子どもたちといっしょに考えたい 支援や配慮が必要な子とのかかわり方

2025/05/19

さまざまな背景をもちながら生活している子どもたちの「声」から、園や学校でのかかわり方を考えます。

学校や保育園・幼稚園などには、さまざまな家庭で育った個性豊かな子どもたちがいます。そのなかには、外国にルーツのある子ども、不登校や登校しぶりのある子ども、ヤングケアラー、病気や障害のある兄弟姉妹がいる子ども(きょうだい児)、日常生活で医療的ケアが必要な子ども(医療的ケア児)など、支援や配慮が必要な子どもたちもいることでしょう。そうした子どもたちは、園や学校生活のなかで、さまざまな困りごとや悩み、そして喜びを感じています。

 

子どもたちが、「世の中にはいろいろな子がいるんだ」ということを知るのは、多様性が尊重される時代のなかで、共に生きていくうえで、とても大切なことです。
しかし、多様な背景や事情を抱えていても、そのことを周りの友だちや大人にうまく伝えられない子どももいるでしょう。また、大人や先生であっても、自分と異なる環境にある人のことを子どもたちに伝えることはむずかしいと感じる人もいるでしょう。

 

そこで、ここでは5つの多様さをもつ子どもたち、「外国にルーツのある子ども」「不登校・登校しぶりのある子ども」「ヤングケアラー」「きょうだい児(病気や障害のある兄弟姉妹がいる子ども)」「医療的ケアが必要な子ども」について、子どもたちの「声」をもとに紹介してみたいと思います。子どもたちに伝えるときに、ぜひ参考にしてみてください。


1.外国にルーツのある子ども

「外国にルーツのある子ども」とは、次のような子どもたちをいいます。
①外国籍の子ども
②日本国籍(または二重国籍)だが、両親のどちらかが外国出身である子ども
③日本出身の両親でも外国で育ったなどの事情で日本語が第一言語ではない子ども
④無国籍の子ども など
外国にルーツのある子どもたちは、言葉や文化、習慣の違いから、園や学校生活で困ったり、周りの友だちとのかかわりでむずかしさを感じたりすることが少なくありません。また、見た目の違いからジロジロ見られたり、心ない言葉をかけられたりして、傷つくこともあります。

 

①こんなことで困っているよ

・学校でみんなが話している言葉がわからなくて、うまくお話できないことがあるよ。
・見た目がちょっと違うから、じろじろ見られたり、指をさされたりして、いやな気持ちになったんだ。

 

②悲しかったこと・うれしかったこと

・勇気を出して日本語を話してみたのに、「へんな日本語!」って笑われるのは、つらいな。
・わたしの国のことや、わたしの話を聞いてくれると、とってもうれしい。

 

大人から周りの子どもたちに伝えられること:言葉や習慣の違いを「面白いね」「すてきだね」と伝えてみましょう。また、朝の会や授業のなかでその国のあいさつの言葉を学んだり、その国のことをいっしょに調べたりするのもよいでしょう。


2.不登校・登校しぶりのある子ども

学校に行きたくても行けない、行くのがつらいと感じている子どもたちもいます。授業についていけない、先生に怒られるのがいや、友だちとの関係がうまくいかない、大きな音や人の声が苦手など、さまざまな理由で学校から距離を置いている場合があります。

 

①こんなことで困っているよ

・みんなといっしょだと、先生が話していることがよくわからなくて、授業がつまらないんだ。
・大きな音や、たくさんの人がおしゃべりしている声で、胸がざわざわしてつらいときがあるよ。

 

②悲しかったこと・うれしかったこと

・みんなと違うことをしちゃって、怒られたときは悲しかった。
・わたしの話を聞いてくれたり、困っていることをわかろうとしてくれたりすると、安心するんだ。

 

大人から周りの子どもたちに伝えられること:学校に毎日来られないお友だちは、家で身体を休めているから大丈夫だと伝えましょう。元気になったらまたいっしょに過ごせるようになります。なぜ困っているのかを本人に代わってわかりやすく説明することも、周りの子の理解につながります。


3.ヤングケアラー

「ヤングケアラー」とは、大人に代わって家事をしたり、小さい弟や妹、祖父母、病気・障害のある家族の世話をしたりしている子どもたちのことです。こうした子どもたちは、自分の時間をもてなかったり、友だちと自由に遊べなかったりすることがあります。また、家族のことで常に心配な気持ちを抱えている場合もあります。

