不登校の子ども、どうやってサポートする? 先生「だから」できることに着目!

2025/05/30

新学期が始まって約2か月。不登校の子どもへの支援にお悩みではありませんか?

近年、小学校、中学校ともに不登校の子どもの数が増加しており、2023年度には34万6482人と過去最多となりました。小学校での出現率は2.1%、中学校では6.7%です。つまり、小学校では2クラスに1人、中学校では1クラスに2人は不登校の子どもがいるという状況です。

文部科学省からは、不登校の子どもへの支援について「よりきめ細やかに、ていねいに、取り残すことなく、そして社会的自立を目指す」という方針が示されています(令和元年10月25日元文科初第698号 「不登校児童生徒への支援の在り方について」 、令和5年3月
「COCOLOプラン」 等)。

現場の先生は、膨大な業務を抱え、慌ただしい日々を過ごしていることでしょう。この方針のように「もっとしっかりと不登校の子どもに向き合いたいけれど……」と歯がゆい思いをしていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、不登校の子どもに先生ひとりで対応しようとするのではなく、先生だからこそできる支援に焦点をあて、専門家とも連携していく支援のあり方を紹介します。


1 不登校の「本当の」理由って? 子どもはどう思っているの?

そもそも不登校とは、子どもが「学校に行きたくない」「学校に行くことができない」という思考に基づく行動であるととらえることができます。しかし、これらはすべて子どもに原因があるというわけではありません。不登校は、子ども本人側の素因(障害や疾患による特性、発達過程、性格など)と、学校や家庭といった環境側の素因、そしてそれらの相互作用によって派生する状態の一つとして考えられます。

 

不登校の要因やきっかけについて、先生、保護者、そして子ども自身の考えるところには、三者三様のギャップがあるようです。

 

①先生の考え

「無気力・不安」「生活リズムの乱れ」「友人関係」「親子の関わり方」「学業の不振」など、多くの先生は不登校の要因の大部分が子ども本人や家庭にあると考えている傾向がみられます。

 

②保護者の考え

保護者は子どもの学校生活が見えにくいため、「友人との関係(いやがらせやいじめ、けんかなど)」「先生との関係(先生が怒る、注意がうるさい、体罰など)」というように「学校で何かあったのでは」と考えることが多いようです。

 

③子どもの考え

子どもは、「学校へ行こうという気持ちはあるが、身体の調子が悪いと感じたり、ぼんやりとした不安があったりした」「いやがらせやいじめをする生徒の存在や、友人との人間関係」「無気力でなんとなく学校へ行かなかった」などを理由の上位にあげています。

 

しかし、子ども自身が不登校の要因やきっかけを把握できていなかったり、うまく言語化できなかったりするケースも少なくありません。子どもに理由を問い詰めることは、「自分のことがわからないなんて変なのかな」と思わせてしまう可能性があるため注意が必要です。

 

学校に行けない、行くのがつらいと感じている子どもたちは、他人の目を気にする対人不安が強い傾向がみられます。自室は安心できる安全地帯となり、それ以外は不安な場所だと思ってしまうことがあります。

 

「学校に行かない時は現実逃避でスマホやゲームばかりしていた」という子どもがいますが、この「現実逃避」という言葉から、これは不登校による心理的な苦痛(葛藤、恥意識、罪悪感など)を避け、心の安定を保とうとする防衛機制の一種とみることができます。このような行動は、子どもが必死に心を守ろうとした結果であるととらえることが大切です。


2 エピソードから考える 先生だからできるサポート!

不登校のパターンは100人いれば100通りあるといわれるほど多様です。しかし、さまざまな状況におかれた子どもの声に耳を傾けることで、先生だからこそできるサポートのヒントが見えてきます。

 

①授業がわからない子ども

小学2年生のAくんは、授業中、先生の話がよくわからず、退屈に感じています。先生にはちゃんと話を聞いていないと怒られますが、「なんでいつも僕ばかり怒られるのかわからない」と思っています。音楽会では、同じ楽器の子に強く注意されてしまい、練習が嫌になって学校を休んでしまいました。担任の先生はいつも「反省しなさい」と怒りますが、どうして怒られているのかわからないと感じています。

 

> Aくんのような子どもに先生ができること

・子どもが好きなことや得意なことに注目し、肯定的にかかわる。
・理由がわからず困っている子どもには、なぜ怒られているのか、どうすればよいのかなどを子どもにわかるように優しく伝える。
・指示や注意の仕方、声のトーンなどを工夫する。
・子どもが安心して話を聞いてもらえる居場所や存在とのつながりを支援する。

 

