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なぜ、認知症の人は家に帰りたがるのか
脳科学でわかる、ご本人の思いと接し方

内容紹介

「なぜ、同じことを何度も聞いてくるのか」、「なぜ、受診の話をすると怒り出すのか」、「なぜ、同じものをいくつも買ってしまうのか」など、家族や介護者が抱く認知症の人に対する「なぜ?」「どおして?」はたくさん。
しかし、脳科学の視点からみれば、ご本人の行動の理由は説明がつく真っ当なものばかり。なんら不思議ではありません。
本書はこうした家族や介護者が「なぜ?」と思う認知症の人の行動を34事例取り上げ、その理由を脳科学で説明し、ご本人の気持ちに沿った適切な接し方を伝える画期的な1冊です。医学モデルでも生活モデルでもない、脳科学からのアプローチを示したはじめての書。脳科学の知識がない人にもわかりやすく書かれています。

編集者から読者へのメッセージ

恩蔵絢子さんは、自宅でアルツハイマー型認知症のお母様の介護をされています。脳科学者と家族介護者という2つの視点から解説を綴られたました。一方で、永島徹さんは何百人もの認知症の人の生活支援を行ってきた認知症ケアのスペシャリスト。本書では恩蔵さんの解説を踏まえて、生活の場でどのようにアシストしたらよいかを具体的に記していただきました。
制作中は何度もzoomで話し合いながら執筆を進めました。恩蔵さんはお母様一人と深く向き合ってきましたが、今回の本では多くの認知症のある人が経験する症状に対して解説しなければなりません。ご自身の説明が母一人の事例ではなく、多くの方に当てはまるのかを永島さんに確認しながらの執筆になったのです。
このやり取りを見ていた私は、恩蔵さんも一人の家族介護者として、日々悩みながらお母様と向き合っていることを知りました。そんな恩蔵さんが書かれた文章は、同じ家族介護者への温かい思いやりに満ち溢れていて、きっと読者はその文章に癒され、励まされることでしょう。
本書は科学的に裏打ちされた統計的な事実や脳の仕組みだけを語った机上の空論ではなく、経験に基づいたベテランの職人技を紹介したものでもない、科学と実践知が融合し、かつ温かい心に基づいた画期的な認知症ケアの本です。そして、認知症のある人を支える上で一番大切なことも、温かい心と安全基地だということを教えてくれます。ぜひ、手に取ってみてください。

主な目次

少し長いはじめに~母が認知症になってからの学び~
事例 認知症の人が生活場面で直面する困難とアシストポイント
事例01 なぜ、ふとした瞬間、次に何をしようとしていたのかわからなくなるのか。
事例02 なぜ、同じことを何度も聞いてくるのか。
事例03 なぜ、物の使い方がわからなくなるのか。
事例04 なぜ、受診の話をすると怒り出すのか。
事例05 なぜ、実際にはできていないことを、できたと言い張るのか。
事例06 なぜ、何度もお米を炊いてしまうのか。
事例07 なぜ、同じ物をいくつも買ってしまうのか。
事例08 なぜ、家にいるのに「家に帰る」と言うのか。
事例09 なぜ、季節外れの服装をしたり、着替えをしなくなるのか。
事例10 なぜ、お風呂に入りたがらなくなるのか。
事例11 なぜ、食事をうまくとれなくなるのか。
事例12 なぜ、食事をしたことを忘れてしまったり、食べ物以外の物を口に入れてしまうのか。
事例13 なぜ、薬を飲み忘れたり、飲み方を間違えてしまうのか。
事例14 なぜ、大事な物を失くすと、身近な人のせいにしてしまうのか。
事例15 なぜ、お金の管理ができなくなるのか。
事例16 なぜ、夕方になると活動的になるのか。(夕暮れ症候群)
事例17 なぜ、1人で外出して帰れなくなるのか。
事例18 なぜ、突然怒り出したり、大声を挙げてしまうのか。
事例19 なぜ、排泄に失敗したり、汚れた下着を隠そうとするのか。
事例20 なぜ、特に夜間はトイレの場所がわからなくなるのか。
事例21 なぜ、だれかと話しているように独り言を言うのか。
事例22 なぜ、人物がわからなくなるのか。
事例23 なぜ、感情や雰囲気は伝わるのか。
事例24 なぜ、サービスを拒否するのか。
事例25 なぜ、デイサービスに行くと帰りたがるのか。
事例26 なぜ、生活動作がスムーズにできなくなるのか。
事例27 なぜ、 自分の名前を漢字で書けなくなるのか。
事例28 なぜ、伝えたいことが伝えられなくなるのか。
事例29 なぜ、レビー小体型認知症の人は無気力になったり、運動障害が現れるのか。
事例30 なぜ、レビー小体型認知症の人は幻覚を見るのか。
事例31 なぜ、前頭側頭型認知症の人は怒りっぽくなるのか。
事例32 なぜ、前頭側頭型認知症の人は体調不良を言葉で伝えられないのか。
事例33 なぜ、その人らしさは最期まで残るのか。
事例34 なぜ、若年性認知症の人へのサポートは高齢者と異なるのか。
少し長いおわりに~認知症をもつ人の暮らしの障がいとアシスト~
参考文献
著者紹介

