子どもの感性をひらく「自然との協働探究」とは? 保育で大切にしたい「センス・オブ・ワンダー」
2026/07/16
子どもの感性をひらく「自然との協働探究」。五感を使って自然と対話し、共に未来を創造する保育のヒント。
乳幼児期の園生活において、戸外で自然に触れる時間は子どもたちにとってかけがえのない豊かなひとときです。近年、保育の現場では単に「自然の中で遊ぶ」だけでなく、子どもたちが自然の不思議に目を凝らし、自ら問いを立てて深めていく「自然との協働探究」が注目を集めています。
人間中心の視点を超えて、自然を「ともに生きるパートナー」としてとらえ直す保育の実践には、どのようなヒントが隠されているのでしょうか。
子どもの目線がとらえる「小さな自然」と驚き
大人は目的地へ向かって急ぎ足になりがちですが、子どもたちは地面に近い視線で、寝転んだり、覗き込んだりしながら、全身の諸感覚をフルに働かせています。
大人の目には留まらない小さな種、輝く砂粒、虫の小さな動き。これらを見つけては、「驚き」や「不思議」を感じる瑞々しい感性こそが、環境教育の原点である「センス・オブ・ワンダー」です。
「わけない」あり方で世界を丸ごと受け止める
子どもたちは、感じることと思考すること、知ることと表現することを切り離していません。
●風の心地よさを肌で感じる
●虫の動きの不思議さに驚く
●なぜだろうと頭で考える
●言葉や身体、描画で表現する
これらが一つの経験の中で溶け合うように存在しています。この「感覚と認識を分けない」豊かなあり方こそが、自然との深い結びつきを生み出す土台となります。
自然は変化し、私たちに「提案」してくる
「自然との協働探究」において、自然は単なる活動の素材や観察の「対象」ではありません。刻一刻と表情を変え、子どもたちに語りかけてくる「主体性をもった存在」です。
例:カラスノエンドウが出会わせた、子どもたちの対話
ある園の園庭に生い茂ったカラスノエンドウ。子どもたちは瑞々しい緑色のサヤだけでなく、時間が経って黒く変化したサヤを見つけました。 「病気になっちゃったのかな?」「夜になったから黒くなったんだよ!」「本当はこっちが赤ちゃんだったのかも」 自分たちが知っている緑色の姿と比較しながら、時間の経過や変化について、子どもたち自身の手で瑞々しい仮説が紡がれていきます。

自然からの呼びかけに応答する保育
滑りやすい泥、揺れる木の枝、光を反射する水たまり。自然は常に「どうかかわる?」と子どもたちに控えめな提案を投げかけています。保育者はその姿を丁寧に見取り、子どもたちの驚きに寄り添いながら、ともに問いを深めていく「伴走者」としてのマインドが求められます。
保育の質を高める「環境の再提案」のコツ
子どもたちの探究をさらに深め、好奇心の旅へと誘うためには、保育者による「環境の再提案(メディアの可視化)」が効果的です。
1. 「見え方」を変える道具の導入
ただ地面の砂や土を触るだけでなく、ウッドデッキに白い模造紙を敷き、その上に砂を置いてみます。すると、指でなぞった跡や、砂利をどけたときに見える白さが面白くなり、子どもの指先は「なでる」「つまむ」「痕をつける」といった多様な動きを始めます。さらに、ライトテーブル(ひかり)を組み合わせることで、透き通る光と影の美しさに没頭し、探究の時間が驚くほど持続します。

2. 多角的な表現を支えるアトリエの設定
言葉だけで表現するのではなく、身体全体を使ったアプローチも大切です。 たとえば、育てている「綿(わた)」の種が土の中でどんな気持ちだったかを表現するために、白い布の舞台をOHPの光で照らす空間を用意します。子どもたちは指先を丁寧に折りたたんで種を表し、一気に両手を開いて新芽の生命力を表現します。
家族や地域コミュニティへと広がる「探究の循環」
自然との協働探究がもたらすすばらしい実りは、子どもたちの学びだけに留まりません。ドキュメンテーション(記録)などを通じて子どもの眼差しを発信していくことで、保育者、そして保護者や地域社会の価値観をも更新していきます。
保護者が「子どもが今、園で一番夢中になっている自然遊び」を一緒に体験する機会を設けると、大人たちからも驚きの声が上がります。
●「ただの砂遊びだと思っていたけれど、粒の大きさや感触の違いをこんなに研究していたんだ」
●「子どもの眼差しに誘われて、自分も日々の暮らしの中で空を見上げることが多くなった」
子どもたちの問いが大人を揺さぶり、大人自身もまた自然と出会い直していく。この「子どもと大人の協働の循環」こそが、人間を生態系の一部としてとらえ直し、持続可能な未来をともに創造していくための確かな一歩となります。
もっと詳しく知りたい方はこちら
子どもたちの「なぜ?」に大人はどう応答し、どのような環境をデザインしていけばよいのでしょうか。足元の自然から立ち上がる豊かなプロジェクト保育の全貌を、美しい写真やウェブ図とともに体系化した一冊です。これからの保育の未来を拓く新しい視座に出会えます。
関連書籍のご紹介

書名: 自然を協働探究する保育――センス・オブ・ワンダーがひらく、持続可能な未来
監修: 秋田喜代美、松本理寿輝
編著: 東京大学大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センター、まちの保育園・こども園
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