【新人保育士 育成の決定版】Z世代の保育者を「自立」に導く先輩のかかわり方と仕組み
2025/11/04
1990年代から2000年代にかけて生まれた人を総称して「Z世代」と呼ぶことがあります。デジタルネイティブともいわれ、子どものころからスマートフォンに親しんできた世代です。また、ゆとり教育を受けてきた世代ともいえます。
彼らの特徴はさまざまありますが、仕事よりプライベートを重んじる、仕事と家庭を分けて考える、コストパフォーマンス・タイムパフォーマンスを重視するなど、昭和の世代とは異なった価値観をもつことが大きな特徴です。
そんなZ世代の保育者に対して、同僚や先輩・上司はどのようにかかわり、育てていけばよいのでしょうか?
時代背景から分析!「新人保育士の育成」が難しい3つの理由
そもそも、新人保育者の育成が難しいと感じられる背景や要因は多岐にわたります。
●現場の予測不可能性:日々の現場は予想もしない出来事の連続であり、どんなに理論を学んでも、先輩は「どう声をかければよかったのか」「判断は正しかったのか」と迷い続けるためです。
●組織・社会的な変化:
○深刻な人手不足の中で、新人が安心して働き続けられるかが園の未来を左右する大きなテーマとなっています 。
○「人的資本経営」の注目により、人を育てる姿勢が強く求められています。
●指導の難しさ:
○感情的な指導は逆効果:当たり前のことができない新人に感情的に指導してしまうと、内容よりも「怒られたショック」が残り、解決につながりません 。特に自信がない新人は萎縮し、失敗が増える悪循環を招きかねません 。
○経験者による「当たり前」のズレ:経験者に対して「このくらいはわかっているだろう」と説明を省くと、以前の園の「当たり前」とのズレが生じ、誤解の原因になります。
○ルールや基準の曖昧さ:先輩職員間で認識のズレ(A先生とB先生の言うことが違うなど)があると、新人さんが判断に迷い、それがチーム力の低下につながることがあります。
○依存心を強めるかかわり:優しさのつもりで手を貸しすぎると(依存型成功ゾーン)、新人の依存的な姿勢を強め、一人立ちを求められたときに心が折れてしまうリスクがあります。
育成のゴールは「自立」!新人育成で大切な「かかわり方のさじ加減」と「園全体の仕組み」
| 育成の視点 | 大切な「さじ加減」の要点 |
|---|---|
| 安心感の土台づくり | ほめる・認める(やさしさのさじ加減):ほめる目的は、新人さんに「自分で進む力」を育むことです。小さな声かけや感謝(「OK!」「助かります!」)で安心感を伝え、自信を積み重ねさせます 。 |
| 成長への気づき | 叱る・指摘する(厳しさのさじ加減):「叱る」目的は、感情をぶつけることではなく、新人さんに「気づき」を与えることです。信頼関係を土台とし、「何が問題か」と「どうすれば良くなるか」をセットで伝えます。 |
| 挑戦と達成感 | 成功体験と手助け(手助けのさじ加減):新人さんの自立につながる「支援つき成功ゾーン」を目指し、難易度を整理してスモールステップで任せます]。「自分でできた!」という達成感を重視します 。 |
| 失敗からの学び | 失敗と学び(振り返りのさじ加減):失敗を「成長の材料」としてとらえ、「反省」ではなく「学びにつなげる振り返り」を促します 。感情を落ち着かせた後、「部分肯定」と「改善視点」で振り返り、具体的な行動目標につなげます。 |
| 関係性の構築 | 共感と同情(距離感のさじ加減):新人を弱い存在に固定する「同情」ではなく、気持ちを受け止めた上で、次の一歩を一緒に考える「共感」で前進を支えます。 |
| 仕組み化 | 園全体での育成:新人育成は先輩一人に負担を偏らせず、園長や主任が共通ルールや目標を明確にし、育成者を支援する仕組みをリードします 。 |
場面別】新人保育士の安心感と成長を支える「具体的なかかわり方」
同僚保育者は、日々の業務の中で「かかわり方のさじ加減」を工夫し、新人の安心感と成長を支える役割を担います。
●挨拶の指導:「常識だから」ではなく、「挨拶がなぜ必要か?」(良好な人間関係や信頼感を生む効果)を客観的に伝え、冷静に指導します 。
●指示の出し方:曖昧な言葉(「きちんと見てね」)ではなく、「いつ・どこで・何を・どうするのか」を具体的に伝えます 。経験者には「念のためお伝えしますね」と一言添えるなど、認識のズレをなくす工夫をします 。
●臨機応変な対応:臨機応変な対応が苦手な新人には、まずデイリープログラム通りの基本の流れを覚えてもらい、その後「いつもなら○○だけど、この状況だとどう動いたら良さそうか」と**優先順位の「軸」を渡しながら段階的に練習させます 。
●保育のねらいの共有:活動が目的化しないよう、散歩や遊びの際に「なぜその活動をするのか」というねらいを一緒に考えます 。特に活動のねらいを見失いがちな「しっかりモノタイプ」には有効です。
●報連相の促進:ミスを責めず、「教えてくれて助かったよ」「早めに言ってくれたから対応できたね」と、報告したこと自体を肯定し、「怒られるもの」ではなく「安心につながるもの」という感覚を育てます。
●休憩時間の配慮:「お疲れさま」などの小さな雑談や配慮(席を詰める、笑顔を返す)が、新人さんの「ここにいていい」という安心感を育て、心理的安全性を育みます 。
●育成担当外のフォロー:育成担当者や先輩に聞きづらい場合もあるため、担当ではない職員こそ、帰り際に「困ったことはある?」と軽く声をかけるなど、相談できるルートを複線化し、 孤立を防ぐ「セーフティネット」になります 。
Z世代の保育者とのかかわり方の決定版!
本記事で紹介したように、新人保育者の育成には「かかわり方のさじ加減」と「仕組み化」が不可欠です。より詳細な「叱る」「ほめる」の実践的な技術や、園全体のチーム育成術 を学びたい方は、2026年1月刊行「 職員みんなで育てよう 新人保育者がグングン育つ 場面別「かかわり方のさじ加減」 」をぜひご活用ください。
●「叱る」「ほめる」の実践的な技術:感情論ではなく、事実に基づく具体的な行動を促し、新人さんの「自立」に向けて、厳しさと優しさのバランスを調整する実践的なスキルを学ぶことができます 。 。
●タイプ別かかわり方の調整力:新人さんのタイプに合わせて、伝え方や任せ方を調整する工夫を学べます。
●育成を個人の責任にしない視点:「つまずき」を個人の努力不足としてとらえず、園の仕組みの問題(チームのつまずき)として捉え直し、「見てわかる」ガイドやチェックリストなどで仕組みを改善する視点を学べます 。
●職員会議・行事の質を高める方法:会議や行事を単なる「報告の場」や「見せる場」で終わらせず、新人が「自分たちで園をつくっている」という帰属意識を育み、学びにつなげるための具体的な工夫(意見を出しやすい仕組み、全体像の共有、ねらいの確認)を学べます。
●育成者を支えるマネジメント:園長や主任が、育成者の努力を認め(感謝)、不安や迷いを聴きながら(面談)、指導の「火加減」を調整し、園全体で「応援している」という文化をつくるチーム育成術を学べます 。
『職員みんなで育てよう 新人保育者がグングン育つ 場面別「かかわり方のさじ加減」』
著 者:菊地奈津美、河合清美=著
判 型:B5変
体 裁:並製
頁 数:136頁
発行日:2026年1月1日
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