著者情報

恩蔵絢子(おんぞう・あやこ)
1979年神奈川県生まれ。脳科学者。専門は自意識と感情。
2007年東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻博士後期課程修了(学術博士)。東京工業大学大学院で脳科学者の茂木健一郎氏の研究室に入る。現在、金城学院大学、早稲田大学、日本女子大学で非常勤講師を務める。
2015年に同居の母親がアルツハイマー型認知症と診断された。以来、生活の中で表れる認知症の症状を観察、分析。特に「その人らしさ」は認知症によって変わってしまうのかということが母親の人格を一番よく知る娘としては、切実な問題となっていった。1人の娘として毎日戸惑いながら、他方では脳科学者として客観的に分析していくことで、医者/患者、科学者/被験者という立場で診察室や実験室でテストをして認知症を研究するのとは違った認知症の理解を持つにいたり、情報を発信している。。
主な著書に『化粧する脳』(共著/集英社新書)、『脳科学者の母が、認知症になる–記憶を失うとその人は“その人”でなくなるのか?』(河出文庫)、訳書に『顔の科学--自己と他者をつなぐもの』(PHP研究所)、『IKIGAI--日本人だけの長く幸せな人生を送る秘訣』(新潮社))がある。

永島徹(ながしま・とおる)
1969年栃木県生まれ。2003年NPO法人風の詩設立、同法人理事長。
認知症単独型通所介護デイホーム風のさんぽ道施設長、居宅介護支援事業所ケアプランセンター南風所長、社会福祉士事務所風のささやき代表を努める。認定社会福祉士、認知症ケア専門士、主任介護支援専門員等の資格を持つ。
大学卒業後、青森県にて精神科ソーシャルワーカーとして精神障がい回復者の社会復帰活動に従事し、その中でも当事者の会などの育成に力を入れる。郷里である栃木県へ戻り民間企業へ入社し、これまでと違った視点で福祉を見直すきっかけを得る。その後、足利市にある特別養護老人ホーム併設の在宅介護支援センターに勤務。2003年に設立したNPO法人風の詩を拠点に、心ある仲間たちと、だれもが安心して生活を営むことができる支え合いの地域を目指して、人々との「つながり(連携)」を活かしたソーシャルワーク実践に努める。2009年日本社会事業大学大学院にて、実践と理論を交えた福祉活動の視点を養う。
主な著書に『必察! 認知症ケア~思いを察することからはじまる生活ること支援』『必察!認知症ケア2実践編 生活ること支援に必要な5つの対人力』『だいじをギュッと!ケアマネ実践力シリーズサービス担当者会議』(ともに中央法規出版)他多数がある。