②昼夜逆転で体調不良を訴える子ども

中学2年生のBさんは、最近学校に行きたくない思いが強く、毎日夜更かしをしてスマートフォンを眺めています。朝になると、お母さんが不機嫌な声で「もう時間だよ」「今日はどうするの」と起こしに来るのですが、「お腹が痛いから休む」と答えます。お母さんが部屋を出ていくと、Bさんは少し安心します。最近は、毎朝この繰り返しです。

 

> Bさんのような子どもに先生ができること

・子どもの朝のつらさや不安感を理解する。
・子どもの状態に応じて、昼から活動できる場を用意したり、午後から始まるプログラムを検討したりするなど、環境の調整を図る。
・仮病と決めつけず、「きついね」「しんどいね」「心配しているよ」とつらさに寄り添う言葉を伝える。
・「先生はあなたの言うことを信じているよ」というメッセージを伝え、子どもとの信頼関係を損なわないようにする。

 

③ヤングケアラーとなっている子ども

中学3年生のCくんは、パートで働いている母親と、認知症があり介護が必要な祖父の3人暮らしです。ふだんは母親が祖父の介護をしていますが、母親は精神疾患があるため、体調を崩して仕事も家事もできなくなることが多く、Cくんが代わりに学校を休んで家にいることが続いています。学校の勉強にもついていけませんが、Cくんにとってはこれがあたりまえの生活となっていて、家族のことを考えると、高校への進学を諦めることもしかたないと思っています。

 

> Cくんのような子どもに先生ができること

・子どもが大人の代わりに家事をしたり、家族の世話をしたりすることはあたりまえのことではないことを伝える。
・子どもの不登校だけでなく、ヤングケアラーとなっている背景にある家族全体の問題を支援する視点を持つ。
・福祉や医療などの専門職や他の支援機関と積極的に連携する。
・保護者も支援を要する当事者であることを認識し、その心身の疲労に配慮しながらていねいにかかわる。

 

先生は教育の専門家として、教育環境の整備や、不登校の子どもの得意なこと・強みを伸ばす支援に取り組むことが重要です。一方で、心理や社会福祉など先生の専門外の部分については、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーといった専門家へ確実につなぎましょう。先生が不登校支援の中心を一人で担う必要はなく、専門家と役割分担をしながら連携していくことが求められます。


3 頼れる地域資源

不登校の子どもの多くは、欠席と出席を繰り返す「五月雨型不登校」であり、登校できた時に安心して過ごせるような校内の環境整備は重要です。保健室は養護教諭が子どもの心身の健康を守る場であり、安心して過ごせる場の一つになり得ます。また、校内教育支援センター(サポートルーム)も増加しており、個別や小集団での支援、ICTを活用した学習環境などが整備されています。

 

また、学校外にも不登校の子どもを支援するためのさまざまな資源や制度があります。

・教育支援センター(適応指導教室):教育委員会が設置する公的な施設で、学校生活への復帰支援などを行います。
・フリースクール:民間の施設で、学習活動、教育相談、体験活動など多様な活動を行っており、独自のノウハウを持つところも多くあります。学校との連携が進み、一定の要件を満たせばフリースクールでの学習が学校の出席扱いになる場合もあります。
・通信制高校、定時制高校、単位制高校、サポート校:中学校卒業後の進路の選択肢として重要です。
・医療・保健・福祉・労働サービス:病院(精神科など)、児童相談所、生活困窮者自立支援機関、ハローワークなど、子どもの心身の不調や家庭の課題、将来の就労などに関する専門的な支援を提供します。保護者の養育態度や家庭の生活が不安定な場合など、先生の業務の範疇ではない支援が必要な場合に、これらの専門家につなぐことが重要です。
・その他:不登校の子どもを対象とした学習塾や、家庭学習ツールなども存在します。

 

不登校支援においては、「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、子どもが自らの進路を主体的にとらえ、社会的に自立することを目指す必要があります。よって、この場合に「学校」は、在籍校だけでなく、学びの多様化学校(不登校特例校)、教育支援センター、フリースクール、自宅での学びなど、教育制度としての学校や多様な資源全体を円環的につなぎ、複合的・複線的な支援プロセスで考えるべきです。

 

先生をはじめ、かかわっているすべての支援者が連携し、子どものペースに合わせて、焦らずに一歩ずつ進めていきましょう。


もっと知りたい方はこちら!

本記事の内容は、下記書籍の内容をもとに編集・作成しております。

 

先生のための不登校対応サポートブック

著者:原田直樹=著
判型:B5
ページ数:204頁
定価:2,200円(税込)

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わたしの声をきいて2 学校に行くのがつらい子どもの気もち

著者:石井しこう=監修
判型:AB
ページ数:36頁
定価:3,520円(税込)

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