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岩本ゆりの「病気との付き合い方~医療コーディネーターからの手紙~」

Letter32「告知の際に付き添いは必ず必要ですか?」

 先日、外来を受診する際に気になることがある、と相談を受けました。

 Bさんは働き盛りの50代です。忙しいせいか、何となく身体の具合が悪いと感じていました。疲れのせいなのかと思いながら一カ月が経ちましたが、症状は改善されません。そこで重い腰をあげて大学病院の外来を受診しました。

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 すると一通りの検査が終わったところで医師から、「次回は必ず家族を連れて検査結果を聞きに来て下さい」と言われました。しかし、Bさんの両親は10年以上前に死に、独身で兄弟もいません。いとこも親戚も既に高齢で疎遠です。気軽にお願い出来るような関係ではない上に、付いて来てもらったからといって力になってくれるとは思えません。

 こんな時、次回の受診時に自分ひとりで医師の話を聞いてはいけないのでしょうか? ひとりがだめだというのなら、血縁の代わりに友人に同席してもらうのはいけないのでしょうか?

 答えは、NOです。つまり、自身の病状説明を聞く際に、家族が同席していなくてはいけない、という決まりはありません。友人が同席しても、ひとりでお聞きになっても問題ありません。

 それでは医師がこのような説明をする背景は何でしょうか。一つは、医師の価値観によるものだと思います。ひとりで聞いてはいけない、という説明をする医師は、バッドニュース(病状や検査の結果など悪いニュース)を本人ではなく、家族の意向に添ってお話しする、という傾向があると思います。

 この場合、出来るだけ患者本人の心理的ショックを和らげる形を模索しながら伝えることが本人のためになる、家族は本人をサポートする力がある、と考えているケースと、バッドニュースを伝えること自体が、医師自身辛いので、そのクッション役として家族の力を期待する、という心理が働いていることが考えられます。

 こうした提案があった際は、医師の考え方や傾向を知る良い機会であると考えてみてはいかがでしょうか。万が一治療が必要な病気であった場合、治療開始の前に、どこで、どの医師と治療するかを決定する時が来ます。その時、自分と医師との相性をはかる面で、今回のことは役に立つと考えます。


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プロフィール
岩本ゆり
(いわもと ゆり)
看護師・医療コーディネーター、NPO法人楽患ねっと副理事長。楽患ナース株式会社取締役。1995年東京医科大学病院産科病棟、1999年東京大学病院婦人科病棟、特別室・緩和ケア病室を経て、2002年NPO法人楽患ねっと開設、2003年医療コーディネーター開業、現在に至る。
2008年フジサンケイ・大和証券グループ Woman Power Project 第7回ビジネスプランコンテスト優秀賞2003年日本看護協会広報委員就任。
主な著書は『あなたの家にかえろう』(共著、2006年)、『患者と作る医学の教科書』(共著、日総研出版2009年)など。

私は看護師として、患者さんが落ち込んだ時も、前向きな時も、患者さんの人生の傍らに寄り添い、その力となる存在であり続けたいと思います。読者の方々のご相談もお待ちしています。
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