看護判断のための気づきとアセスメント 老年看護
内容紹介
高齢者のアセスメントは難しい…
老年看護の分野では,たびたび「アセスメントが難しい」との言葉が聞かれます。
確かに,高齢者を看護するには,考える範囲が広く,必要となる情報も多くなります。その情報も簡単には得られません。また,問題解決技法や医学的観点のみではうまくいかず,哲学的・社会学的な観点も必要となります。そして,多職種のチームで情報を集め,知恵を集めてアセスメントし,高齢者の生活と生命の質を改善するように働きかけていくことになります。そのなかで,看護職が具体的にどのようにアプローチできるかを示す必要もあります。
事例でイメージしながらアセスメントにつなぐ
本書では,関わる期間が長い,個別性が高いといった高齢者の特徴,また高齢者の心身の特徴などを踏まえ,「難しい」といわれる高齢者のアセスメントの基本や具体的な方法,ポイントを,イラストや事例などを用いてわかりやすく解説しました。
豊富な特徴的な事例から,実践の場面がイメージできると思います。
トレーニングで苦手意識を克服できる!
また,「気づくためのトレーニング」として,高齢者へのアセスメント力を高めるための学び方を解説しているので,老年看護に苦手意識がある人にも役立てていただける内容になっています。
看護学校での演習授業や,大学院生や看護師の方々向けの研修方法の参考にもしていただけるかと思います。ぜひ,本書を活用してみてください。
編集者から読者へのメッセージ
本書は、個別性が高い高齢者へのアセスメント力を高めるために,アセスメントのアウトラインや具体的な方法,ポイントを解説しました。さまざまな場面の特徴的な事例で,具体的な看護も学べます。
老年看護を実践するには,部分的な理解では不十分です。幅広い知識をもち,考えながら実践する,そして,実践した結果を振り返って自分の知識や考えを確かめるという行為によって実践力を高めることになります。その行為の一部として,本書を活用していただければ幸いです。
主な目次
第1部 総論
1 高齢者看護におけるアセスメント
01 アセスメントとは
02 高齢者看護において,アセスメントが難しいと感じる理由
03 高齢者のアセスメントの特徴
2 情報の集め方
01 枠組みをもって見る(観察する)
02 1つの情報や気づきから広げる,探る,確かめる
03 関わりながら(医療・ケアを進めながら)少しずつ集める
04 重要な情報を逃さずに捉える
05 本人以外から情報を集める
06 情報を集めるうえで必要なこと
〇 コミュニケーション力
〇 観察力
〇 信頼を得ること
3 情報の解釈,意味づけ
01 1つの情報の意味づけ,解釈
02 複数の情報からの意味づけ,関連づけ
03 からみ合う要因を分析し,関わるポイントを見出す
04 解釈時の注意点
05 解釈,アセスメントを伝える(記述する)ときの注意点
4 看護実践の振り返り・評価を通した再アセスメント
01 チームで看護実践を振り返る
〇 振り返りの目的と方法
〇 振り返りの評価
02 日々の看護実践の振り返りと気づき
第2部 各論
1 老化をみる,老化に気づく,老化のもたらす影響に気づく
01 視力,見え方
〇 高齢者の視力,見え方
〇 加齢による視覚機能低下がもたらす影響
〇 高齢者の視覚機能の情報収集
02 聴力,聞こえ方
〇 高齢者の聴力,聞こえ方
〇 加齢による聴覚機能低下がもたらす影響
〇 高齢者の聴覚機能の情報収集
03 運動能力,動き方
〇 高齢者の運動能力,動き方
〇 加齢による運動能力の低下がもたらす影響
〇 高齢者の運動能力の情報収集
04 留意点
〇 情報収集における留意点
〇 評価における留意点
05 気づくためのトレーニング
2 病気をみる,病的な状態・機能低下に気づく
01 呼吸の異常
02 食中・食後の状態
03 意識レベルの変化
04 痛み,違和感
05 食欲低下
06 体重の変化
07 気づくためのトレーニング
3 その人を知る,その人のニーズに気づく,その人の可能性に気づく
01 コミュニケーションを通して高齢者の考え(認識,感情,感覚)に気づく,読み取る
02 なぜそのような言動になるのか,その人の言動の原因に気づく
03 高齢者の人間像を捉え,ニーズに気づく
04 気づくためのトレーニング
4 病気をもったその人の現在と今後を捉える
01 なぜその状態になったのか,原因を推測する
