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岡田慎一郎の「古武術介護のトリセツ」

床上での上体起こし(2)

 前回は、手のひら返しの動きで被介助者に手を差し入れ、包み込み、力の伝達を良くして上体を起こそうとしました。しかし、手の平からでも手の平を返しても、あまり違いがありません。なぜかといえば、腹筋をするように垂直の向きに起こしていたから、必要以上に力がかってしまっていたのです。そうなると、介助者、被介助者ともに負担がかかってしまいます。
 では、負担があまりかからない起き方の方向性はというと、考えるよりも自分で寝て起きてみると分かりやすいでしょう。
 おそらく多くの人が、腹筋で起きるよりも、まず横を向き、頭がグルリと半円を描いて起きてくるかと思います(写真1)。
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(写真1)

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 この起き方ならば、あまり筋力を使わず楽に起き上がることができます。介護の様々な技術書に書かれている、いわゆる基本的な起き方です。
 ただ、これが正しい起き方かと言うと、それは違うのではと考えています。起き方は人それぞれであり、頭が半円を描く起き方は技術に活用しやすい起き方ではないでしょうか。
 この起き方を実際の技術に活用するためには、スタートは(写真2)のように頭側に膝を立てる姿からはじめます。
okada20081215-2.jpg
(写真2)

 そこから腹筋するように垂直には起こしません。半円を描く起き方をするためには、介助者が後方に倒れるようにして動きを引き出していくと、横向きに被介助者が起きてきます。ただ、そのまま倒れてしまうと起こしきれませんので、背中が起きてきたところで、頭側に立てた膝を床に落としていくようにします。すると、被介助者の後方に自然と回り込むことができます(写真3)。
okada20081215-3.jpg
(写真3)

 ただし、力が入ってしまうと、回り込む動きが止まってしまうので、全身をリラックスした状態で膝を落とすことを心がけます。
 最終的には介助者が被介助者の座椅子になるような感じになります(写真4)。
okada20081215-4.jpg
(写真4)

 被介助者の障害は様々なため、安定した状態で座ってくれる方は少ないでしょう。だからこそ、どのような状態の方にでも対応できるように、介助者が座椅子の背もたれのようになれば、お互いが安心をして、次の介護に移れるようになると思います。
 実は、膝を落として被介助者の後に回る動きが、被介助者の頭が半円を描いて起き上がる方向性を自然と引き出していたのです。

 次回から床上での起こし方をベッドでの起こし方に活用することを考え、実践していきたいと思います。


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プロフィール
岡田慎一郎
(おかだ しんいちろう)
介護支援専門員、介護福祉士。1972年生まれ、茨城県出身。身体障害者施設、高齢者施設の介護職員を経て、朝日カルチャーセンター等の講師を務める。武術家甲野善紀氏との出会いにより編み出した、古武術の身体操法に基づく介護技術(古武術介護)で注目を集める。著書に、『親子で身体いきいき古武術あそび』(日本放送出版協会)、『古武術介護入門』(医学書院)、雑誌掲載など多数。(タイトル写真提供:人間考学研究所)
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