【保育士・支援者向け】「里親」と「特別養子縁組」の違いって? 制度の基本と「子どもの心」に向き合う視点

2026/10/01

保育や子育て支援の現場で、「里親」や「養子縁組」という言葉に触れたり、身近な人から質問されたりしたことはありませんか? 制度の決定的な違いから、子どもを迎えた後の「心の理解」、地域のサポート体制まで、子どもに携わるプロとして押さえておきたいポイントを分かりやすく解説します!


伊藤嘉余子(いとう かよこ)

 

大阪公立大学学長補佐/現代システム科学研究科教授。博士(社会福祉学)、社会福祉士、保育士。専門は子ども家庭福祉、社会的養護。2018年に養育里親として登録し、短期間子どもを家庭に迎えるかたちで里親としても活動。認定NPO法人CAPセンター・JAPAN理事長。著書に『はじめての里親・養子縁組 週末の預かりから特別養子縁組まで』(中央法規出版)など。


保育園や子育て支援の現場で働くなかで、多様な家族のかたちに触れたり、ご自身のキャリアやライフプランのなかで「里親」や「養子縁組」という選択肢が気になったりした経験はないでしょうか。

 

また、保護者や身近な知人から「福祉の仕事をしているなら教えてほしい」と尋ねられる機会もあるかもしれません。子どもにかかわる専門職として知っておきたい「里親制度」と「特別養子縁組」の基本と、子どもに向き合う視点を整理して解説します。


子どもに携わるプロとして整理しておきたい「2つの制度」の違い

両制度の最も大きな違いは、「誰のための制度か」という目的と、「法的な親子関係が生じるか」にあります。
里親制度は、さまざまな事情により実家庭で暮らせない子どもを一時的・継続的に家庭で養育する「児童福祉のための制度」です。一方、特別養子縁組は実親との法的な関係を終了させ、養親と実子と同じ永続的な家族となる制度です。
専門職としての整理や、身近な人への解説のヒントとして以下の比較表をご活用ください。
 

比較項目 里親制度(養育里親など) 特別養子縁組
根拠となる法律 児童福祉法 民法
制度の主な目的 保護を必要とする子どもの養育(福祉) 子どもに永続的な温かい家庭を提供する
法的な親子関係 生じない(子と実親との法的関係が継続) 成立する(子と実親との法的関係は終了)
戸籍の表記 実親の戸籍のまま 養親の戸籍に入る(長男・長女等と表記)
住民票の表記 同居人、縁故者など 子(実子と同じ)
子どもの対象年齢 0歳〜18歳(延長あり) 原則15歳未満
経済的支援 里親手当や生活費などの公的支給あり 縁組成立後の支給なし

子どもを迎えた後のケア

制度や手続きの知識以上に大切なのが、「子どもを家庭に迎えた後に生じる心の変化」への理解です。

 

新しい環境に入った子どもは、大人の愛情を確かめるために反抗的な態度やわがままを繰り返す「試し行動」や、過去の分離体験によるトラウマ、愛着形成の難しさに直面することが少なくありません。日頃から子どもの発達や行動に向き合っている保育者、支援者であれば、こうした葛藤の重みをより深く理解できるはずです。

 

家庭での養育が始まった際に必要なのは、「完璧な親を目指さなくていい」「家庭だけで問題を抱え込まず、地域で育てる」という視点です。子どもの行動の背景にある「心の声」を理解し、里親や養親が孤立しない環境づくりが欠かせません。


子どもと家庭を温かく支える「地域の応援団」

里親や養親が安心して子どもを育てるためには、地域の専門機関との連携が重要です。


●児童相談所:制度の説明や研修、相談対応の基本窓口。
●里親支援センター(フォスタリング機関):養育の悩み相談を受ける。家庭訪問サポートや研修などを受けたいときにも相談可能。
●里親会:里親同士のコミュニティ形成・サポート。

 

保育や子育て支援の現場にいる専門職が制度の正しい知識や子どもの理解を深めておくことは、困っている保護者や里親家庭を温かく見守り、地域で子どもを育むための大きな力となります。


もっと詳しく知りたい方はこちら

・書名:『はじめての里親・養子縁組 ―週末の預かりから特別養子縁組まで』
・著者:伊藤嘉余子
・判型/頁数/定価:A5判/176頁/1,980円(税込)

「制度の全体像を知りたい」「自分たちにもできるか考えたい」という方に向けた総合ガイド。制度の基本解説やセルフチェックをはじめ、「試し行動」など子どもの心の理解や実際の体験談まで網羅しており、子どもに携わる専門職の学びの一冊としても役立ちます。