「何度言っても伝わらない…」 保育現場で一斉指示が伝わらない子どもへ「言葉」が届く3つの工夫
2026/03/06
「わざと」ではない? 指示が届かない本当の理由
保育現場で、保育者が「お散歩に行くから、みんな準備して」と一斉指示を出します。でも、一人だけ動けずにぼんやりしていたり、違うことを始めたりする子どもがいます 。何度も同じことを言わなければならない状況に、保育者は「わざと聞かないの?」「ふざけているのかな?」と疲弊してしまうこともあるでしょう 。
しかし、発達が気になる子どもの場合、そこには本人なりの明確な「理由」が隠されています 。指示に従えないのは経験不足や性格によるものだけではなく、脳の働き方の違いによる特性が影響していることがあるのです。まずは、なぜ一斉指示が理解しにくいのか、その背景にある3つの要因を紐解いていきましょう。
要因1:言葉そのものの意味が理解できていない
一斉指示で使われる単語や文章そのものを、その子がまだ習得できていない可能性があります 。例えば「お弁当箱をナプキンで包みます」と言われても、「ナプキン」や「包む」という言葉を知らなければ、何をすべきかイメージが湧きません 。言語理解の発達が未熟な状態では、大人の指示は意味を持たない「音の羅列」として聞こえてしまっているのです。
要因2:指示の内容を覚えきれない(ワーキングメモリの課題)
「トイレに行って、帽子を被って、靴を履いて並びましょう」といった複数の指示を一度に出された場合、一時的に情報を記憶しておく力(ワーキングメモリ)が少ない子どもは、最初の一つは覚えられても、あとの内容を忘れてしまいます 。一つひとつの言葉は理解できていても、行動に移そうとしたときに「次は何だっけ?」と混乱している状態です 。
要因3:注意が他のものに向いている
話を聞いて行動するためには、まず「話す人」に注意を向け、周囲の雑音や刺激を抑える必要があります 。しかし、不注意の特性がある子どもは、壁の掲示物や外から聞こえる音、興味のあるおもちゃなどに反射的に反応してしまいます 。指示そのものが頭に入っていないため、指示を無視しているように見えてしまうのです。
指示を確実に行動へつなげる! 今日からできる3つの工夫
理由がわかれば、支援を劇的に変えることができます 。指示待ちの子どもを減らし、クラス全体がスムーズに動けるようになるための具体的なアプローチをご紹介します。
工夫① その子が「理解できる言葉」に変換する
一斉指示で使う言葉を、その子が100%理解しているか事前に確認してみましょう 。個別の時間にクイズ形式などで「これは何かな?」と問いかけ、知らない言葉があれば教えていく機会を設けます 。一斉指示を出す際は、その子がすでに知っている平易な言葉を選び、必要に応じて実演(モデリング)を交えることが効果的です 。
工夫② 情報量を絞り、「視覚的」に補助する
一度に伝える指示は、まず「1つ」から始め、成功体験を積み重ねてから徐々に増やしていきます 。また、言葉(聴覚情報)だけで伝えるのではなく、イラストや写真カードなどの「視覚支援」を積極的に活用しましょう 。次に何をすべきか、移動した後にどうするのかを写真で示して持たせておくと、記憶を補助しやすくなります 。
工夫③ 話す前に「注目」を促し、個別に伝え直す
全体に指示を出す前に、その子どもの近くへ行き、名前を呼んで目が合ってから話すように心がけてください 。話す人に注意が向いた状態で指示を聞くことが重要です 。さらに、一斉指示を出した直後にその子どものそばへ行き、「〇〇くん、まずはお帽子をかぶるよ」と個別に伝え直してあげると、確実に行動につなげることができます 。
「できた!」の積み重ねが子どもの未来を拓く
発達支援の目的は、単に周りに合わせさせることではありません。子ども自身が「指示がわかった」「自分でできた」という達成感を味わい、自信(自尊感情)を育むことが何より大切です 。
今回紹介した工夫は、特別なことではなく、少しの環境設定と関わりの変化で実現できるものです。子どもの行動の「背景」にある理由を想像し、その子に合ったスモールステップの目標を設定することで、子どもたちは驚くほど変わっていきます 。日々の保育の中で、まずは一つ、取り入れやすい工夫から始めてみませんか。
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