介護に従事する外国人に向けた やさしく学べる介護の知識・技術
2025/07/22

日本の介護現場で働くうえで不可欠な、利用者の尊厳を守り、自立を支援するための基本的な考え方や具体的な技術について、介護職種の技能実習生や特定技能外国人にもわかりやすく解説します。
【記事の監修者】
甘利 庸子(あまり ようこ)
介護支援専門員、薬剤師、臨床検査技師
のぞみグループ代表(社会福祉法人のぞみ福祉会理事長、株式会社エスポワール代表取締役、株式会社シルバーケアのぞみ代表取締役、株式会社のぞみ代表取締役、一般社団法人海外介護士育成協議会代表、介護施設協同組合代表理事)
1 日本の介護って?
日本では2000年に介護保険制度が始まりました。これは、高齢者の介護を社会全体で支える仕組みであり、誰もが人生の最後まで自分らしく生活できるように、さまざまな介護サービスが用意されています。日本の介護において最も大切な考え方の一つは、「自立支援」です。これは、利用者が「自分らしく」生きていけるように支援するという考え方です。
介護保険制度には、大きく分けて居宅サービス、施設サービス、地域密着型サービスの3種類があります。利用者の要介護度や要支援度、そしてその状態によって利用できるサービスの範囲(金額)が決められており、ケアプランに基づいてサービスが提供されます。
2 自立支援の例
自立支援とは、介護が必要な利用者に対して、自分でできることはやっていただき、少しでもできることが増えるように助けることです。介護職がなんでもやってしまうことは、利用者の持っている力を奪い、生きる意欲を失わせてしまうことにつながりかねません。
食事介助の例を通して、自立支援の考え方を理解しましょう。
食事介助の例
・自分で食べることが大変そうだからといって、介護職員が全部食べさせてしまう
手の筋肉が弱まり、着替えやトイレなどもできなくなっていく可能性があります。また、脳への刺激も減少し、ぼんやりする時間が増えることにもつながります。
↓
・スプーンを手に持たせてあげるなど、自分で食べられるように支援する
自分のペースでゆっくりとおいしく食事ができ、自信をもつことができます。また、指・手・腕を使うことで、筋肉や体力の衰えを防ぐ効果も期待できます。
3 報告・連絡・相談(ホウ・レン・ソウ)
「ホウ(報告)・レン(連絡)・ソウ(相談)」は、介護の現場でも非常に重要な基本原則とされています。
報告(ホウ)
依頼された仕事が終わった際に、その結果を責任者や同僚に責任を持って伝えることです。何か異常があった場合は、すぐに責任者に報告します。
連絡(レン)
自分の考えや、チーム全体で共有すべき重要な情報を、電話、FAX、メールなどを通じて相手に伝えることです。連絡を行った際は、後で確認できるよう日時、連絡方法、相手の氏名、内容を記録に残しておくようにしましょう。
相談(ソウ)
仕事の進め方や業務上の悩みなど、困ったことや判断に迷うことがあれば、周囲の人に助けを求めることです。わからないことを恥ずかしがらずに「教えていただけますか?」と聞く姿勢が大切です。
4 訪問介護のマナー
訪問介護は、利用者が住み慣れた自宅で生活を続けられるように、訪問介護員がその人の自宅へ行き、介護サービスを提供するものです。利用者との間に深い信頼関係を築くことが、訪問介護において最も大切です。
訪問介護を行う際のマナー
・訪問時間は守り、身だしなみは整えるようにします。
・訪問時と、退出時は必ずあいさつをします。
・体調不良など、異常を感じた場合は、すぐにサービス提供責任者へ報告します。
・利用者の物を使うときは、必ず利用者に確認します。
・勝手に物が置いてある場所などを変更してはいけません。
・サービス提供の最後には、窓やドアが閉まっているか、ガスや電気が消されているかを確認します。
・「いつもありがとうございます」などの感謝の気持ちを利用者に伝えます。
・常に利用者の立場に立って、思いやりのこころをもって対応します。
介護職員は、利用者の心身のしくみを理解したうえで、その人の尊厳を守り、自立を支援することが基本です。
介護は、単に「できないこと」を代わりに行うことではなく、加齢や障害があっても利用者自身がもっている力を活かし、自分らしい生活を続けていけるよう支援することです。利用者一人ひとりの生活習慣や、何がその人にとって大切であるかをしっかりと理解するようにしましょう。
もっと知りたい方に! おすすめ書籍
本記事の内容は、下記書籍の内容をもとに編集・作成しております。