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国際ソーシャルワークとは?意味や役割について解説

最近話題になってきた言葉に「国際ソーシャルワーク」があります。

国際ソーシャルワークは、名前から外国人を支援するソーシャルワーク…くらいに捉えられていますが、それだけではなく普段のソーシャルワークにかかわる専門職においても、とても大事な概念です。

ここでは国際ソーシャルワークとは何かについて、「国際ソーシャルワークを知る」の編者である木村真理子先生(日本女子大学名誉教授)監修のもと、簡単に紐解いていきます。

目次

国際ソーシャルワークって何?

「外国人のためのソーシャルワーク」ではない

国際ソーシャルワークは、「国際」とつくために「外国人を支援するソーシャルワーク」と思われることがありますが、国際ソーシャルワークは必ずしも外国人のためのソーシャルワークではありません

もちろん、国際ソーシャルワークが必要とされた背景にはグローバル化があり、外国人との関係は切っても切り離せません。支援の範囲には外国人も含んでいます。

しかし、国際ソーシャルワークの対象はこれだけではなく、むしろ、同じ人種・国籍の方への支援もその範囲に含まれています。

世界標準に沿ったソーシャルワークのこと

では国際ソーシャルワークとは何かというと、それは、いわば「世界標準」に沿ったソーシャルワークのことです。

例えば島国の日本でも、最近は外国人が多く日本に滞在するようになり、それによって単なる外国人支援だけではないあらゆる福祉的な問題・課題が多くなっています。

例えば…

現行の社会福祉士のカリキュラムでは、このような問題にどのように対処するか、ワーカーがどう考えていけばよいか、指針は示されていてもその具体までは記載されていません。

これらグローバル化に伴って対応すべき問題(グローバルイシュー)を取り扱うための「標準」となるソーシャルワークが「国際ソーシャルワーク」ということです。

標準とは

「標準」とは…
辞書では、「一般のあるべき姿を示すものとしての、ありかた」「よりどころとなる目あて」という意味が当てられています。

例えば社会福祉士は、厚生労働省から教育カリキュラムが発表され、教科書や大学教育などもそれを「よりどころ」にして教育が図られています。

入る大学によって教え方の違いはあれど、教える内容が全く異なることはありません。これが標準化です。

支援に当たるワーカーごとに言うこと、やることなどが異なっていたら、支援を受ける側も混乱しますし、効果的な支援もできません。

もちろん個別具体な支援方法の立案はケースバイケースで考案されるべきですが、その前提となる知識や考え方は統一されている方がより効果的な支援ができるのです。

国際ソーシャルワークの中身

ソーシャルワーク専門職のグローバル定義

では肝心の「国際ソーシャルワークにおける『標準』は何か」というと、真っ先に挙げられるのは「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」です。

これは、2014年7月に国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)総会で採択された定義で、ソーシャルワーク専門職の「中核となる任務」、「原則」、「知」、「実践」について記述されています。

多くの教育機関や論文、テキストなどでこの定義を参照しており、国際ソーシャルワークのよりどころとして現在も多くのワーカーの指針となっています。

詳しくは、日本ソーシャルワーカー協会のWebサイトをご覧ください。

取り扱う分野

国際ソーシャルワークの体系は、日本でこれまで位置づけられていたソーシャルワークの体系とほぼ違いはありません。

ただ、支援の対象として、「難民」「移民」「先住民」「開発途上国の貧困」「外国人母子(父子)」など、日本人向けではあまり目にすることの無い支援などを踏まえたソーシャルワーク理論・実践などが展開されています。

ポイント
逆に日本国内のソーシャルワークの専門書やテキストでは、障害や貧困、高齢者などの分野ではその背景や支援方法などの記述が多いことがわかります。

国際ソーシャルワークを学ぶ意義

海外で活躍したいソーシャルワーカーのため

国際ソーシャルワークは、世界標準のソーシャルワークのため、これを学べば国籍や文化の違う人に支援する際の留意点や、戦争被害者、難民、途上国支援など、日本では遭遇できない/しづらい方々への支援方法も知ることができます

JICAの青年海外協力隊や海外で活躍するNGO、NPOなどで支援に当たりたいと思う人は学習必須です。

これまでのソーシャルワークも見直されている

では日本国内の支援だけで十分だよ…という方には不要なのでしょうか?
いえ、そうではありません。

日本という国は経済規模も大きく、島国という地理的条件から人口移動も少なく、同じ民族・国籍の人が、一生涯を日本国内で終える…というケースが多いと考えられてきました。

そのため、実は日本独自の文化であってもそれが日本独自であることに気がつかないことがあります。

例えば…
「日本人は時間をよく守る」と私たちは思っていますが、「サービス残業」という言葉が定着しているように「始まりの時間は守るけど終わりの時間は守らない」と感じる外国人はいるそうです。

国際ソーシャルワークを学ぶことはこうした国や文化による「当たり前」を見直し、自己覚知を促す効果があります。

障害者や触法者など、ソーシャルワーカーが接する支援者は差別・偏見にさらされていることが多いです。そのようなときに大事なことは支援者自身が自己覚知をして、差別意識や偏見を持たないことです。

国際ソーシャルワークを学ぶことは、単に日本では見られない珍しい人々を支援する方法を知るだけでなく、日本文化という「特殊性」も知ることができます

すると自分が普段から「当たり前」と思っていたことが実は世界では当たり前ではないということを知ることにもつながります。そうした経験が自分を客観視する訓練となり、ひいては自己覚知につながっていくのです。

ポイント
逆に日本国内のソーシャルワークの専門書やテキストでは、障害や貧困、高齢者などの分野ではその背景や支援方法などの記述が多いことがわかります。

教科書『国際ソーシャルワークを知る』

本ページの内容は、国際ソーシャルワークの教科書『国際ソーシャルワークを知る』を参考に作成しました。

今回はわかりやすさを優先し、かなり詳細を省いてご説明しましたが、この書籍ではより詳しく、体系的に国際ソーシャルワークが理解できるよう構成されています。

国際ソーシャルワークは現時点(2022年)では類書なども少なく、手探りで学ぶ人も多いでしょう。そのような方や国連や国際NGOなどでの活躍も視野に入れている方に参考になるテキストです。

各大学でもテキストとして採用されています。

本の詳細

著者:木村真理子、小原眞知子、武田 丈=編著
本のサイズ:B5判 314頁
価格:2,970円(税込)

目 次

第1章 国際ソーシャルワークとは何か
第2章 国際ソーシャルワークの実践理論と実践モデル
第3章 世界のソーシャルワーク 第4章国際ソーシャルワークのリサーチ
第5章 国際ソーシャルワークの課題と展望
第6章 難民に対する国際ソーシャルワークの実践
第7章 先住民に対する国際ソーシャルワークの実践
第8章 貧困に関する国際ソーシャルワークの実践
第9章 女性・子ども対する国際ソーシャルワークの実践
第10章 教育に関する国際ソーシャルワークの実践
第11章 医療に関する国際ソーシャルワークの実践
第12章 高齢者に対する国際ソーシャルワークの実践
第13章 災害に関する国際ソーシャルワークの実践

◆執筆者

中央法規出版第1編集部

◆本ページの監修者

木村真理子(きむらまりこ)

日本女子大学名誉教授
専門は社会福祉学。
現在は公益財団法人愛恵福祉支援財団理事、同国際支援企画委員会委員として国際支援活動に従事。(ほか、日本社会事業大学社会事業研究所教授)。