02 これからどのようになるか,その人の将来(少し先の未来)を予測する
〇 未来の予測に臨床推論を活用する
〇 その人の状態の悪化を予測する
03 死の可能性と死についての本人・家族の準備状況を捉える
〇 死の可能性の捉え方
〇 死についての本人・家族の準備状況と意向の捉え方
04 「 病気をもったその人の現在と今後に」気づくためのトレーニング
5 環境がその人に与える影響を捉える
01 その人を取り巻く環境とその影響
02 環境に気づき,その人にとってどのような環境であるかを理解する
03 環境を変化させることができるか(できないか)を予測する
04 気づくためのトレーニング
第3部 事例から理解する気づきとアセスメント
1 在宅で長期に療養している高齢者の変化に気づき,治療につなげた事例
01 事例紹介
02 定期の訪問看護での気づきとアセスメント
03 アセスメントに基づく看護
04 行った看護の評価とその後の支援
2 入院時のアセスメントにより予防策が功を奏した事例
01 事例紹介
02 入院当日のアセスメントとケア
03 術後に向けたアセスメント
04 手術当日のケア
05 手術翌日のケア
06 看護の評価
3 認知症をもち別の疾患の治療のため入院している高齢患者の訴えの原因を発見した事例
01 事例紹介
02 入院までの経過
03 入院後の状況
04 アセスメントのための情報収集
05 アセスメント
06 看護の実際
07 結果
08 看護の評価
4 外来に通院する高齢患者の変化を発見した事例
01 事例紹介
02 経過
03 アセスメント
04 看護の実際
05 看護の評価
06 まとめ
5 問題患者と捉えられていた高齢患者のニーズを理解したことで,問題が問題でなくなった事例
01 事例紹介
02 入院初期の状況とアセスメント
03 Aさんに起きた変化に対するアセスメントとケア
04 再度Aさんに起きた変化に対するアセスメントとケア
05 まとめ
6 重度認知症をもち寝たきり状態の高齢者で,治療選択後,家族が葛藤した事例
01 事例紹介
02 初期の情報収集:優先順位とポイント
03 得られた情報からのアセスメントと看護
04 看護の評価
05 再アセスメント
06 再アセスメント後の実践と評価
07 まとめ
7 意思の表出が難しい認知症高齢者の退院後の生活の望みを聞き,多職種でマネジメントした事例
01 事例紹介
02 情報を得ながらアセスメントしてケアにつなげる
03 Aさんの生活の場の希望を確認する
04 一人暮らしの可否を多職種でアセスメントする
05 独居生活のケアマネジメント
06 援助の評価
8 在宅での生活をよく聞いたことで,発症の原因を予測でき,退院指導にいかした事例
01 事例紹介
02 退院支援のためのアセスメントに向けた情報収集
03 アセスメント(退院に向けた課題の抽出)
04 アセスメントに対する看護と退院後の支援の確認
05 看護の評価
著者情報
編集
湯浅美千代(順天堂大学大学院医療看護学研究科教授)
執筆(執筆順)
湯浅美千代(順天堂大学大学院医療看護学研究科教授)
島田広美(順天堂大学大学院医療看護学研究科先任准教授)
丸山優(埼玉県立大学保健医療福祉学部看護学科准教授)
杉山智子(順天堂大学大学院医療看護学研究科准教授)
佐瀬真粧美(東邦大学健康科学部看護学科教授)
東森由香(順天堂大学大学院医療看護学研究科博士後期課程)
鳥田美紀代(東邦大学健康科学部看護学科准教授)
原田かおる(高槻赤十字訪問看護ステーション/ 高槻赤十字病院 看護副部長,老人看護専門看護師)
佐藤晶子(聖隷三方原病院看護部 課長,老人看護専門看護師)
福田智子( 砂川市立病院認知症疾患医療センター 看護師長,老人看護専門看護師,認知症看護認定看護師)
佐藤典子(順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター,老人看護専門看護師)
後智子(青梅慶友病院 病棟主任,老人看護専門看護師)
佐藤文美(複合型サービスじゃんけんぽん観音寺,老人看護専門看護師)
内部孝子(松江赤十字病院,老人看護専門看護師)
立原怜(島根県立中央病院看護局,老人看護専門看護師)
-
看護判断のための気づきとアセスメント 老年看護
判型:B5
頁数:230頁
価格:3,300円 (税込)
発行日:2022/05/20