑われる者の接触回避、支援機関の情報提供、相談への真摯な対応。
・ 研修:性暴力防止の基礎知識、性暴力の要因、不適切な行為の範囲、早期発見、相談・報告、被害者支援を含む座学と演習を組み合わせた研修の実施。
犯罪事実確認では、新規採用者、現職者(学校設置者等は施行日から3年以内、認定事業者は認定から1年以内)、および5年ごとの再確認が義務付けられ、特定性犯罪歴がないかを確認します。「いとま特例」児童等と1対1にさせないなどの厳格な措置が求められます。情報管理措置として、取得した情報は厳格に管理され、目的外利用や第三者提供は原則禁止され、漏えい等の重大事態はこども家庭庁へ報告する義務があります。犯罪事実確認で得られた情報は、離職等の日から30日以内に廃棄・消去する義務があります。多くの手続きは「こども性暴力防止法関連システム」を介して行われる予定です。
3.まとめ
これまでの議論を経て「中間とりまとめ素案」が示されました。今後は、この素案をもとに、こどもの意見聴取や事業者等からのヒアリングを行い、今秋には「中間とりまとめ」が公表される予定です。
その後、年内を目途に内閣府令等の下位法令やガイドラインを策定し、令和8年12月25日のこども性暴力防止法施行に向けて、具体的な準備が進められます。