メニュー(閉じる)
閉じる

ここから本文です

地域福祉とは何か ― 哲学・理念・システムとコミュニティソーシャルワーク

内容紹介

日本の社会福祉学の泰斗大橋謙策先生の集大成

五十年余にわたり著者が取り組んできた地域福祉に関する実践・研究・教育の集大成です。

地域共生社会の実現に向けて

地域共生社会を実現するためのキーワードである「地域福祉」の理論と課題、地域自立生活の考え方などについて、コミュニティソーシャルワークの視座から論考します。

著者が語る2つの特色

  • ①自伝的地域福祉研究史
    時代状況が分かるように、著者自身の実践や論文を通して論述しています。抽象的な展開・構成ではありません。
  • ②バッテリー型研究
    空理空論でなく、実践家と協働する(バッテリーを組む)ことを大切にしてきた著者が、具体的フィールドを通して考えながら理論化してきた姿勢が分かります。

編集者から読者へのメッセージ

本書に収載した論文のオリジナルタイトルを紹介します。
メインの第1編が、「退官記念論文 地域福祉とは何か! ―コミュニティソーシャルワークの視座から考える」(2020~21)、補論の第2編が、「福祉教育の必然性とその理念」(1986)、「戦前社会事業における「教育」の位置」(1988)、「戦後地域福祉実践の系譜と社会福祉協議会の性格及び実践課題」(1993)の3本です。
再掲とはいえ、大幅に加筆修正しています。原論文を損ねない程度に適宜「註」を挿入し、内容のアップデートを図っています。現在と比較して当時の状況が分かります。

主な目次

第1編:地域福祉とは何か

はじめに

第1部:地域福祉とは何か―理論的課題の検討と実践的研究史
 第1章:地域福祉の構成要素と地域福祉研究の理論的検討枠組み
 第2章:地域福祉における地方自治体の位置と「重層的圏域」、「福祉アクセシビリティ」
 第3章:地域包括ケアと社会福祉法人の地域貢献―在宅福祉サービスの考え方
 第4章:地域福祉の主体形成とボランティア論及び福祉教育論
 第5章:地域福祉計画の枠組みと策定方法

第2部:地域での自立生活を支えるICFの視点に基づくケアマネジメント及び福祉機器活用によるソーシャルケア(ソーシャルワーク・ケアワーク)
 第1章:人間の尊厳・幸福追求権を踏まえた「ケア」観の創造
 第2章:個別ケアを徹底化した「ユニットケア」の発想・哲学とアセスメントの重要性
 第3章:ICF(国際生活機能分類・WHO、2001年)の考え方
 第4章:自立生活支援の考え方とICFに基づく福祉機器の活用
 第5章:自立生活支援の考え方とソーシャルワーク実践
 第6章:自立生活支援における福祉機器の位置と今後の課題
 第7章:ICFの視点で福祉機器を活用した個別ケアと『ケアの科学化』

第3部:地域福祉の理念を具現化する方法論としてのコミュニティソーシャルワーク
 第1章:地域福祉の方法論としてのコミュニティオーガニゼーションの考え方の変遷
 第2章:地域づくりの方法論としての地域組織化と福祉組織化
 第3章:戦後「第3の節目」としての「地域共生社会実現政策」の位置づけ
 第4章:地域共生社会実現には住民と行政の協働が不可欠―コミュニティソーシャルワーク機能と住民の主体形成の必要性
 第5章:改正社会福祉法における「地域生活課題」と「社会生活モデル」に基づく支援
 第6章:高齢者、地域移行の障害者等の単身生活者の増大と生活者の主体性を守る意思確認、意思決定支援
 第7章:社会生活上傷つきやすく、脆弱性(ヴァルネラビリティ)のある人とアウトリーチの必要性
 第8章:コミュニティソーシャルワークの機能と展開システム

おわりにー残された検討課題と地域福祉の新たな地平
  第1節:地域福祉推進組織としての社会福祉協議会、民生委員・児童委員及び共同募金会
  第2節:「地域でまちづくり」を包含する地域福祉実践
  第3節:21世紀「ゆとり型社会」の創造と国際的「人間の安全保障」につながる地域福祉実践―地域福祉の新たな地平

第2編:補論

第1部:戦前社会事業における「教育」の位置
 はじめにー戦前の歴史的経緯を学ぶ意義
 第1章:明治期富国強兵政策と風化行政
  第1節:社会問題発生と細民対策
  第2節:井上友一と風化行政
  第3節:「半官半民」団体と感化救済事業
 第2章:社会事業の科学化と小河滋次郎
  第1節:『救済研究』における社会事業の科学的究明
  第2節:救済の精神としての精神の救済
 第3章:「社会問題の教育的考察」と救済
  第1節:社会連帯観の2つの系譜
  第2節:隣保事業における教育
  第3節:教育の社会化と「教育的救済」
 第4章:転換期社会事業の「教育」観
  第1節:大林-川上論争
  第2節:社会事業の「社会教化」化

第2部:戦後地域福祉実践の系譜と社会福祉協議会の位置
 第1章:地域福祉と社協活動の目的
  第1節:地域福祉概念の変遷と社会福祉協議会
  第2節:社会福祉協議会の理念と法的根拠
 第2章:地域福祉実践の戦前的遺産
  第1節:社会福祉団体の組織化と中央社会事業協会活動の系譜
  第2節:地域組織化活動と地域改良運動
  第3節:都市部対策としての隣保館と在宅福祉サービス
  第4節:地域福祉実践における“団体中心主義”と“施設中心主義”
 第3章:社会福祉事業法にみる戦前的遺産と隣保館の位置
 第4章:大都市・東京における社協活動の位置づけと今後の課題

第3部:福祉教育の理念と実践的視座
 第1章:福祉教育の必然性と子ども・青年の発達
  第1節:福祉教育が求められる背景
  第2節:子ども・青年の発達の歪みと課題
 第2章 福祉教育の理念と構造
  第1節 福祉教育の理念
  第2節 福祉教育の構造

著者情報

大橋謙策(おおはしけんさく)
公益財団法人テクノエイド協会理事長、NPO法人日本地域福祉研究所理事長、日本社会事業大学名誉教授
1943年生

学歴:1967年日本社会事業大学社会福祉学部社会事業学科卒業、1973年東京大学大学院教育学研究科博士課程(社会教育専攻)満期退学

職歴:1970年女子栄養大学助手、1974年日本社会事業大学専任講師、1984年同大学教授、2005年同大学学長(~2010年)、2010年同大学特任教授(~2014年)、2011年日本福祉大学客員教授(~現在)、2014年東北福祉大学大学院教授(~2020年)

主な社会的活動:日本学術会議第18期・19期会員(2000~2005年)、日本社会福祉学会会長(1999~2005年)、日本地域福祉学会会長(2002~2008年)、日本福祉教育・ボランティア学習学会会長(1995~1998年)

主著
『地域福祉の展開と福祉教育』全国社会福祉協議会(1986)
『地域福祉』放送大学教育振興会(1999)
『社会福祉入門』放送大学教育振興会(2008)
『地域福祉の新たな展開とコミュニティソーシャルワーク』社会保険研究所(2010)