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放課後等デイサービスの豊かなあそびと発達支援

内容紹介

本書の背景

 放課後等デイサービス(放デイ)は、障害のある子ども(小学生~高校生)が、放課後や長期休みに過ごす居場所です。2012年の制度開始以降急増し、令和元年度には約1万4500か所開所されています。一方で、サービスの質のばらつきがあるなどの課題も指摘されています。本書は、平成30年度厚生労働科学研究費補助金による「障害児支援事業所における医療的ケア児等支援人材育成プログラムの開発」をもとに、支援者の質の向上を目的として制作されました。

本書の特徴

 放デイでは、幅広い年齢で、様々な障害のある、心身の発達状況もまちまちの子ども達を支援することが求められます。本書では、主に以下のような内容について、わかりやすい具体的な解説と、事例、図解などを通して、子どもたちの興味関心を高め、意欲を引き出すような方法を紹介しています。

  • ・情報収集、アセスメント、家族理解やきょうだい支援
  • ・子どもの感覚統合や姿勢の調整、環境づくりのポイント
  • ・特性や発達段階をふまえたあそびの組み立て、個別指導
  • ・本を活用した、精神面や言葉の育ちへの働きかけ
  • ・医療的ケアやてんかんの理解、思春期の子どもの理解
  • ・地域共生社会作り、感染症対策、災害対策、救急対応

 事業所運営の書籍は類書もありますが、子どもの支援や遊びに関する書籍はほとんどありません。支援者の研修や質の向上に役立つ内容が満載です。

編集者から読者へのメッセージ

様々なこどもに対応できる力と地域を育てる力

 放デイには、年齢も、障害も、コミュニケーション方法もまちまちな子どもたちが在籍しています。支援者には幅広い対応力が求められます。とはいえ、「これ」といった教科書も方程式もないなかで、毎日が試行錯誤、手探りの連続だと思います。保護者や学校、地域の様々な機関と、得られた知見を共有していくことが大切です。放デイは地域社会の要となりえる存在ですので、子どもの支援、プラス地域共生社会作りの種まきにも意識を向けてもらうことが必要です。そのため、本書では少し視野を広げた内容を盛り込んでいます。

豊富な事例を通して

 編著者らが集めた豊富な事例を通して、支援者の試行錯誤の道のりやコツを知ることができます。また、子どもたちの頼もしい姿も見えてくると思います。こうした事例は「宝」と言えます。子どもたちが力をのびのびと発揮できるような支援の在り方や、よい取り組みについて、本書を通して多くの事業所と共有できることを願っています。

主な目次

第1章 放課後等デイサービスとは
①放課後等デイサービスの概要 ②「発達支援」とは ③保護者のニーズと子どものニーズ ④多様な職種とつながって

第2章 こどもの理解とアセスメント
①「障がい」とは ②こどもの特性を理解する ③支援者として大切なこと ④保護者やきょうだいとの関係

第3章 あそびを通した発達支援
①大切な放課後の「あそび」 ②姿勢調節と姿勢管理の大切さ ③ポジショニング-いくつかの事例から ④環境を整える-物、人、時 ⑤快刺激と不快刺激=よい情報入力と悪い情報入力 ⑥虐待を防ぐ

第4章 あそびと学びの実践
①体と感覚の発達 ②こどものアセスメントとあそびの実践例 ③個別指導で豊かなあそび ④あそびと学び ⑤「社会」につながるあそび ⑥支援者の「あそび心」-ユーモア・コミュニケーションのすすめ

第5章 本の力と発達支援~世界と出会う機会を作る~
①「読み聞かせ」のもつ意義 ②本をどう選ぶか ③本がこどもに及ぼす力 ④語る力へつなげる

第6章 地域共生社会を作る
①特別支援教育を知る ②「地域と共にある」学校との連携・協働 ③生涯発達を見据えた共生社会を目指す

第7章 医療的ケアや体を理解する~自立と尊厳を守るために~
①医療的ケアが必要なこども達 ②「医療的ケア」を理解する ③てんかんについて知ろう ④自分の体と向き合うとき-思春期の支援 ⑤自分のトリセツを語れるように-自立のために ⑥性について

第8章 感染症対策、災害対策、救急対応~安心安全のために~
①感染症対策-感染しない・させない支援 ②災害対策 ③子どもの体調急変時の対応
資料 令和3年度障害福祉サービス等報酬改定における変更点

著者情報

編集

亀井智泉(かめい・ちせん)
長野県医療的ケア児等支援センター副センター長。超重症心身障がいの第1子を4歳で亡くしたことを機に、生命倫理・家族支援・チーム医療について発信。高度医療機関と地域をつなぐ活動から、医療的支援の必要な子育てのための多職種連携チーム構築とその後方支援体制づくりを担ってきた。信州大学医学部新生児学・療育学講座特任助教を経て、現職。

執筆(50音順)

  • ・小林敏枝(こばやし・としえ)
    松本大学非常勤講師
  • ・塚原茂樹(つかはら・しげき)
    理学療法士
  • ・塚原成幸(つかはら・しげゆき)
    清泉女学院短期大学幼児教育科准教授

医学監修

福山哲広(ふくやま・てつひろ)
信州大学医学部小児科講師