活動に集中できる!クラスづくりのコツ

2025/04/18

「気になる子」のいるクラスで、みんなが楽しく活動できるようにするためのコツをお届けします。

4月から新たなクラスを受け持ち、「「気になる子」が多くて、毎日ザワザワしてしまう……」「いつも同じ子に手がかかって、クラス全体を見きれない……」といったお悩みをお持ちの方はいませんか。今回は、「気になる子」も含めたクラス全員が活動に集中できるようになるクラスづくりについて、お伝えします。


1 子どもとの関わり方を振り返ろう

クラスの雰囲気を落ち着かせ、活動に本気で取り組める子どもたちを育てるには、まず保育者自身の子どもたちとの関わり方を振り返る必要があります。

友達との遊び、壁の掲示物など、目の前のことに気をとられて次の行動に移れない「刺激反応で動いてしまう園児」が多いクラスでは、個別対応をすればするほど、「気になる子」が増えていく悪循環が生まれてしまいます。そこで重要なのが、子どもたちが自ら考え、行動するために必要な力である「実行機能」を育む視点です。

ふだん、一人ひとりの子どもを大事にしたい、嫌われたくないと思うあまり、つい求められるがまま抱っこに応じたり、困っていそうな子どもにすぐに手助けをしたりしていませんか?

「実行機能で動ける園児」を育てるためには、保育者は「喜ばせる人」ではなく、「プロデュースする人」へと変わる必要があります。保育者が直接刺激を与えたり、楽しませたりするのではなく、子どもたちが活動そのものに興味を持てるような環境を整えることが大切です。


2 場面別「動ける」モードへの切り替え方

「実行機能で動ける園児」を増やし、全員がいきいきと過ごせるクラスをつくるためには、場面ごとに子どもたちが自ら「動ける」モードに切り替えていけるような意図的な働きかけが必要です。ここでは、一日の流れに沿って5つの場面での対応をご紹介します。

 

8:30 登園

登園直後から、園児が「自ら動ける」モードに切り替えるための環境設定と保育者の対応が重要です。連絡帳の提出場所や持ち物の収納場所を「いつもの場所にいつものように」することで、園児は戸惑うことなく行動できます。保育者はすぐに指示するのではなく、園児の自発的な動きを見守り、気づきを促すことが大切です。

 

ホワイトボードを活用し、一日のスケジュールや当番活動を示すことで、園児は自ら情報を得ようとし、見通しをもって行動できるようになります。当番活動は、園児の主体性を育み、「自分で気づいて動く」能動的な姿勢を養います。

 

9:00 朝の会

朝の会は、一日の活動を左右する重要な時間です。ためらわずに準備的な活動(歌、クイズなど)を開始し、園児の意欲を高めます。気になる子には無理強いせず、安心して過ごせる場所を保障します。あいさつ当番の園児を信じて任せることで、責任感と主体性を育てます。声かけや個別対応に頼らず、園児が自ら参加したくなるような活気ある朝の会を目指しましょう。

 

10:00 遊び(運動・製作・園庭)

運動遊びでは、詳しい説明は初日のみにとどめ、「はい、スタート」で活動を開始し、園児のワクワク感を大切にします。細かいルールは簡潔に示し、言葉での説明よりも、具体的な手がかり(枠の色を変える、道具を使うなど)を示すほうが、園児は理解しやすくなります。

 

製作遊びでも同様に、スタートのタイミングが重要です。手順をホワイトボードなどに提示し、園児が自分で作りきれるように促します。数日かけて完成させる製作を取り入れ、計画性(プランニング)の力を育てるのもよいでしょう。

 

園庭遊びでは、「室内から園庭」「園庭から室内」への動きをルーチン化し、終了時刻を意識させる工夫(当番活動、集団遊びなど)を取り入れます。保育者は、園児の意欲につながる活動を考え、園児が目的意識をもって遊びに取り組むように促します。

 

11:30 昼食

昼食の準備では、それぞれの園児に役割を与え、自ら準備する動きを重視します。また、「ごちそうさま」の時刻を示すと、時間内に食べきる意識が育ちます。園児の様々な要求に対しては、対応方針を一貫させることが重要です。

 

13:00 午睡

午睡は、「眠る」という活動を通して、園児の自己モニタリング力と自己コントロール力を養う機会です。昼食から午睡までの手順をていねいに伝え、ルーチンとして定着させることが大切です。眠りのモードに入る際には、「甘えさせる」対応は可能な限り控えます。午睡後は、遊びなどを通して「幼児」から「園児」へと気持ちを切り替えられるようにサポートしましょう。

 

いずれの場面でも共通して重要なのは、保育者からの指示や声かけは最小限に留め、立ち位置や視線、表情でメッセージを送ることで、子どもたちが自ら気づき、考え、行動できるような環境を整えることです。

 

3 子どもが変わり始めたら……?

園児が「動ける」モードで活動できるようになってきたら、細かい間違いをそのつど指摘するのではなく、園児が自ら気づき、修正する力を育てることを意識します。

また、園児には、あらかじめ気づいて準備する「入口タイプ」と、必要になってから気づく「出口タイプ」がいます。出口タイプの園児にも「自分でできる」という意識をもてるような関わり方を心がけましょう。

園児のルーチンとなった行動からは、環境の「構造化」(マークや矢印など)は取り除いていきます。「全体と自分」を振り返る力を育てるために、全体の場での個別対応は避け、園児同士が互いに意識し合えるような働きかけを行います。

気になる子が苦手さを感じるような、園児の想像力に任せた指示や声かけを無意識に行っていないかを振り返り、具体的な選択肢を示すなど、応答しやすい伝え方を心がけることも大切です。


最後に

保育者は「指示・注意・説明」で情報を提供するだけでなく、園児たちが自ら行動するために必要な情報を得ようとする力を育てることが重要です。このようなクラスづくりを通して、園児一人ひとりが活動に本気で取り組み、「できた!」という達成感を味わえるように、日々の保育を実践していきましょう。


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本記事の内容は、下記書籍の内容をもとに編集・作成しております。