気になる子に「ちゃんと」「しっかり」が伝わらない理由と言葉かけのコツ!具体的な言い換え例①
2026/02/18
指示が通らないのは「伝え方」に理由があるかも?発達が気になる子へ「伝わる」具体的な変換例を紹介します。
監修者・著者プロフィール
守 巧(もり・たくみ)
聖学院大学大学院人間福祉学研究科修士課程修了。東京都内で幼稚園教諭として10年間勤務。現在は、こども教育宝仙大学こども教育学部幼児教育学科教授。特別支援教育士、狭山市就学支援委員会委員・巡回相談員、公益財団法人幼少年教育研究所。主な著書に『気になる子とともに育つクラス運営・保育のポイント』『マンガでわかる気になる子の保育』(ともに中央法規出版)など多数。
保育の現場で「指示が通らない」と悩んでいませんか?
「何度注意しても同じことを繰り返す」「みんなと一緒に動けない」「マンツーマンで話しても伝わっている気がしない……」。
保育の現場で、発達障害などの特性がある、あるいは「気になる」子へのかかわり方に頭を悩ませている先生は少なくありません。
「どうしてわかってくれないの?」と焦る気持ちが湧くこともあるでしょう。しかし、子どもが指示に従わないのは、反抗しているからではなく、保育者の言葉が「どのように行動すればよいか、具体的かつ明確に届いていない」ことが主な原因であることが多いのです。
本記事では、書籍『気になる子の保育 「伝わる言葉」 「伝わらない言葉」』に基づき、気になる子の特性に配慮した「伝わる」言葉かけのポイントを解説します。
「伝わらない言葉」に共通する特徴
私たちが日常的に使っている言葉の中には、気になる子にとって理解しづらい表現がたくさんあります。
1. 「抽象的」な表現
「ちゃんと立って」「しっかり座って」「きれいに片付けて」といった言葉は、定型発達の子であれば文脈から意図を汲み取れます。しかし、気になる子にとっては「ちゃんと」が、「足を揃えること」なのか「手を横にすること」なのか、具体的に何を指すのかイメージが湧きません。
2. 「否定形」での指示
「走らない!」「騒がない!」といった否定形の言葉は、脳内で「走る」「騒ぐ」というイメージを一度想起させてしまいます。また、禁止された後に「では、どうすればいいのか」という代替案が示されないため、次の行動に移れません。
3. 二重の指示(ダブルコマンド)
「手を洗ってから、タオルで拭いて、自分の席に座りなさい」と、一度に複数の指示を出すと、情報の整理が追いつかず、最初の指示すら忘れてしまうことがあります。
「伝わる言葉」へ変換する3つのコツ
今日から使える言葉かけのコツをいくつか紹介します。
① 「見える化」して具体的に伝える
言葉だけで伝えるのではなく、具体的な「数字」や「場所」を示しましょう。
・言い換え例: 「しっかり手を洗ってね」→「手を10回こすって洗おうね」
・言い換え例: 「あっちに座って」→「青いテープが貼ってある椅子に座ろうね」
② 「肯定形」で結論から伝える
やってほしい行動をストレートに伝えます。
・言い換え例: 「走らないで!」→「歩きましょう」
・言い換え例: 「おしゃべりやめて」→「口を閉じましょう」
「止める」ことよりも「次にすること」を伝えるのが鉄則です。
③ 理由を添えて納得感を高める
気になる子は「なぜそれをしなければならないのか」という納得感を重視します。
・言い換え例: 「早く降りなさい!」→「落ちると危ないから、下におりましょう」
理由(危険性)と、すべき行動(降りる)をセットにすることで、子どもは納得して動けるようになります。
状況別:伝わる言葉の「言い換え」ガイド
具体的なケースから、特によくある場面をピックアップします。
| 場面 | 伝わらない言葉(NG) | 伝わる言葉(OK) |
|---|---|---|
| 活動の切り替え | 「もうすぐ終わるよ」 | 「時計の長い針が『6』になったら終わりだよ」 |
| 集合のとき | 「静かにしなさい」 | 「先生のお話を聞くので、アリさんの声(小さな声)にしましょう」 |
| 工作のとき | 「丁寧に作ってね」 | 「糊をこの丸い印の中に塗りましょう」 |
まとめ
子どもを変えるのではなく、「伝え方」や「環境」を変えてみる
気になる子への支援で大切なのは、子どもの行動を無理に変えようとすることではなく、まずは保育者の「伝え方」や「環境」を見直すことです。
「伝わる言葉」を使うことは、その子自身の不安を減らし、「できた!」「わかった!」という自信に繋がります。
先生のちょっとした言葉の変換が、子どもたちの笑顔を増やし、クラス運営をよりスムーズなものにしていくはずです。
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気になる子の保育に求められる言葉かけを、「伝わる言葉」と「伝わらない言葉」の対比で具体的に学ぶ一冊。気になる子やその親、クラスの子、職員に対してなど約30の例を収載。伝わる(伝わらない)理由を理解することで、必要な配慮とコミュニケーション法が身につく。