 

①こんなことで困っているよ

・弟や妹のお世話をしなきゃいけなくて、友だちと遊んだり、宿題をしたりする時間がないことがあるよ。
・おうちの人の病気が心配で、学校に行っている間も気になるんだ。

 

②悲しかったこと・うれしかったこと

・友だちと遊ぶときに弟や妹を連れていくと、「また連れてきたの?」って顔をされて、ちょっと困るんだ。
・おうちの人のことで困っているんだと話したら、聞いてもらえて、ほっとしたよ。

 

大人から周りの子どもたちに伝えられること:お友だちが家族のお世話で忙しいということを説明し、理解を促しましょう。また、宿題を手伝ったり、少しの間でも遊べる機会をつくったりするサポートが考えられます。周りの子どもたちが、その子に「何か困っていることはない?」「いつでも話してね」などと話しかけることも、安心できる環境づくりにつながります。


4.きょうだい児

病気や障害のある兄弟姉妹がいる子どもを「きょうだい児」といいます。きょうだい児は、病気や障害のことがよくわからなくて不安な気持ちを抱えたり、兄弟姉妹に両親や周りの大人の関心が向きがちでさみしさを感じたり、周りの目を気にしてがまんしすぎてしまうことで自分の思いややりたいことがわからなくなったりすることがあります。

 

①こんなことで困っているよ

・病気や障害のある子のお世話で、お母さんやお父さんがたいへんそうで、自分のことを見てもらえないのがさみしいと感じることがあるよ。
・周りの人に、家族のことで「たいへんだね」「かわいそう」って言われると、モヤモヤする。

 

②悲しかったこと・うれしかったこと

・お出かけ先で妹が急に怒り出すと、家に帰ることになって、最後まで楽しめないんだ。
・自分の話を聞いてくれたり、自分の好きなことや得意なことをほめてもらえたりすると、とってもうれしいよ。

 

大人から周りの子どもたちに伝えられること:きょうだい児にとっては、周りの子どもと同じように話したり遊んだりできる友だちがいることが大切です。また、病気や障害のある子をからかったり、きょうだい児に無理に話を聞こうとしたりしないよう、当事者である子どもの気持ちに寄り添ってかかわることが大切です。


5.医療的ケアが必要な子ども

日常生活で医療的なケアが必要な子どもたちを「医療的ケア児」といいます。例えば、血糖値を測って調整したり、呼吸器を使ったり、胃ろうで栄養をとったりと、さまざまなケアが必要な場合があります。保護者や看護スタッフが同行していたり、活動を制限されたりすることもあります。

 

①こんなことで困っているよ

・体のパワーをコントロールするために、授業中でも甘いものを食べなきゃいけないときがあるけど、「おやつ食べてずるい」って言われないか心配。
・息をするのがちょっとむずかしいから、機械を使って空気を肺に送っているよ。チューブが外れると息ができなくなっちゃうから、触らないでね。

 

②悲しかったこと・うれしかったこと

・人工呼吸器をつけているけど、知らない人にじろじろ見られたり、ひそひそ話をされたりするのは、つらいな。
・みんながわたしの病気やケアのことを知ってくれて、困ったときには助けてくれるとわかったから、安心した。

 

大人から周りの子どもたちに伝えられること:医療的ケアが必要な理由はさまざまですが、「体の中や手足にうまく働かないところがあるから薬や機械で助けている」と説明するとわかりやすいでしょう。見た目には違うところがあっても、好きなものを食べたり、友だちと遊んだりしてうれしいこと・楽しいことがあるのはみんなと同じであることも伝えましょう。


まとめ

さまざまな状況にある子どもたちも、周りの子どもたちと同じように、友だちとのかかわりのなかで喜びや悲しみを感じています。ですから、周りの子どもたちが本人の思いを理解してかかわることで、安心したり嬉しくなったりする場面がたくさんあると思います。

 

私たち大人も、こうした子どもたちのことを理解して、子どもたちが互いの違いを認め合い、支え合える、より豊かな園生活・学校生活を送ることができるように努めていきたいですね。

 

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本記事の内容は、下記書籍の内容をもとに編集・作成しております。


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わたしの声をきいて5 医療的ケアが必要な子どもの気もち

著者:藤木和子、柳田めぐみ=監修
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