【保育者のキャリア形成】 「役職」以外で成長を感じるには?専門性を武器に、主体的に輝くための思考転換

2026/02/17

保育者のキャリアは役職だけじゃない!「自分らしい専門性」を見つけ、主体的に輝くための思考法を紹介。

著者プロフィール

青木 一永(あおき かずなが)

社会福祉法人檸檬会副理事長。博士(教育学)。大阪総合保育大学非常勤講師。社会福祉法人檸檬会(レイモンド保育園)にて園長を務めたのち、現職。日本乳幼児教育学会新人賞受賞。文部科学省の検討会委員なども務める。法人内外の保育施設経営者や園長へのコーチングを通じ、保育者の成長支援を行っている。


1. 保育者のキャリアに横たわる「見えない壁」の正体

 保育の世界に飛び込んで数年。日々の業務にも慣れ、子どもたちとの信頼関係も築けるようになってきた頃、ふと「このままでいいのかな?」という不安が頭をよぎることはありませんか?

 

 一般企業であれば、昇進や昇給といった目に見えるステップが用意されていることが多いですが、保育現場は「園長」と「主任」、そして「担任」というシンプルな組織構造であることが少なくありません。「役職に就かない限り、自分は成長していないのではないか」「ずっと同じことの繰り返しではないか」という思い込みが、いつの間にか心のブレーキとなり、仕事がマンネリ化してしまう。これが、多くの保育者が直面する「キャリアの壁」の正体です。

 

 しかし、本来「キャリア」とは役職名のことではありません。あなたが積み重ねてきた「経験の質」と、それによって磨かれた「専門性」そのものを指します。たとえ役職が変わらなくても、あなた自身の「思考の枠組み」を変えるだけで、見える景色は劇的に変わり始めます。


2. 「主体的」な思考が、日常をキャリアに変える

 キャリア形成の第一歩は、新しいスキルを習得することではなく、今目の前にある仕事に対する「解釈」を変えることにあります。

 

 同じ「行事の準備」という仕事をしていても、それを「上から言われたからこなすタスク(受動的)」と捉えるか、「子どもたちが新しい世界に出会うための最高の環境構成(主体的)」と捉えるか。このわずかな「とらえ方」の違いが、数年後のあなたに圧倒的な差をもたらします。

 

 主体的な保育者とは、置かれた環境に左右される人ではなく、自ら意味を見出し、環境に働きかける人のことです。例えば、苦手な保護者対応や、思うようにいかない保育の場面。これらを「運が悪い」と片付けるのではなく、「自分の専門性を試す絶好のチャンス」と捉え直してみてください。世界を解釈する自分独自の「レンズ」を磨くこと。そのプロセスこそが、一生モノのキャリアを支える最強の土台となります。


3. 「専門性の掛け算」で、代えのきかない存在になる

 「自分には人に誇れるような特別な才能なんてない」と感じている方もいるかもしれません。しかし、保育における専門性とは、必ずしも「誰よりも優れた技術」である必要はありません。

 

 大切なのは「掛け算」の発想です。
 例えば、「ピアノが弾ける」だけでは、多くの保育者の中に埋もれてしまうかもしれません。しかし、そこに「乳児保育」の知識と、「環境構成」へのこだわりを掛け合わせてみてください。
・「乳児の視線に合わせた、音の鳴る環境づくりが得意な保育者」
・「保護者の不安を専門的エビデンスで解消できる、聞き上手な保育者」
・「子どものちょっとした体調の変化に、誰よりも早く気づける保育者」
 このように、自分の「好き」や「得意」を組み合わせ、特定の領域で「〇〇さんなら安心だ」と思われる存在になること。これこそが、役職に依存しない、保育者としての確かなキャリア形成です。まずは、自分が何にワクワクし、何に違和感を覚えるのかを言語化することから始めてみましょう。


4. 自己効力感を育み、チームを動かす

 キャリアを長く、健やかに積み上げていくためには「自己効力感(自分はやれる、という感覚)」が欠かせません。

 

 日本の保育者は、真面目で責任感が強いあまり、「自分のできていないところ」ばかりを見て反省しがちです。しかし、自己肯定感が低い状態では、主体的な一歩は踏み出せません。

 

 一日の終わりに「今日、あの子を笑顔にできた」「連絡帳で保護者に安心を届けられた」といった小さな成功を自分で認めてあげましょう。この積み重ねが、心の「信頼残高」を増やし、次の一歩を踏み出す勇気になります。

 

 そして、そのポジティブなエネルギーを、ぜひ周囲の同僚や後輩にも還元してください。リーダーシップとは、決して役職者が命令することではありません。あなたが主体的に楽しそうに保育に取り組む姿そのものが、チーム全体に良い影響を与え、結果としてあなた自身の価値をさらに高めていくのです。


5. 学びを止めない人が、未来を切り拓く

 保育に「完璧」や「ゴール」はありません。だからこそ、学び続ける姿勢そのものがキャリアになります。

 

 本を読んで新しい視点を取り入れる、研修で得た刺激を翌日の保育で試してみる。そうした小さな「越境」が、あなたの専門性を深めていきます。大切なのは、知識を蓄えることではなく、その知識を使って「明日の保育をどう変えるか」を考え、実行することです。

 

 誰かに決められたキャリアパスを歩むのではなく、自分の意思でハンドルを握り、自分の「保育者道」を切り拓いていく。その旅路を楽しめるようになったとき、あなたはすでに、唯一無二のキャリアを歩んでいるはずです。

 

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